「金なら払うって言ってるじゃん」……「非常識そのものですけど」

「だめ、だめだよケーシー。絶っっっっっっっ対に許さないからね」

「金なら払うって言ってるじゃん」

「絶っっっっっっっ対にだめ」

白銅貨三枚三ドニカだぞ。たったの白銅貨三枚三ドニカ

「お金に『たったの』なんてないよ! どんなお金も払わずに済むなら払わない、これで決まりだ」

「これは無駄づかいじゃねえよ。安全を買うんだから」

「もともとこっそり入る気で来たんだろ! ならこっそり入ろうよ」

「二人ともお静かに」


 呆れ顔でクロが言う。


「気づかれてしまいます」

「気づかれたっていいんだよ」


 ケーシーはめんどくさそうに看板を指さした。


「バディアル連合で今、大人気の地下迷Q! 入場料白銅貨三枚三ドニカ


 看板にはそう書いてある。


「敵さんが入れてくれるって書いてるんだから。敵さんの拠点に。白銅貨三枚三ドニカだぞ。払うっきゃないだろ」

「全員で白銅貨十五枚十五ドニカもするんだよ! 払うわけない!」

「あのさあ」


 騎士様エヴァン が連れてきたQ術師の兄ちゃんが呆れた顔で言う。


「払う、払わないって、論点がおかしくないスか? 罠とかそういうのは考えない?」


 困り顔の騎士様エヴァンがうんうん、と同意する。


 俺はケーシーと顔を見合わせた。ケーシーが口をとがらせる。


「お前が入場料払わないとか常識外れなことを言うからだろ」

「ケーシーの方こそなんでも金を払いたいとか非常識そのものですけど⁉︎」

「……だからそこは論点じゃないってば」

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