第41話 帰還
「お二人はこれからどうするんですか?」
「これでお別れ、ってことかな」
「はい……私は、と言うか私たちは、お二人の笑顔が見たくてこの世界にやってきたんです。これからどんな未来に辿り着くのか、それは分かりません。でも私は、今の笑顔を見れただけで満足です。今、最高の気分です」
「僕も……未来の自分に会えたことで、自分の中にあったモヤモヤが少し消えた感じです。その……感謝してます」
「僕もだよ、
「大丈夫よ
「元々は私たちの幸せな未来を見て、二人を冷やかしながら楽しく過ごすつもりでした。でも、想像してたのと全然違う未来になってて、お二人は幸せと言えない状況になってました。
私の目的は変わりました。何が何でも二人に笑顔になってもらいたい、それまで帰れないって」
「元に戻った訳じゃないけど、
「確かにそうなんですけど、でも……どう言ったらいいのかな。一仕事を終えて満足したって言うか」
「ミッション・コンプリートだよね」
「この時代に、私は必要以上に干渉しました。だから……この最高の状態で、私が本来いるべき世界に戻った方がいいような気がするんです」
「そっか。やっぱ
「ありがとうございます、
4人が笑顔でうなずきあった。
「とりあえず
「そうね。久しぶりに
「分かった。店を探してみるよ」
「それもいいんだけど……折角だし、
「あんまり飲み過ぎないでくれよ。そんなに強い訳でもないんだから」
「分かってるわよ。でもまあ、ちょっとだけ羽目、外しちゃうかも」
「覚悟しておくよ」
「何よそれ、ふふっ」
「ははっ」
「色々ありがとうございました」
帰路に向かう
「あんまり飲み過ぎて、喧嘩しないようにして下さいね」
「分かってるわよ、もうっ」
「
「君と話せて本当によかった。僕も頑張るからね、君も……しっかりやっていくんだよ」
「はい。ありがとうございました」
そう言って固く握手する。
「大丈夫?」
「はい。私はどこまでいっても私、
「そっか……色々ありがとう。お世話になりました」
「
「綺麗なのはいつものことでしょ。なんと言っても私、なんだから」
「確かに……ふふっ」
「あははっ……
「何だかなあ……すごく寂しい気がするよ」
「……私もです」
「ずっとこのままでいられたら、なんて言うのは贅沢なんだろうね」
「そうですね。私たち、あり得ない経験をした訳ですから」
「ミウちゃんには本当、感謝だね」
「はい。それと……
「私も一緒だ。あははっ」
「ふふっ」
名残惜しそうに離れると、互いのパートナーの元へと戻る。
「そうだ、あと一つ聞きたいことがあったんだ」
「いいよ。ここまで腹を割って話したんだし、何でも言って」
微笑む
「
意外な質問に、
「関係がぎこちなくなっていったから。そんな風に思ってたんですけど」
「あ……は、はい、その通りです。ごめんなさい」
「やっぱり……私が
「そうだね、確かにそうだ。どっちからだったのかな……もう覚えてないけど、
「……そうね、私もそう思う。何て言ったらいいんだろう、お互いに『レン』って呼び合わないことで、壁が出来ていったように思うわ」
「この際です。元の呼び方に戻してもいいんじゃないですか?」
そう言われて、
「
「
そう呼んだ瞬間、
「何これ何これ、ちょっと待ってちょっと待って……何でこんなに恥ずかしいの? 前はずっとこう呼んでたのに」
そう言って身をよじらせた。
そんな二人を見て、
「じゃあ……本当にこれで」
「ええ。お別れです」
「お互い頑張ろう」
「はい。頑張ります」
「まだ抵抗はあるけど……まずはこれくらいから」
「……馬鹿」
そんな二人を見て微笑むと、
ありがとう、10年後の私と
少し寂しい。ううん、すごく寂しい。
でも、私の隣には
震えながら私の手を握ってくれる、大好きな
だから大丈夫。
それにまた、10年後に会えるから。
涙を浮かべて微笑む
その瞬間、光に包まれた。
「……」
「おかえり
目を開けると自分の部屋だった。
目の前には白猫、精霊のミウがいる。
「……帰ってきたんだね、私」
そう言って時計を見ると、旅立つ前にチェックした時間だった。
「全部……本当のことだったんだよね」
瞼をこすりながら、
だがそれは、出発前にミウが言ってた通り、夢だったような、断片的に欠けているような不思議な感じだった。
「
「そうなんだ……よく分からないけど、ミウがそう言うんだったらそうなんだよね」
「怒らないのかい?」
「怒るようなことじゃないよ。無理を言って頼んだことなんだし。ミウには感謝してるよ」
「ありがとう
「うん、そうね……ふわぁ……まだ夢の中にいるみたい」
「時間酔いの影響かもしれないね。戻ってくる時の方がきついらしいから。でも大丈夫、朝には治ってるよ」
「私……これでよかったのかな」
「それは
「そっか……ふわぁ……駄目だ、まだちょっと眠いかも」
「いいよ、ゆっくりお休み。それと……あともう一つ、
「……うん、何だろう」
「僕のことなんだけどね、
「……」
「もう
「……お別れ、なんだね」
「うん。元々僕たち精霊は、君たちと距離を取っていないといけない存在だから。次に僕と会っても、
「そうなんだ……ちょっと、寂しいな……」
「あはははっ……実は僕も」
もう一度布団に潜り込むと、重い瞼を開けて
「……じゃあミウ……せめて今、私が眠るまで……傍にいてくれるかな」
「うん」
ミウがベッドに跳び乗ると、
「ありがとうミウ……あなたに会えて、本当によかった……それと……また会いに来てね。私、あなたのことを忘れない、そんな気がするの」
「ありがとう、
「大好きよ、ミウ……」
「僕も……大好きだよ、
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