第60話 さくらの心情 その1
……
私は最後、颯太さんの車から逃げ出すように車から降りる。
そうしないと……何時まで経っても、私自身が別れを惜しむからだ。
車を降りてから少しした所で、颯太さんの車の方に向きを変え、最後の挨拶をして、私は駅のロータリーの方に走り始める……
駅のロータリーに到着するが、其処には両親の姿なんて居ない。
両親にはまだ連絡をしていないからだ。
私は嘘を付いて最後、颯太さんと別れた。
(あぁ、言わなかったら、私はまだ車内に残っていたし、
そうして貰っても私的に良かったが、私の家の門限は22時で有る。
仮に、そうして貰った場合、私の帰りを心配した両親が十浜駅まで迎えに来ているかも知れない?
そう成ってしまったら大事だ。
私は今日『朱里さんの所に遊びに行く』と言って、家を出ている。
更に『朱里さんと夕食を食べてから帰る!』と、まで言ってしまった。
其処まで両親に嘘を付いておきながら、十浜駅で私の両親と颯太さんが遭遇したら、大変に成るでは済まない。それは私でも分かる。
私の両親は遠慮無しに警察を呼び、真面目な颯太さんは、私の
(今から、電車で十浜に向かっても、絶対22時を超えるな…)
(今日は当初の予定通り、両親に迎えに来て貰おう……)
私はバックからスマートフォンを取り出し、両親に
電話は母親が出て、少し小言を言われたが、直ぐに向かってくれるそうだ。
場所は宇野駅のロータリーと告げて電話を切り、私はその付近で母親が迎えに来るのを待つ。
地方線の終点駅だが、この駅は再開発されたお陰で非常に治安も良くなったし、更に交番も付近に有る。
何か有ったら、交番に駆け込めば良い。
私は男性だが、外見は完全に女性で有るし、他の女性よりも容姿が多少優れていることは自覚している。
この格好をするように成ってから、若い男性から声を掛けられることが非常に増えたが……私は、所詮男性で有る為、相手の目的が直ぐに分かってしまう。
『私と性行為をしたいことを……』
でも、私は見ず知らずの男性と性行為をしたくないし、相手も私が女性に見えるからこそ、私に声を掛けて来ている。
私が求めているのは性行為も一応有るが、一番の目的は私の心を助けて、守ってくれる人で有る。
颯太さんと関係を持つ前は高校生でも使える、トークアプリやチャットアプリで、異性を求めたが……私の正体を男性と知ると、みんな直ぐに私の元を去って行った……
颯太さんの場合は、トークアプリやチャットアプリでは無く、小説投稿サイトの交流機能で仲を深めて、颯太さんの姿形はサイト仕様上の関係で知りようが無かったが、この人なら私の事を理解してくれると願って、颯太さんにプッシュを掛けた。
颯太さんも、私の事を気に成ってくれていたので、直ぐに関係は深くなり、今日初めて出会う事に成った。
颯太さんは凄くイケメンでは無いが、清潔感を感じ、優しそうな人だし、また女性には慣れていない人だと直ぐに分かった。
私が男性と告白するまでは、本当に遠慮がちに話していた。
そして同時に、私は『この人なら悪くないかも!』と感じ始めた。
この時間が来るまで、たくさんのアクシデントが発生したが、颯太さんは最後、私の存在を受け入れてくれたし、凄く浅いけど恋人関係にも成れた。
私は凄く嬉しいけど……きっと、颯太さんは今頃、後悔に近い者をしているかも知れない……
颯太さんは同性同士の関係を、最後の最後まで悩んでいた。
けど、私が別れる素振りの発言をしたら、一気に求めてきた!
(これで、良かったんだ!)
(どんな手で有れと、颯太さんとは正式な関係を作れた!)
私は別れるつもりなんて無いけど……颯太さんが、あの時『別れよう!』宣言をしていたら、今頃どうなっていただろう?
私は思いっきり泣いているのか、それとも警察を呼んで、颯太さんの人生を壊していたのだろうか……
『プゥ~、プッ、プゥ~~♪』
「!」
聞き慣れたクラクション音が、私の耳に入ってくる!
私のその方角に体の向きを変えると、母親が運転する車が駅のロータリーに到着していた。
私は小走りで、母親の車に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます