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「いやぁ、すまない。怪我してねぇか? まさか俺以外の人間がここにいるなんて思いもしなかったから」
灰色のボディに幾何学的な白い模様の線が走った、かつての成人男性程度の体格をしているNIが一人。瞳は確かな赤色の光を放っている。頭にはヘルメット。腰には沢山の工具が入ったウエストバッグ。
どうやら、この瓦礫たちを落としたのはこのNIらしい。
「怪我はしてない。でも」と、パウラは自動三輪車の方に目を向ける。すると、僕らの前に現れたこのNIの視線も、彼女の視線を辿るように拉げた自動三輪車の方に向かった。
「これ、お前たちの?」
「はい」
「マジか。いや、本当にすまない……ちょっと見てもいいか?」
「はい」
僕が頷くと、赤い瞳のNIは駆け足になって自動三輪車の方へ行き、「ああ、なるほど……ここが、うん。はいはい」と独り言を呟き、「よかった。大丈夫。これなら直せる」と言うのだった。
「本当?」
「本当だよ、生身の嬢ちゃん。俺の所為でこうなっちまったんだ。直すくらいさせてくれ。ただ、今手を付けている仕事が終わった後になっちまうが、それでもいいか」
「うん。大丈夫」
僕でも直すことは出来そうだったけれど、直してもらえると言うのならそれはとても助かる。
「よし。じゃあこいつは俺が責任持って直させてもらうぜ。と、まあそれはそれとして」
自動三輪車から離れ、僕とパウラの前に立つ。
「お前たち、一体どこから来たんだ? ここには俺以外のNIも、ましてや生身の体を持った人間なんてもんもいないはずだ」
と、彼は僕等のことを足の先から頭のてっぺんまでじっくりと怪しむように視線を動かすのだった。そんな赤い瞳の彼に、僕は「僕達はあの螺旋状の道を下って地上から来ました」と返す。すると、彼は「地上? ってことはここの外ってことか? ここは海の下にあるはずだが、まさか潜ってきたなんてことはないよな?」と、目を細めて顎に手を当てるのだった。
この都市は海の下にある。
僕等がやってきた地上に、海何てものは見当たらなかった。
「海? この真上は一面コンクリートの地面だった」僕よりも先にパウラが答える。すると、僕等の前に現れたNIはその赤い瞳を幾何か大きくした後「そうか……。まぁ、そんなに時間が経ったってことか」と呟き、一人勝手に納得したように瞳の光を細め顔を少し俯かせるのだった。
「大丈夫ですか?」
「え? ああいや、大丈夫だ気にするな。……と、自己紹介がまだだった」
ウェーバー。彼はそう名乗った。
「お前たち、名前は?」
「僕は本当の名前を忘れてしまったけれど、今はネウロという名前です。そして」
「私はパウラ」と、彼女は小さくお辞儀をする。
「ネウロとパウラか。で、どうしてこんなところに?」
「僕達、ある場所を目指しているのです」
記憶集約所がどこにあるのか、ウェーバーは知っていますか?
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