第7話 嘘、そんなこと
「理解はしてたけど
今日は実家に戻る日なんだ。よかったら
そう聞かれた
「僕以外誰からも認識されない存在。まるでSFだね」
自分にしか見えない存在。そんな
それはかなり怪しい。そう思い、
しかし
そんな
「付き合ってないって、どういうことですか?」
この時間に来たのは、自分と
付き合って、そしてキスをして。
そしてきっと、
だから今日、キスしてくれたんだ。
自分のことを大切にする、嫌がることは絶対にしない。
そう言ってくれた
それはある意味、誓いのようなものだったのだろう、そう思っていた。
私は
そう信じて疑わなかった。
それなのに今、二人が別れたことを告げられたのだ。
「ねえ
あまりのショックに、
「まあ……
タオルで涙を拭きながら、
「恋愛ってね、気持ちだけじゃ続かないものなんだ。例えば今の
でもね、その『好き』がどれくらいなのかは、本人にしか分からない。そしてその度合いが同じなんてことは、決してないんだ」
「どういうことですか」
「僕が
「……」
「人である以上、その違いはどうしても起こる。環境も違えば考え方も違うからね。そしてそれに気付いた時、10の人は怒ってしまう。自分はこれだけ好きなのに、どうして相手はそうじゃないのかって」
「でもそれは、感覚の問題じゃないんですか? 好きって気持ちは本当だし、その感覚はお互い理解し合えば」
「それが難しいのが人間なんだ。だってみんな、個性があるんだから。考え方が違うんだから」
「そんな……じゃあ想いの度合いが違うから、二人は別れたんですか?」
「いや、今のは一つの例えとして言ったんだ。それくらい恋愛は難しいっていう意味で」
「……別れた理由、聞いてもいいですか」
「別れた理由、ね」
「私たち、子供の頃から想い合ってきました。それは
同じ時間を過ごして、考え方や価値観も共有してきました。勿論
「別れるなんて、思ってもみなかった」
「だから知りたいんです。何があったのかを」
「特にないよ」
「え……」
「
「だったら」
「でも現実は違ってた。そう思っていたけど、僕たちは全く違う方向を向いていたんだ」
「だからそれが知りたいんです。何がきっかけで」
「
「どういうことですか」
「好き合ってる二人が別れてしまった。きっととんでもないことが起こったに違いない、そんな風に思ってるよね」
「はい、思ってます」
「物語ならそうだと思う。そうでなかったら、お客さんが納得してくれない。僕だって自分の小説で、そういうイベントの時は必死になって考えてた。
でもね、これは物語じゃない、現実なんだ。僕たちが生きてるこの世界ってのはね、そんなにドラマチックなことばかり起こる訳じゃないんだ」
「現実はそうじゃないってことですか」
「うん。僕らはお互いに、考え方や感じ方の違う他人なんだ。幼馴染だから、普通の人に比べたらそのハードルは低いかもしれない。でもね、突き詰めて言えば、僕たちは違う個なんだ。
人は相手を思いやる気持ち、尊重する優しさと同時に、思い通りにしたいっていうエゴも持ち合わせているんだ。初めはそれも新鮮に映る。こんな考えもあるんだ、いいなってね。でも付き合いが長くなっていく内に、少しずつそれがストレスになっていく。どうしてこうするんだ、自分に合わせてほしいって」
「……よく分かりません」
「そうだね。ごめんね、どうしても理屈っぽくなっちゃって」
「
「分からないとまでは言わないよ。考え方や価値観の違い、小さなすれ違いが積もり積もって、少しずつ僕らの心は離れていった。特にイベントがあった訳じゃない。いつの間にか連絡を取り合う回数も減っていって、別れる方向に向かっていったんだ」
「そんな……」
「自然消滅って言い方が、一番合ってると思う」
「嫌、嫌だよ……ずっと
そんな
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