記憶の在処
1
穢れを知らぬ純白の大地。
荒れ果てた土地ごと白に塗りつぶしたのは、あの空から降ってきた結晶だ。
この光景は不思議と僕の奥底に沈んだ何かを優しく撫でる。
この大地には僕等の足跡が残っていた。
でも、きっと時期に無くなってしまうだろう。
何も変わらない空。
何も変わらない星。
僕の日常は、再び長い停滞の日々へと戻っただけ。
ただ、少しだけ記憶を積み重ねただけ。
けどきっと、その記憶だっていつか消えてしまうだろう。
いつか消し去って、それでも僕は停滞した日々を生き続けるのだろう。
『私は沢山の人を見送ってきました。生み、育て、最期を見届けました。その子らはよく「幸せだった」という言葉を最期に、穏やかな表情で眠っていきました。あの時、パウラさんも同じ表情をしていました』
ドールは『記憶集約所へ行かれるのですか?』と僕に尋ねる。
「はい」
記憶集約所。
僕が再び停滞へと還る終着地点。
彼女と出会い、そうして始めた旅の目的地。
何より僕は、彼女と約束をしてしまった。
『分かりました。では、Primitive Human保存施設へ戻りましょう。記憶集約所のある施設、allについてご説明します』
ドールは来た道を引き返す。
僕もそれに続く。
最後にもう一度だけ振り返る。
そこにはただ、何もない物寂しい世界が広がるばかりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます