第103話 土肥金山

 恋人岬は行きは下りでいいが、帰りは登りで結構キツい。

 2人手を繋いで車の方まで戻る。

 帰る前に2人で絵馬を書いて結び付けて来た、内容は


 『結婚したら、また来ます。』


だ。

 

 車に乗り込み、土肥金山まで移動する。

 観光地って結構早く閉まるから、時間は気にしてないとな。


 取り敢えず料金を支払って観光坑道に入るとヒンヤリして気持ちいい。

 この金山は江戸時代から昭和40年まで金銀を掘っていたそうだ。

 その間、山の中を100Km掘って採れた量は金が約40トン、銀が約400トンだそうだ、多いんだか少ないんだか…。

 昔は機械も無かったし、大変な苦労をして鉱石から分別したんだろうな。

 奥へ行くと、機械式チョンマゲオッサンが何か言っている。

 有希が俺にしがみついて来た。


 「怖いよぅ…。」

 

 確かに…俺も苦手だ。

 何でこういうのって怖いんだろう…お化け屋敷的な怖さがあるよな。

 俺はお化け屋敷NGだ。

 …だって、怖いんだもの。

 説明文を読んだ後は足早に立ち去る。

 

 そして最後に砂金取り体験を2人でやってみた。

 腰の高さに水槽があり、中に砂と水が大量に用意してある。

 その中に皿を突っ込み、砂を底の方から掬って水中で皿を攪拌かくはんさせ、砂だけを皿の外に出しながら、皿の底に沈んだ砂より重い砂金だけを回収する、というモノだ。

 これが難しい…何度やっても皿に砂金が入ってない。

 

 「これ、本当に砂金入っ「」お兄ちゃん、それ以上は言っちゃダメ。」


 制限時間が近付いているのに採れないのを憐れんだのかスタッフさんが近寄って来て手伝ってもらい、有希が2粒採らせてもらって、俺がひと粒だけ自力で採った。

 その砂金の粒を小さな透明プラスチック容器に入れて持ち帰らせてくれる。

 相当な年数を掛けて40トンしか採れないんだから、実際にこんな感じで相当な苦労をして砂金を集めたんだろう。

 砂金はひと粒しか採れなかったので、ちょっと恥ずかしい。

 

 その後売店で婆さんに面白い土産を買った。

 コレを見た婆さんはなんて言うだろうか、楽しみだ。


 さて、後は海産物等を売っているお土産屋さんに寄ったりしながら有希の家に帰って、婆さんに有希と付き合う事になった報告をして明日自分の家に帰れば今回の旅行は終了だ。


 今回の旅行ではまさかの芸能界との繋がりが出来た事が1番のビックリかもしれないな…。

 俺が歌を歌うのは一発屋で終わるとしても、他にひとつ心配がある。

 まぁその心配は実際に問題が起きてから考えよう。






ーーーーーーーーーーーーーー


 この2つ前に公開していなかったエピソード、『天窓洞』があります。

 恐らく気付いていない方もいると思います。

 今遊覧船の事故がニュース等で報道されていますので自粛しようかとも思いましたが、このエピソードは遊覧船の事故以前に考えていたものであり、物語的に書かないと繋がらないかとも思い、公開する事にしました。

 お亡くなりになった方々の御冥福をお祈りいたします。

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