第36話 この関係を守る為に
「でも……やっぱりちゃんと言って欲しかったな」
涙を拭いながら
「
でもね、
「それは
「
「私、昨日
でも
だけど
なのに
「それは……」
「『あなたのことが好きです』こう言うのって、本当に恥ずかしいです。でもその言葉を口にすることで、相手に喜んでもらえる。だから私も、恥ずかしくても
でも不満や不信感となると、伝えることで今の関係を壊してしまうかもしれない。そんな恐れがあったから、言えなかったんじゃないですか」
「……そうね、それはあると思う。でもね、
私はただ、
「でもそのせいで
「それは……」
「大事なものを守りたいから我慢する、それは理解出来ます。でも
「……」
「大人になれば、言いたいことも言えなくなる。よく先生や母さんにも言われます。今よりもっと広い世界の中で、多くの人と生きていくんだ。本当の気持ちを押し殺す時もあるんだって。
それが大人になるってことなんですか? そしてそれは、子供の頃から一緒だった幼馴染にも当てはめないといけないんですか? 私はこれから
「おかしいよ、そんなの間違ってる」
「
「もういいよ、
「……」
「
「……うん……ありがとう、
「
そう思って生きてきた筈なのに、私もいつの間にか、そんな風になってたのかもね。ごめんなさい、
「
「あなたはもう少し、伝える努力をするべきだけどね」
「ははっ……確かにそうだ」
見つめ合う二人を見て
やっぱり私にとって
こんな無防備な笑顔、自分でも見たことがない。
私は
私はこんなにも、
私には
「
「うん。ちゃんと答えるよ」
「
「僕の場合は、ものすごくシンプルな答えしかないよ。僕はね、
「それも過去の出来事が原因なんですか? 自分に自信がないのは、かつてクラスメイトたちから否定されたから」
「ないとは言わない。ずっと否定されてきたんだからね。でもそれだけじゃない。そうなる前から僕は、自分がちっぽけな存在だってことを自覚してたんだ」
「何よそれ」
そう言って、
「僕は子供の頃から、人に誇れるようなものを何一つ持ってなかった。成績も普通、運動はからきし。他人とコミュニケーションをとるのが苦手。いつも一人で本を読んでる、そんな男なんだ。
でも、それでいいと思ってた。これから先、自分が生きていくだけの仕事さえ出来れば、誰にも迷惑をかけずに生きていける。僕は一人、大好きな本に囲まれて静かに暮らしていくんだ、そう思ってた。
そんな僕に、
だから僕は思ってた。
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