第107話 抹茶アンパンと梨②

 俺はこの2人には彼女が出来た事は絶対に言いたくないので黙っている事にした。

 絶対に会わせろって言って来るからだ。

 

 先ず鳴海を迎えに行って助手席に乗せる。

 鳴海の家は俺と同じ多摩市内にある。

 …すると何かに気付いた様だ。

 

 「えんちゃーん、何か車内がいいニオイする…。」

 

 鳴海はタバコを吸わないので嗅覚が異常に鋭い。

 それに何故、えんちゃんかというと、とおちゃんだと自分のオヤジを呼んでいる様でイヤだからだそうな。

 真野も同じく俺の事はえんちゃんと呼ぶ。


 「気のせいだ、気のせい。

 早く真野ちん迎えに行くぞ。」


 「えー、クンクン…

 何か座席からもいいニオイする…。」


 「えーい、嗅ぐな、気のせいだと言ってるだろうが!

 新しい芳香剤入れたんだよ!」


 俺だって有希本人をクンクンしたいよ!

 何か鳴海だけクンクンして腹立つな…。

 俺、クンクンくらいなら有希にさせてもらえるだろうか…

 イカンイカン、アホな事考えてないで、早く真野を迎えに行こう。

 コイツ有希の匂い嗅いで悔しいから、車から降りたら助手席に除菌消臭スプレー掛けて匂いを消してやる!


 

 同じ市内に真野の家もある。

 鳴海と真野が会った途端にジャンケンを始めたので、恐らく座席の取り合いであろう。

 ジャンケンに買った鳴海が助手席、真野が後部座席の様だ。


 先ず先に後部座席に真野が乗り込む。

 

 「相変わらず狭いなー、誰の車が1番狭いんだろう…。

 …ん?」


 …真野も何かに気付いた様だ。

 

 「えんちゃーん、助手席のヘッドレストの後ろに長い髪の毛が付いてる…。

 …まさか…

 女か!?女なのか!?」


 「真野ちん真野ちーん、さっきから車内と座席からいいニオイがするんだけどさ、遠ちゃんは芳香剤だって言うんだぜ、芳香剤何処にあるか後部座席探してくれる?」


 「おう、探すぜー………

 見当たらないぞ…?

 コイツ…マジで女だろ!

 白状しろ!

 状況証拠は揃ってるんだぞ!」

 

 「クッ…警察官の俺が証拠を突き付けられるとは…っ…。」


 俺は咄嗟に思い出した。

 車に乗ってる女の子は有希だけでは無いではないか…。


 「実はな…ストーカーを車に乗せたんだよ。」


 「「ストーカー?」」


 2人共、同じ方向に首を傾げている。


 「あぁ、同じ係に卒配の女性警察官が入って来てな、B専って知ってるか?

 ブサイク専門って意味らしいんだが、ソイツに家までストーカーされて、上がり込まれたんだよ。」


 「何だと!羨ましい…

 その子の友達を俺と鳴海にも紹介しろ!」


 「そうだそうだ!」


 「まぁまぁ、最後まで話を聞け。

 俺はソイツの性格がどうしても怖…合わなくてな、車で家に送らないと帰らないって言うから送ってやったんだ、多分その時の髪の毛だと思うぞ。

 俺はもうそのストーカーと関わり合いたくないから、髪の毛が欲しいならくれてやるよ。」


 「いらねーよ、髪の毛なんて!

 そんな性癖俺達にゃ無いわ、バカにすんな!

 いや、バカにしていいから、そのストーカー紹介してくれ、B専なら俺達にだってチャンスはあるハズだ!」

 

 「そうだそうだ!」


 「それこそイヤだよ、お前らからそのストーカーに俺の恥ずかしい過去を色々とバラされたら、俺脅されちゃうもの!」


 「んなこたー俺達には関係無い。

 紹介しろ!」


 「そうだそうだ!」


 「解った解った、いつか紹介してやるよ。」


 「いつだよ、何時何分何十秒!?」


 「そうだそうだ!」


 「子供か!…って、鳴海はさっきからそうだそうだしか言ってないけど、本当はどうなの?紹介して欲しいの?」


 「いや、別にどうでもいいけど?」


 「どうでもいいの?」


 「うん、俺は女に興味無いから別にどうでもいい。」


 「えっ…マジで?

 衝撃の事実…。

 えっ、真野ちん知ってた…?」


 「俺知らね。

 えっ…お前…そっちの人?」



 「「えぇー……っ…」」


 俺と真野は絶句した。


 

 その後、鳴海は俺と一緒で、どうせ女には相手にされないからという理由で興味無いと言ったらしい。

 紛らわしい事言うなよな…マジで。

 イヤ、同性愛を否定するワケでは無いが、自分が長年そういう目で見られてたかと思うと…ネ?

 うん。

 

 その後、騒がしくも笑える会話をしながら予約していた抹茶アンパンと梨を1箱無事に買い終わり、ヤツ等をそれぞれ家に送り、消臭スプレーを助手席に吹き掛けてから仙石原に再度出発した。




 この真野という男、その後

 

 「パツキンのチャンネーと結婚する!」


とか、そんな相手など居ないのに言い出したのだが、数年後、いつの間にか中国人の女性と結婚していたのはまた別のお話。





ーーーーーーーーーーーーーー


短編小説、

 

 『同じクラスの女の子2人を同時に好きになってしまったんだがどうしたらいいのだろうか。』


を書いてみました。

 よろしければお読みいただき、面白いと思っていただけましたら、ご感想やお星様をよろしくお願いいたします。

 

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