第87話 カラオケデート その1

 公園駐車場に戻り、お互いがトイレを済ませてから、俺とさくらは車に乗り込む。

 当然ながら……さくらは俺と同じ、男性用トイレには付いて来なかった。


 次のデート場所はカラオケ屋でカラオケだが、急な予定変更でカラオケにしたので、俺はこの近隣のカラオケ屋を知らないし、その行き方も分からない……

 その為当然、俺はさくらにカラオケ屋の場所を聞く事に成る。


「さくら…。此処からどうやって、カラオケ屋さんに行くの?」


「あっ……そうでしたね!」

「じゃあ、案内しますね!!」


 さくらは穏やかな表情で言う。

 どこどこの場所と言っても、俺はこの地元人間では無いので、場所を言うより案内した方が良いとさくらは感じたのだろう……


(まぁ、俺も場所を言われても、困るし……さくらも地元民だから大丈夫だろう!)


「じゃあ、さくら。案内頼むね!!」


 俺は和やかな表情で、さくらに声を掛ける。


「はい!」

「お任せ下さい、颯太さん♪」


 さくらも笑顔で言う。


「じゃあ、出発するね。さくら!」


 俺はそう言いながら車を発進させて、公園を後にしてカラオケ屋に向かう。

 さくらの案内指示に従いながら、俺の運転する車はカラオケ屋に向かった……


 ……


「颯太さん。あのお店です♪」


「あぁ……アレね!」


 公園から車で十数分後……

 俺の運転する車は、とある店舗に到着する。


 店の外装には『漫画喫茶・カラオケ』と書かれて有る。

 一つの店の中に、漫画喫茶とカラオケが入っているのだろうか?

 俺は駐車場マスに車を停車させる。


「お疲れ様です! 颯太さん♪」


 俺が車を停車させて、サイドブレーキを引くと同時に、さくらが笑顔で言ってくる。

 さくらの指示で此処まで来たが、途中で迷うこと無く、無事に到着する。

 さくらに方向音痴の要素は無さそうだ!


「じゃあ、行くか。さくら!」


「はい♪」


 俺とさくらは車内から出て店舗に向かい、カラオケ受付(入室)の手続きを始める。

 さくらは高校生なので学生証を取り出して、受付時に身分を証明する。

 高校生だと一般(大人)より、料金が安くなるからだ。


 俺は見る気は無かったが、学生証には顔写真が貼って有るので、さくらの学生証顔写真を見てしまったが、さくらはきちんと女子の姿をしていた。

 受付の店員さんも、学生証とさくらの姿を見て確認していたが、特に何も言われなかった。

 店員から、何も言われないと言うことは、問題無いのだろう。


(さくらは本当に、女性の姿で学園に通っているのだな……)


 今までの話しから、さくらは女性で生活をしているとは聞いていたが、公的書類扱いに成る学生証でも女性の姿をしているのだから、さくらの身分は女性扱いに成るのだろう?


「お時間はどうされますか?」


 受付店員からカラオケ時間を聞かれる。

 今の時刻は19時前なので、さくらの門限を意識して2時間の時間設定にする。

 今回も、さくらを最後送り届ける場所は宇野あざの駅で有るが、このカラオケ店から10分もしない場所に駅は有る。


 問題なく(?)カラオケ受付の手続きを終えて、マイク二本が入ったカゴと伝票を店員さんから俺は受け取る。

 ソフトドリンクはフリードリンクなので、ドリンクバーでソフトドリンクを用意してから、指定された部屋に俺とさくらは入る。

 此処からは、さくらとカラオケデートの始まりで有るが……


「颯太さん!」

「歌を歌い始める前に、何か食べ物を頼みましょうか!」


 さくらは和やかな表情で言ってくる。

 まだ、そんなに腹が空いたと俺は言えないが、さくらは小腹でも空いたのだろう。


「そうだね!」

「カラオケに来たんだから、何か食べながら歌いたいね!!」


 歌を歌う前に、室内に有るフードメニューをテーブルに広げて、俺はさくらと食べたい物を選ぶ……

 俺は特に食べたい物が無かったので、さくらが食べたい物を中心に選ぶ事に成った。

 定番の鶏の唐揚げ、フライドポテト、さくら用のフルーツパフェとメニューも決まり、さくらがフロントに電話注文をしている。


(やっぱりと言うか、さくらはまだ若いな!)

(まだ、ランチから3時間位しか経っていないのに、油系をしっかりと攻める!!)


 俺はそんな事を思いながら、フロントに電話注文しているさくらの姿を眺めていた……

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