第21話 未来は一つじゃない
翌朝。
昨夜はほとんど眠れなかった。
未来に来てまだ一日しか経ってない。
その筈なのに、この世界に随分長く留まっているような、不思議な感覚に困惑していた。
全身にへばり付くような疲労感。
その理由は明らかだった。
自分にとって、幸せとは程遠い現実。
――こんな未来、自分には受け入れられない。
でもこの感情は、果たして正しいのだろうか。そう自問する。
どんな未来であれ、それは
彼らが10年かけて積み重ねてきた結果なのだ。
それをいきなりやってきた自分が、キスをして浮かれている自分がかき回してもいいのだろうか。
もし自分の世界に過去の自分が来て、気に入らないから行動を起こしますと言ったら、自分は受け入れられるのだろうか。
そんな思いが巡っている内に、
「……」
まだ結論は出ない。と言うか、勇気が出ない。
そう思い、大きなため息をついた時、
「あ……」
「
そう言って笑った彼。
初めてのキスを捧げた人。
この世界で一番大切な、会いたくて会いたくて仕方がなかった幼馴染、
昨日彼は、
この未来を見て彼は、どんな気持ちになったのだろうか。
そんなことを思っている内に、なぜだか涙が溢れてきた。
「
「
言葉と同時に膝から崩れる。
膝が地に。
しかしそれよりも早く、
叫びと同時に駆け寄った
「
こんな未来を見せられて、
なのに今、自分をこんなにも力強く、そして優しく抱擁してくれる。
それがたまらなく愛おしくて、そして嬉しくて。
間近で感じる
そして
「大丈夫……
その言葉に、
そうだ、私には
例えどんな未来だろうと、
そう思った。
「落ち着いた?」
「うん……ごめんね、急に泣いちゃって」
近所の河川敷に向かった二人は、石段の上に並んで座っていた。
「あ、そうだ! 大事なことを言うの忘れてたよ。
「ごめんって、何が?」
「何がって、この世界に呼んじゃったことだよ。私ってば、
「ははっ、今更だよね、
そう言って傍にあった小石をつかみ、川に投げる。
「
「……返す言葉もございません」
「本当、昔から変わらないよね。そういうところ」
「もぉっ、あんまりいじめないでよ。私だってその……自覚してるし反省だってしてるんだから」
「でも僕は、そんな
「
「弾丸娘、走り出したら誰にも止められない。そして後になってから謝ってくる。本当、
でも
それに気付いた時にはね、僕はもう
その言葉に、
「ミウは僕にこう言った。『
「うん……ありがとう」
「それで? これから
「
「とんでもない未来になってたね」
「本当、そう思う」
「僕たち、10年後には違う道を歩いてるんだね」
「……うん」
「それに僕は、作家になる夢を諦めていた」
「聞いたんだ」
「うん。やっぱり気になってね」
「ごめんね。私たちのことだけじゃなく、
「いいんだ。僕も少しほっとしたから」
「そうなの?」
「うん。
「……」
「
「そんな」
「駄目だよ
「ありがとう。昨日もね、
「
「決めるのは僕だって。確かに君は過去の僕だけど、同じ未来に辿り着くかは分からないって」
「だったら」
「うん……だからね、正直言うと悩んでる。迷ってるんだ。これからどう生きていくのか、どんな未来を思い描くのか、真剣に考えなくちゃって思ってる」
「……」
「勿論
「
「この夢は僕一人の夢じゃない。僕と
その言葉に、
でも今、
そして
未来はもう変わろうとしているんだ。
未来は確定していない。自分たちの手で切り開くことが出来るんだ。
穏やかな川面に視線を移し、
大丈夫。みんなが幸せになれる未来。
私と
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