第11話:ゴーストリアの三因子05


 そも幽霊とは何ぞ?


 零那にとっての深刻な問題。


「何が?」


 と問われれば、


「生活環境に於いて」


 と答える。


「おーまーえーはーなー」


 学業も終わり家に帰る。一子も付いてきた。というより憑いてきた。零那が風呂に入ると(どんな原理か?)幽霊の一部であるはずの服を脱いで全裸で突撃。


「零那ちゃん?」


「何でございましょ?」


「エッチしよ?」


「何ゆえ幽霊と……」


「妊娠の心配も無いんだよ?」


「ある種の自慰行為だな」


「なら問題ないじゃん」


「ワンコのソレは打算というには体当たり過ぎるが……」


「私じゃ駄目?」


「…………」


 うるんだ瞳で見られると捨てられた子犬を想起させる。


「まずは成仏させる手段だよな」


「幽霊だから?」


「幽霊だから」


 そこは違えない。


「ていうかホントどんな原理だ」


 トラックに轢かれて頭を打った後遺症。とすれば審査で引っかかるだろうに。


「さぁ。私を抱くんだよ」


「風呂場で射精したくない」


「むぅ」


「そこが残念なのかよ」


 零那としても困りものではある。一子は非の打ち所の無い美少女だ。その上で全裸突貫。当然零那の男性器も一念天に通ず。それはしっかり一子の方にもバレている。有利不利なら零那の不利だが、観念するほど絶望もしていない。


「零那ちゃ~ん」


「ええい」


 寄るな、と零那。


 寄るよ、と一子。


「どんだけ俺が好きなんだ?」


「大好き!」


「恐悦至極」


「大大好き!」


「実体があれば建設的なんだが……」


「幽霊だからこそ!」


「こそ?」


「何でもフルオープン」


「お前はな」


「零那ちゃんは?」


「状況の認識に苦心中」


「私が困らせてる?」


 茶の瞳が潤む。想い人に拒絶されるのは一子でなくとも不安を呼ぶだろう。


「バーカ」


 茶髪のふわふわパーマを弄る。


「ワンコは俺の恋人だ」


「だよね!」


「だから大事にしたい」


「紳士だよ!」


「そうだ。ジェントルマンだ」


「真摯でもあるよ!」


「だからお前にとっての最良が何なのか。それを知る必要がある」


「成仏?」


「したいなら止めないが」


 先述もしている。


「とりま」


 とは零那。


「何にしろ理屈倒れのビブリオに聞くところ……か」


「三代ちゃん?」


「その三代ちゃんです」


 そーゆーわけだった。

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