第104話 片山家到着
帰りに芦ノ湖畔で喫茶店の雑貨売場に寄ったらまだ日傘があったので、買って有希に渡した。
あー、なんか婆さんに会うのは久しぶりな感じがする。
門を開けてもらって中に入り車を止めたら婆さんが玄関に出て来ていた。
ニヤニヤしてコチラを見ているので、恐らく俺と有希が付き合い始めたのを知っているのだろう。
婆さんは俺の方に近付いた途端、背中をバシッ!と平手打ちして来た。
「有希から聞いておるぞ。
お主とうとうやったな、おめでとう!
これからお主は義理の孫じゃ、よろしくのう、真之。」
「あぁ、まだ早いけど、有希さんと結婚を前提にお付き合いさせていただく事になりました、ありがとうございます。
まさかこの家に初めて来た日に約束した出来事が本当になるとは思いもしなかった…。
信子さん、これからもよろしくお願いします。」します。」
有希も俺と一緒に婆さんに向かってペコリとお辞儀をしている。
「なんじゃ、キモチ悪い…
敬語なんぞ使いおって。」
「俺、最初にココに来た時は敬語だったじゃねーか。
節目だからだよ、はい、敬語はおしまい。
腹減った、夜ご飯は何?」
「今日はナスと豚肉の味噌炒めと切り干し大根とサラダとオクラの味噌汁じゃよ。」
「おぉ、美味そうだな、お土産買って来たから中で渡すよ。」
「おー、待っておったぞ、酒か!?」
「まぁ酒もあるし、他は海の幸と菓子だな。」
「ほー、取り敢えず入れ。
有希もお帰り。」
「ほーい。ただいま。」
「ただいま、お婆ちゃん。」
有希は俺と婆さんを交互に見ながらニッコリしていた。
俺と婆さんはリビングに入ると有希は自室に荷物を置いてから晩ご飯の用意をしに台所に行ったので、早速婆さんへのお土産を袋から出した。
先ずは…コレだ。
「お婆様、黄金色の菓子でございます。
どうぞお納めください。」
俺はススッ…と金山で買った小判型のチョコが入った千両箱の形のお土産を意味深に渡す。
婆さんは意図に気付いたのか、
「遠山の、お主も
いーっひっひっひっ…。」
「さすが婆さん、解ってる!」
「真之よ、このネタ誰も解らんのではないか?」
「まぁ時代劇ってテレビで殆んどやってないしなぁ。
俺の両親は時代劇好きだったから俺もよく見させられたし。」
この遣り取りは昔から時代劇ではよく見られる、賄賂を渡す商人とそれを受け取る役人のワンシーンである。
俺は婆さんとコレがやりたいがために小判型チョコを買ったのだ、俺もアホだな(笑)。
後は地酒と干物詰め合わせと金粉入り抹茶を渡した。
「真之よ、ワシにこんなに金を使わんでもいいぞ、結婚資金に貯めておけ。」
「イヤイヤ何を言ってんの、俺は恩人にはちゃんとさせてもらうよ、大した金額じゃ無いから気にすんな。」
「いや、恩人というならお主の方が恩人なんじゃが…まぁええか。
老い先短いから遠慮なく貰っとくぞ。」
「あー大丈夫大丈夫、後20年くらい生きててもらわないと。
ひ孫の世話を頼むわ、慣れたもんだろ。」
俺も夢のまた夢だった明るい家族計画が視野に入って来た。
「お主、ワシをまだこき使う積もりか!?
ヒドい孫じゃな。
それにもうひ孫の話か、まだ早いじゃろ。」
「まぁそれくらい長生きしてもらわないとな。」
「そうじゃな…有希を頼むぞ、真之。」
「任せておけ。
有希が俺を見捨てない限り、俺が幸せにする。」
「…何だか自信が有るのか無いのか解らん返事じゃな。」
「俺に自信があるワケ無いだろ、それに女の子と付き合うのは初めてなんだから手探り状態だよ、今日も怒られたし。」
「何があったんじゃ?」
「若手女優の高坂真由って知ってるか?
例のエキストラやった時に知り合ったんだが、この近所に実家があるらしくて、有希と友達になったんだ。
その子が、俺が有希にプレゼントした日傘とお揃いの物が欲しいと言うから、今後の付き合いもあると思って買い置きしておいてあげる、って言ったら有希に怒られた。」
「まぁそりゃ怒られるわな、
女心の解らんヤツじゃ。
プレゼントと同じ物買ってやったら、その子にも気があると勘違いするじゃろ。」
「でもさ、俺にも1つ心配事があったから、絶対に高坂さんとは仲良くしておいた方がいいと思ったんだよ。」
「それは何でじゃ?」
「あの人気ドラマのエキストラをやれば、きっと有希を可愛いと思う人間は出て来ると思う。
これは俺の勝手な予想だけど、多分有希は今後芸能界関係者から何かしら接触があると思うんだ。
もしそうなったら高坂さんに相談出来る様に少しは便宜を図っておいた方がいいと思って。」
「お主、その話はここだけにしておけよ?
その話、聞く人間によっては高坂に見返りを要求している様に聞こえるぞ、それは正常な友人関係では無い。」
「そうだよな、そこまでのつもりは無いんだけど、そう取られても仕方ないから有希にも言ってない。」
「この話は実際にそうなったらまた考えようではないかぇ。
今から心配しても疲れてしまうぞぃ。」
「そうだな、一応心の片隅に置いておいてくれ。」
その会話の後、夜ご飯をご馳走になりながら婆さんと酒を酌み交わし、翌日、俺は自宅に帰った。
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短編小説、
『同じクラスの女の子2人を同時に好きになってしまったんだがどうしたらいいのだろうか。』
を書いてみました。
よろしければお読みいただき、面白いと思っていただけましたら、ご感想やお星様をよろしくお願いいたします。
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