第2話 ミウ
気が済むまで叫んだ
この子猫……今、喋ったよね。
そんな
子猫に出会ったのは、遡ること数時間前。
今日こそは
そう意気込みながら、いつもの神社に着いた時だった。
「どうしたのかな、あの子」
駆け寄った
「大丈夫? 子猫ちゃん、どうしたの?」
「この子震えてる……
「呼吸が弱くなってるし、病気なのかもしれない。病院に連れて行った方が」
「だよね……でもその前に」
「ひょっとしたらこの子、お腹が空いてるのかも知れないから」
そう言って手を向けると、子猫は鼻をひくひくさせた。そして口を開けると、舌で掌のミルクを舐めだした。
「
ミルクを舐める舌の動きが、力強くなっていく。そして最後の一滴を舐め終わると、ゆっくりと体を起こして体を振った。
「やった! 子猫ちゃん、復活した!」
歓喜の声を上げて子猫を抱き締める。
「よかったね、元気になって」
そう言ってもう一度膝の上に置くと、子猫は
そして二人を見てもう一度鳴くと、その場から走り去っていった。
「行っちゃったね……でもよかった」
子猫の行った先を見つめながら、
その笑顔に
「さっきは本当にありがとう、
子猫がそう言って目を細める。
「猫と話してる……何で? 私今日、変な物でも食べた?」
「
「……あなた、本当に猫?」
「いいところに気付いたね。うんうん、少し落ち着いたみたいでよかった」
「よかったも何も、こうしてあなたと話してるんだし……よく分からないけど、受け入れるしかないでしょ」
「あははっ、確かにそうだね。でも、切り替えが早くてよかったよ。あのままずっとパニックになってたら、僕も立ち去るしかなかったからね」
「お礼を言いに来たって言ったよね」
「うん。本当に助かったからね。元々僕たちは、そんなに食事を必要としない。食べなくても活動に支障はないんだ。でもたまに補充しないとエネルギー不足になって、さっきみたいなことになっちゃうんだ」
「と言うことはあなた、猫じゃないのね」
「そうだね、猫じゃない。君たちに分かるように言うなら、精霊ってところかな」
「精霊……」
「世の
「神様ってこと?」
「違うよ。僕らは言うなれば、神様の仕事を手伝う存在」
「……脳が追い付かない」
そうつぶやいた
「
「駄目だああああっ! 脳が、脳が追い付かないいいいっ!」
そう叫んだ
「……落ち着いた?」
「うん……ごめんね。私ってば、
「あははっ、それはまた変わった癖で」
「それで? あなた、名前は何て言うの?」
「れ、
「だって、どれだけ否定しても猫と話してるのは本当だし、そんなあなたが言うんだから、精霊なんでしょ。理解は出来ないけど、納得するしかないじゃない」
「ま、まあ、そうだね……ずっとパニックになられてても困るし……僕はミウって言うんだ」
「ミウちゃんか。かわいい名前だね」
「ありがとう、
「それで? ミウはどうしてここに来たの?」
「さっきも言った通り、助けてもらったお礼がしたくてね」
「お礼だなんて、そんなのいいっていいって。ミルクなんて安いものだし」
「でも
「そうなの?」
「うん。さっきも言った通り、僕たちは滅多に食事をしなくていいんだ。でもだからといって、必要ない訳じゃない。エネルギーが底をついたら、僕たちはこの世界から消えてしまう」
「そんな大事なことなのに、あんな風になるまで放置してたんだ」
「いや、あははっ……滅多に摂取しないから、ついつい忘れちゃうんだよね。それで気付いた時にはもう動けなくて。そんなこと、よくあるんだ」
「精霊のイメージがどんどん崩れていく……ミウって、ひょっとしてドジ?」
「言わないで、それは言わないで」
「あはははっ。それでわざわざ来てくれたのね、ありがとう」
「それでね、もしよかったらお礼をさせてほしいんだ」
「そんなのいいってば。こうしてお礼を言いに来てくれただけで十分だよ。それにね、今日はいいことがあったんだ。今の私はハッピー全開、これ以上ないってぐらい幸せなんだ」
「それってキスのことかな」
「えっ! ミウ、見てたの?」
「ごめんね、勝手に見ちゃって」
「誰にも見られてないって思ってたのに……きゃー! きゃー!」
またしても枕に顔を埋める
「……あのキスだって、ミウのおかげかもしれないし」
「そうなのかい?」
「うん。だってあの後すぐだったもん。キスされたの」
「きっと、
「そうなのかな……ふふっ、そう言われると恥ずかしいな」
「大好きな人とキス出来て、幸せな
「プライドかぁ……でもそう言われちゃったら、断るのも悪いよね」
「うんうん、何かないかな。どんなことでもいいよ。なんでも一つだけ
「うーん……」
「願い……一つだけ、私の願い……」
そしてふと、何かを思いついたようにうなずくと、ミウを見てにっこり笑った。
「ふふっ……ねえミウ。私、思いついちゃったかも」
「うんうん、何かな」
「私、見てみたいものがあるんだ」
「いいよ、何だって叶えてあげる。何が見たいのかな」
「私と……私と
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