第40話 抱っこ
家に帰って有希が先に風呂に入ったが、何だか落ち着かない。
「お兄ちゃん、上がったから入っていいよ。」
洗い髪の有希が白いパジャマを着ている。
何かイイニオイがする……イカンイカン。
「ドライヤーはそこにあるから。
眠かったら先に寝てていいからね、
と言って俺も風呂に入る。
俺の風呂は早い、10分くらいで出る。
ちなみに食事も早い。
仕事中食べてる時に来所者や110番が入る事が多いので、自然とそうなってしまった。
特に、ラーメン等の麺類を出前で頼んだ時は高確率で110番が入るから不思議だ。
俺が風呂から出ると有希はソファーに座ったまま寝ていた。
髪が濡れたままだ、これでは風邪を引いてしまう。
「有希、風邪を引くぞ、頭乾かして。」
「うーん、お兄ちゃんが乾かして…」
マジか。
他人の頭なんて乾かした事無いぞ…
まぁでも女の子の髪なんて触る機会無いからな、やってみるか。
俺はまずドライヤーで自分の髪を乾かす。
俺の髪は1〜2分で済むからな。
その後そのまま有希の髪を乾かし始める。
熱くならない様に同じ場所ばかり当てない様にして手櫛で整えながら、頭から毛先まで順に乾かしていく。
髪が長いと乾かすのに時間が掛かるんだな、毎日大変そうだ。
でも乾かし終わった後の触り心地、最高。
サラサラ、ツヤツヤ、いつまででも触っていたい……イカンイカン。
「終わったぞ、寝るなら部屋で寝ろよ。」
とは言ったものの、反応が無い…どうするか。
ソファーにこのまま毛布を持って来て寝かすか、でもそれじゃ落っこちるし、寒いだろうな…
可哀想だけど、やっぱり起こすか。
「有希、起きろ……おーきーろーよー、おーきーろーよー。」
ナント…何度揺すっても起きないではないか。
どうするよ…もうこうなったら、運ぶしかないんだが…
有希を運ぶ事自体は出来るか出来ないかといったら出来るだろう、軽いだろうし。
問題はだな、運ぶ時におんぶとか抱っこをしないといけない事だ、完全なセクハラではないか…俺には無理だ、犯罪だ。
「ゆーうーきー、おーきーろーよー、おーきーろーよー。」
「起きないと、俺が抱っこして運んじゃうぞ、イヤだろー、早く起きようぜー。」
「うーん…抱っこしてー…」
…えっ?ウソだろ?マジで?
本人から許可が出ちまったよ…
イヤ、後で言った言わないになっちまう…こうなったら最後の手段だ。
俺はスマホを持って来て録音しながらもう1度有希に、
「起きないと俺が抱っこして運んじゃうぞー、だから自分で歩こうぜー。」
と言うと、
「…眠い…運んで…」
ハイ、証拠の採取完了。
…俺もここまでするのはオカシイと思うけどさ、やっぱり後で抱きかかえたら、
『ドコ触ってんの!お兄ちゃんはそんな人だと思わなかった!』
とか言って激オコされても怖いし…ね?
じゃあ、運びますか。
まずは有希の部屋のドアを予め開けておいて、布団を捲っておいて…と。
じゃあ…行きますよ?
後で怒っても、もう知らないんだからねっ。
エイッ。
…柔らかっ!
そして、抱えると…色んな所が…あっ、当たって…っ…ヤバイヨヤバイヨヤバイヨヤバイヨヤバイヨ…
早く運ばないと理性が吹き飛んでまう、早く運ぼう、早く早く早く早く…
階段が狭い…クッ…ちょっと抱え方変えて…アッ…おっ…おっぱオッ…ダメだダメだダメだダメだ、余計な事を考えるな、急げ急げ急げ急げ…
もう少しでベッドだ、ガンバレガンバレガンバレガンバレ…
よっし、俺、がむばった…!
布団を掛けて…、
「不可抗力だ、許せよっ…おやすみっ。」
ドアを締めた。
…もう2度とやらんッ!
破壊力が有り過ぎだ、俺を犯罪者にするつもりかッ!
今度ああなったらソファーの横に無理矢理布団を敷いて、ソファーから移動させて寝かそう…。
女の子…マジヤバイわ、色んなトコ触っちゃったけど…マジパないわー、運んだ時に起きてないといいけど…。
「…触られちゃったっ…キャッ//」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます