第5話 未来の蓮くん、格好いいじゃない
二階建の古びた文化住宅。
それが
「……何て言ったらいいのかな。中々趣のある建物で」
隣にあるコインランドリーの窓ガラスで、自分の姿を確認する。
制服姿だった。
「ま、まあ、これはこれで……10年後の
そう言って苦笑いを浮かべる。
その時、ミウの声が聞こえた。
「無事到着したみたいだね」
「ミウ? よく分からないけど、ここが10年後の未来なんだよね。今とあんまり変わってない感じだけど、まあ10年ぐらいだったらこんな物なのかな」
「それもあるんだけど、説明してなかったね。ここでの
「そうなんだ。色々気を使ってくれてありがとね。それでミウ、今どこにいるの」
「僕のことは気にしないで。さっきも言った通り、僕はずっと
「そうだったね。私ってば、もう忘れてたよ」
「あははっ。それと
「そうなの?」
「うん。僕の声、
「……またすごいことを聞いたような……でも分かった。ミウがそう言うんならそうするね」
「ありがとう、
「それでミウ、ここはどこなのかな。私の街じゃなさそうだけど」
「
「え……」
ミウにそう言われ、
そう思うと、急に緊張してきた。
「……」
細い一本道を歩いてくる男。
口元から時折息が漏れている。疲れている様子だった。
彼は
「……久しぶり、だね」
「
両手を口に当て、頬を紅潮させた
「汚い所でごめんね」
鉄製の階段を上り、二階の一番奥の部屋に。
鍵を差し扉を開けた
「気は使わなくていいからね、遠慮せず入って」
「は、はい。ありがとうございます」
いつも軽口をたたいてる幼馴染なのだが、今目の前にいる彼は、自分より10歳も年上なんだ。そう思うと、思わず敬語になってしまった。
そんな
古びた電灯にぶら下がっている紐を引っ張り、電気をつける。
「適当に座ってて」
そう言うと
「おじゃま……します」
恐縮した面持ちでそう言うと、
「麦茶でいいかな」
「は、はい、大丈夫です」
「ははっ。だから、そんなに緊張しなくていいよ。君から見ればおじさんなんだろうけど、僕らは幼馴染の間柄だろ? 普段通りにしてくれた方が嬉しいよ」
台所から麦茶を持って来た
「……ありがとうございます」
「今の僕が呼び捨てで呼んじゃうと、少し乱暴な感じになってしまう。だから君のこと、
「は、はい」
「
「はい、そうです。
「仕事から帰ってる途中で、急に頭の中に色んな情報が入って来たんだ。中々面白い感覚だったよ。しかもそのことを拒絶出来ず、全部受け入れてしまう。精霊の力、思い知ったよ。
君は10年前の
そして
「はい、そういうことです。と言うか、
自分のことを
「ああ、うん……大学に入ったぐらい、だったかな。名前で呼び合うようになったんだ」
「そうなんですか……」
お互いに「レン」と呼び合うの、結構気に入ってたのにな。そう思いながら、麦茶を口にする。
「でも、ははっ……何て言うか、自分たちがどうなってるかを見たくて、わざわざ
「そうでしょうか」
「うん、面白いと思う。そんな
そう言って微笑む
「あ、あのその……
「え? ああ、髪ね……就職活動の時にね」
前髪も長く、よく
しかし今の
長髪の
しかし今の
「就職活動の時に」
「うん。でも全然うまくいかなくてね、大変だったよ」
「今のお仕事って、その」
「今は工場で働いているんだ」
「そうなんですか」
意外な答えに、
「うん。昔ながらの工場でね、夏は暑いし冬は寒いし大変だよ。ヘルメットもずっとかぶったままだし、まあそういう意味でも切っておいてよかったと思ってる」
「そうだったんですね……でもその髪型、いいと思います。ちょっとだけ、その……男らしいって言うか、格好いいです」
「ははっ、高校時代の
小さく笑い麦茶を口にする
そんな
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