記憶の在処

1

 穢れを知らぬ純白の大地。

 荒れ果てた土地ごと白に塗りつぶしたのは、あの空から降ってきた結晶だ。

 この光景は不思議と僕の奥底に沈んだ何かを優しく撫でる。

 この大地には僕等の足跡が残っていた。

 でも、きっと時期に無くなってしまうだろう。

 何も変わらない空。

 何も変わらない星。

 僕の日常は、再び長い停滞の日々へと戻っただけ。

 ただ、少しだけ記憶を積み重ねただけ。

 けどきっと、その記憶だっていつか消えてしまうだろう。

 いつか消し去って、それでも僕は停滞した日々を生き続けるのだろう。


『私は沢山の人を見送ってきました。生み、育て、最期を見届けました。その子らはよく「幸せだった」という言葉を最期に、穏やかな表情で眠っていきました。あの時、パウラさんも同じ表情をしていました』


 ドールは『記憶集約所へ行かれるのですか?』と僕に尋ねる。


「はい」


 記憶集約所。

 僕が再び停滞へと還る終着地点。

 彼女と出会い、そうして始めた旅の目的地。

 何より僕は、彼女と約束をしてしまった。


『分かりました。では、Primitive Human保存施設へ戻りましょう。記憶集約所のある施設、allについてご説明します』


 ドールは来た道を引き返す。

 僕もそれに続く。

 最後にもう一度だけ振り返る。

 そこにはただ、何もない物寂しい世界が広がるばかりだった。

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