第99話 気に成る……

「まぁ、今晩もさくらとの交流が有るし、その時に聞けば良いか!」


 俺はそう思い、さくらとの交流時間がやって来るまでの間は、連載中小説の続きを執筆する。

 相変わらず爆発ヒットしない小説では有るが、常連さんがいてくれる以上、作品の更新や最後は完結させなければ成らない!!

 俺はその時間がやって来るまでは、上達しないキーボードを打ち続けた……


 ☆


 今晩もさくらとの交流時間が始まる。

 完全に恋人関係に成った俺とさくらで有るが、試合開始のゴングは基本さくらからで有る。


 俺はごみ収集のアルバイトを終えればほぼフリーで有るが、さくらの場合は学校が終わっても、親友や家族との付き合いが有るからだ。

『別にRailだからメッセージ送れば良いじゃん!』と思うかも知れないが、さくらは俺との関係を朱里さん以外の人に、どれだけ広めているのかは分からない。


『青い鳥』のアカウントもさくらは俺の為に作ってくれたが、本当に俺専用で有った。

 時々、さくらの『青い鳥』を見るが、フォロワーは俺だけで有るしフォローも俺だけで有る上、青い鳥上の活動も何もしていなかった……


「こう言ったのは誰かに見られると、不味い場合も有るからな!」


 さくらが俺の名前を偽装していれば別だが、そうで無ければRailの通知表示時に俺の名前が出てしまう。

 俺も相手が同性とはいえ、まださくらは高校生だから非常に気を付けて、扱わなければ成らない!?

 そう言ったことから、さくらとの交流時間の開始は余程のことが無い限り、さくらからのルールにして有る。


 今晩も通知上の話しから、通話への話しに移行する。

 Railの通話機能を使うので電話料金が要らないは、俺とさくらにとっても大きい。

 通話デートも問題無く進んでおり、俺は先ほどのことをさくらに聞いてみる。


「ねぇ、さくら…。さくらは小説活動辞めちゃったの?」

「さっき小説投稿サイト見たら、さくらのアカウントが消えていたけど……」


『あっ…颯太さんには、報告していませんでしたね!』

『はい、そうです。一昨日、私のアカウントを削除しました!』


 電話向こうのさくらは、何時も通りの元気口調で喋っている。

 俺には報告と言っているから、さくらの親友で有る朱里さんには伝えたのだろうか?

 俺が前回小説サイトを開いたのは三日前だから、話しの辻褄は合っている。


「あっ……そうなんだ!///」

「辞めちゃったんだ!///」」


 俺は少し驚きながら話す。


『アカウントを消しましたから、そう成りますよね…』

『私が小説を書いていたのは、私の悩みを聞いて欲しいが為に書いていましたが、私には颯太さんと言う彼氏が出来ました!!』


 さくらは普段通りの口調で喋っている。


「……もう、知らない人に聞いて貰う必要が無いから、作品をアカウントごと消した訳?」


『そんな感じですね!』

『今の私はあの時と比べて心が大分落ち着いていますし、颯太さんのお陰で前向きの気持ちに成れています!!』


『小説投稿サイト上で、私を親友として見て貰って人には、申し訳ない気持ちも確かに有りますが、私と颯太さんの思い出話を、公開するのは流石に恥ずかしいですから//////』


 電話向こうのさくらが、恥ずかしがっている表情が口調からでも伝わる。

 俺もそれだけは勘弁して欲しいと感じた。


「うん。分かった。そう言う事ね!」

「誰かに辞めろとか言われてアカウントを消したのかなと思ったけど、さくらの心が落ち着いたから、もう小説活動はしない訳なんだ!」

「なるほど、なるほど……」


 俺をフォロワーしてくれて居る人が一人減ってしまったけど、それを強要させる訳には行かない。


『……颯太さんは私にまだ、小説活動を続けて欲しかったのですか?』


 この話はこれで終わりかなと感じていたが、さくらは真面目な口調で聞いてきた。


「う~ん、どうだろ…」

「さくらの場合は、自分の悩みを聞いて貰うのが目的だったからね…」

「それを書く意義が無く成ったのだから、無理をして続けて欲しいとは思わないかな?」


『そう言ってくれますと、嬉しいです!』

『私は小説家デビューを目指して、始めた訳では有りません!』

『それに……私場合は、スマートフォンから入力しているから結構大変なんですよ(汗)』


「あっ……さくらは、スマートフォンで小説活動していたんだ!!」

「それだと、何かと大変だね……」


『今は慣れましたが、長文を書く時はスマートフォンでは不便ですね!』

『投稿サイトの執筆支援を使って入力しますが、スマートフォンの画面はパソコンと比べれば小さいですからね///』


「スマートフォン入力は確かに大変そうだ……」

「でも、さくらの場合はもう、無理して書く必要はもう無いもんね!」


『はい!』

『今の私には、心安らぐ人が電話向こうに居ますから♪』


 嬉しそうな口調で言うさくら!!

 フォロワーさんを一人失ってしまったが、代わり一人の男の娘が本当に元気に成ったので、これはこれで良しとしよう!!

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