第57話 片山家家族会議①
ゴールデンウィークには仕事があるので俺には関係無い。
有希も1学期はしっかり勉強したいという事で遊びに来なかった。
ゴールデンウィークを過ぎた5月の金曜日の非番の夜、俺は片山家に向かっていた。
SNSで
有『お兄ちゃん、大事な相談があるから、5月の金曜日の非番に来て。』
遠『えっ、またイジメが始まったとか?
大丈夫か!?』
有『あ、違うの。
進路の事で相談があって。』
遠『俺大学行ってないからアドバイスとか出来ないよ?』
有『えーっと…取り敢えず来たら説明するから、ね?
お兄ちゃんがいないと話が進まないの。』
遠『うーん、よく解らんけど行かなきゃいけないんだな、次の金曜日の夜だけどいいか?』
有『うん、待ってるから。
必ず来てね。』
というやり取りがあって、今日に至る。
という訳で、晩御飯の前に話をする事になった。
何故かと言われたら、晩酌で酒が入ると正常に頭が回るか心配だからだ。
「それでは、お兄ちゃんが初めて参加する、第一回片山家家族会議を開きます。」
「ワシはもう話を聞いておるが…
真之はどうだろうのう…。」
「……?」
「では、説明します。
私は将来の職業は特に何になりたいとかは決まって無いの。
だから普通に文学部とかを考えてるんだけど、私の場合、大学推薦を受ける事が出来る様に普段から学校の試験や英検を取得したりして頑張っているから指定校推薦が受けれるの。
指定校推薦は合格の確率が高い代わりに1校しか受けれない。
そしてその1校を6月までに決めないといけないの。
私は今仙石原にお婆ちゃんと住んでるけど、お兄ちゃんに出逢うまでは、ここが私の全てだった。
でもお兄ちゃんにイジメから助けられて、ほんのちょっとだけど、あちこち連れて行ってもらって…
私の世界って、とても小さいんだな、って思ったの。
隣の山梨県に行くだけでも、私にとっては色んな体験が出来た。
代々お酒を一生懸命に造っている人、拘ってパンやイチゴやフランス料理を作っている人、何百年も伝統工芸品やお墓を守り続けている人、そして夜景の1つ1つの灯りの中にみんなそれぞれの生活があって、みんなみんな生きているんだな…って。
それで結局何が言いたいのかっていうと、私はこれから色んなものを見て色んな事を体験してみたいから、ここを出て離れた大学に通いたいの。
具体的に言うと、指定校推薦が受けれる小鳥遊学園女子大学八王子キャンパス。」
「ここから随分と離れるけど、通学は出来るの?」
「ここからは凄く遠くなるから通学は厳しいの。
…そこでお兄ちゃんにお願いが…。」
「独り暮らしをする金をどうにかして欲しいって相談かな?」
「違うの、あのね…
八王子キャンパスは、お兄ちゃんの家に凄く近いの…
だから、私をお兄ちゃんの家に置いて欲しいの…。」
「えぇーっ…
そっ…それはっ…
婆さんはその事について、どう思うの?」
「ワシはお主の家に住む事自体は悪くないと思っておる。
お主の事じゃから家賃とかもいらないって言うじゃろうし、有希に悪い虫も寄って来んしのう。」
「イヤイヤイヤ、そういう事じゃなくて、若い娘をさ、独身の若い男の家に一緒に住まわすのって、保護者としてどうよ、コレ。」
「それはお主次第じゃよ、一緒に住む頃には有希は大学生になっておるし、後は2人で決める事じゃ。
ワシは独りになって寂しくなるが、有希やお主なら時々家に様子を見に来てくれるんじゃろ?」
「そりゃ勿論そうだけどさ…
有希はいいの?それで。」
「うん、お兄ちゃんさえよければ家事とかもやるし、ご飯もちゃんと作るから…
ねっ?お願い…。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます