帰還編
プロローグ
ずっと、分かっていたことだった。
私は決して_____彼らのようにはなれない。彼らのように屈託のない笑みをこぼして、そして何気なくお互いを思いやって、そして懸命に明日を生きていこうとすることはできない。
生まれた時から、私は特別だった。両親は普通の人であったと記憶しているけど、顔も声も覚えていない。聞いた話によると、ある日突然起こった災害のせいで死んでしまったのだそうだ。色々な大人が私の周りにいて、次々に私は色んなところに連れていかれた。
その後、ひたすらに普通に暮らそうとした。育て親となってくれた人も、何度も変わったけど、その度に普通であろうと努力した。
でも、結局ダメだった。いつも私の周りでは変なことが起こる。
一人目の育て親は、私を助けた後、炎と瓦礫に飲まれて帰らぬ人となり、遺体すら見つからなかった。
二人目の育て親は、私を育てたことへの後悔を口にしながら、目の前で爆発に飲まれバラバラになった。
三人目の育て親は、私を守って何かに殺され、その後首がついていない状態で遺体で発見された。
四人目の育て親は、私を置いて逃げようとしたが、逃げた先で死んでしまった。高所から落下し、全身の骨格が明後日の方向に捻じ曲がっていたのを見た。
それ以降、私は育ての親をつけないようにお願いした。でも、孤独にはなれなかった。ひたすら孤独でいたくて、いろんなことに手を出した。周りのことを忘れるために、色んな仕事を経験してみた。新聞配達、飲食店の店員、スーパーやコンビニのレジ打ち、倉庫の作業員などを経験した。地元のお祭りや、学校の催し事の委員などにもなった。そういうのをやっているうちに外の世界に興味が湧いてきて、将来は海外で仕事がしてみたいと思うようになった。
_____でも、やはりダメなのだ。やはり私は、普通ではいられない。特別でいることの苦痛は、容赦無く襲いかかってくる。
今もまた、私とは関係がなかったはずの一人の人間を巻き込んでしまった。何も悪くないはずの人物を傷つけてしまった。
やはり私の居場所はここではないのだと知って_____私はその後、誰かと関わることをやめた。
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