第8話 傷心
電車を降りると、見慣れた景色が広がっていた。
それを受け止めきれずにいた
そんな
夕陽を背にした
何よ。
「
「ははっ、剛速球が来たね」
少しは動揺するかと思っていた。しかしそう聞かれることを予測していたのか、
「僕は
「本当ですか」
「うん。
「だったら」
「でもね、さっきも言った通り。恋愛というのは、相手がいて初めて成立するんだ。僕がいくら想っていても、それだけじゃ続けられない」
「じゃあ、私が
「いやいや、そうは言わないよ。
「でも
「
少し声を落とし、諭すように
「好き嫌いだけじゃない、今言った通りだよ。僕が
茜色の空を見上げて
「
「もし未来の私が、やり直したいって言ったら」
「仮定の話には答えられないかな。それにその気持ちは、
それ以上は聞かないでほしい。
「まあ
「私の願いは、未来を見ることじゃないんです。二人の幸せな姿を見て、二人を冷やかして、思い出話に胸をときめかせて……それが望みだったんです。それなのに……」
「難しいね、男と女って言うのは……いや、人と人ってのは、かな」
いつも二人で歩いた道。
それだけで、
この道には、たくさんの思い出が詰まっている。
時には言い合いもした。
笑った、怒った。そして泣いた。
この道は私と
それは10年後だって変わらない。
ただ違うのは、もう二人で歩くことがないんだということ。
そう思うとまた、瞳が濡れてきた。
「ただいま」
ドアを開けた
すると中から、物凄い勢いで走ってくる女の姿が目に入った。
「
声と同時に
「弘美さん、ただいま……って言うかそれ、やめてくださいといつも」
「なーに言ってるんだか。
弘美と呼ばれた女が、嬉しそうに
その光景に圧倒された
「
「あ、いや、その……これは違うんだ」
「え? 何が?」
「あ、今のはその」
「そんなことより!
「食べてる、食べてるから。それよりいい加減離してくださいって、義姉さん」
「義姉さん?」
「まーたまたまた、
「いやいやいやいや、普通は逆だから。名前で呼ぶ方が他人行儀だから」
「相変わらず細かいなぁ
そう言って手を取り中へと進む。
黒木弘美。
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