第63話 朱里の心情
……
(しかし……颯太さんが私を意識しているとは!)
(あれだけ素直な子も、今時珍しいよね…)
ほなみの駐車場で、さくらちゃんと颯太さんと別れた後、歩きながら私は家に戻っているが、さくらちゃんや颯太さんの事を考えながら戻っている。
(私も颯太さんのことは、悪くないかなと思ってはいるけど……さくらちゃんから横取りをする訳にも行かないし、それに颯太さんの職業もね……)
颯太さんの仕事に文句を付ける気は無いが、私はこれでも喫茶店『ひなた』のオーナー兼店長でも有る。
この喫茶店は私の祖母が元々経営していたのだが、祖母が完治する見込みが低い
喫茶店の手伝いは高校生からしており、大学も地元の大学にわざわざ進学して、私は喫茶店『ひなた』の手伝いをしてきた。
このまま、喫茶店での従業員就職も考えたが、両親は猛反対して、祖母も『朱里ちゃん…。朱里ちゃんの気持ちは嬉しいけど、近年……常連さんが減っていてね……』と、間接的に断られてしまった。
私は喫茶店『ひなた』での就職は諦め、そのスキルを生かして外食産業に就職した。
そこはファミリーレストランを主体する企業で有ったが、男女関係無しに厨房作業や接客作業をやらせる素晴らし企業で有った!?
良いのか悪いのかは良く分からないが、私は其処で更にスキルに磨きをかけて、其処での将来が期待され始めた頃……祖母が倒れた。
(私もあの企業で自信を付けていたから『おばあちゃんのお店は、私が引き継ぐ!!』と言って、親戚連中を黙らしたな……)
(うん! あの時の私は若かった!!)
私は外食産業の仕事を退職して、祖母の了解も得てから、私と当時雇っていたパート従業員で喫茶店『ひなた』を再開させた。
祖母のメニューは大体作れたが、最近のレトルト・冷凍食品は本当に素晴らしいので、業務用では有るが、私一人で完全調理が出来るメニューに変更した。
国道沿いのお陰と、業務用食品を大幅採用し、その分値段も下げた為、大きく売り上げが下がる事はなかったが、祖母の味を知っている常連客は離れて行った……
祖母の病気は回復出来たが、喫茶店の経営は難しいと祖母は判断して、祖母は私に経営を改めて託してくれたが、託してくれただけで有り、正式な相続では無い。
祖母は現在、私の父の兄家族と一緒に過ごしている。
今は祖母が健在だから問題が無いが、もし祖母が他界した時は、この辺が大問題になってくる。
そう成った場合、相続権が発生する父が、どうにかする訳だが、果たしてどうにか出来るのだろうか?
……
(颯太さんは……私より、絶対年下だよね!)
(さくらちゃんの彼氏だから、あまり気にしなかったけど、2~3歳は絶対年下だよね!!)
(私は出来れば……年上の男性が……)
(けど、颯太さんは年上の私に好意を感じているのだから、颯太さんの守備範囲は広いのかな??)
(うーん。考えても仕方ないか!)
(颯太さんも……悪い人では無いけど、これからのことや将来を考えれば絶対に無いわ!)
今はランチを主体にした経営だけど……このままでは祖母が他界した時、私はこのお店を買い取る事が出来ない!
将来を真剣に意識すれば、ディナー営業も必要と成ってくる。
今、私が求めている人は、私の喫茶店を盛り上げてくれる人で有る。
料理スキルは当然として、経営面や将来を考えられる人!!
これだけは絶対に外せない!!
颯太さんは小説家を目指しているし、それに私に好意が有るとしても、この喫茶店の将来性を考える人では無いだろう。
もし……将来性を意識しているなら、あの年代で誰もが出来る仕事に、正社員で有ろうが就いていない……
(私としては、このままさくらちゃんと颯太さんが良い関係に成れば良いと思うが、さくらちゃんは何だかんだで男性だからな……)
くっつけてしまった私が言うのも変だが、もしあの二人の展開が順調良く進んでいけば、絶対大きな壁にぶち当たる。
婚姻の問題と子孫の問題だ。
(さくらちゃんは、まだ心が幼いけど、颯太さんは颯太さん成りに将来性を見ていたからね!)
(私はあの二人を応援するけど、颯太さんがこれ以上、私に好意を求めることは、止めさせないとな)
Railでは有るが、颯太さんに連絡先を教えてしまった。
さくらちゃんも意地が有る子だし、颯太さんも
あの二人が大喧嘩をした時、双方が頼れるのは私だけだ。
さくらちゃんの中で、本当の親友は私しか居ないしだろうし、颯太さんもさくらちゃんと関わりが有るのは私だけだ。
(あの時、釘を刺して置いたから、馬鹿な事はしないと思うけど、して来たら本当にブロックだね!!)
颯太さんの事は嫌いでは無いが、さくらちゃんと恋人関係を持っているし、私も将来を意識すれば、颯太さんでは駄目だ!
(私がおばあちゃんの喫茶店を捨てて、颯太さんを取れば別だが、今はそんな気持ちでは無い!)
(……まぁ、しばらくは、あの二人を純粋に応援しましょう!!)
二人の事を心の中で応援しながら、私は家に戻った。
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