第50話 悪い考え……

「けど、その話は今すぐする話では無いわね!」

「二人共まだ付き合い始めて、ほんの数時間だし、仮に颯太さんがこの町にやって来ても馴染めるとは限らないからね♪」


 朱里さんは少し微笑んだ表情で、俺とさくらに向けて言う。

 俺も幾らさくらの為と言っても、今の町を捨ててまでこの町に来たいと思わないし、それをすると言う事は、さくらと完全な関係を俺が求めている事に成る!?


 さくらの方は少し納得していない感じはするが、言葉を出さないと言うことは、朱里さんの言葉を理解したのだろう。

 今のさくらは何でも、性急にことを求め過ぎている。

 俺なんか、青田刈りする価値なんて全く無いのに……


「さぁ、さぁ、二人共!」

「冷める前に頂いちゃいましょ♪」


 朱里さんは和やかな表情で言う。

 俺もさくらも箸が止まっていた。


「ですね!///」

「カツ丼も衣がサクサクの内に、食べるのが美味しいですからね!!」


 俺は味噌汁を飲むつもりだったが、味噌汁を飲むのを止め、カツ丼のどんぶりを持って食べるのを再開させる。


「……はい///」


 さくらも静かな返事をして、食事を再開させた。

 その後は質問タイムが発生すること無く、食事の時間は過ぎていく……


 ……


 三人とも食事を終えて、店のおばちゃんからお代わりの麦茶を貰って一息ついている。

 全員、綺麗に完食した!

 カツ丼は大盛りにしたお陰で、俺はお腹いっぱしだし、朱里さんとさくらも満足の表情をしていた。


 そろそろ閉店時間が近づいているのか、店のおばちゃんは俺達にお代わりの麦茶を注いだ後、表の“のれん”を店内に仕舞っていた。


「ふぅ~~」


『コト』


 朱里さんは麦茶の入ったコップをテーブルに置くと、俺達に向けて話し始める。


「これから、色々大変だと思うけど、颯太さんはさくらちゃんを気遣い、さくらちゃんは颯太さんから、たくさんの愛情を貰うのだよ♪」


 朱里さんは目を細めて和やかな表情で言うが、俺達は同姓で有る。

 でも、この店ほなみはさくらの事情を知らない(?)と思うから、そう言っているのだろうと俺は思う……


「ありがとうございます。朱里さん!♪」

「颯太さんからたくさんの愛情を貰い、愛をもっと育てていきます❤」


 朱里さんの言葉に対し、満面な笑みで答えるさくら!?

 愛を育てることは良いけど……愛の結晶が作れるの!?


「朱里さん!」

「さくらとは良い関係を保って行きたいです!」


 俺は当たり障りの無い言葉を朱里さんに言う。

 ここで『さくらを幸せにします!』とか言ったら、さくらは喜んで旅行バックを持って、俺の町に勝手にやって来るだろう。


「うん、うん。期待しているわよ!」

「颯太さん!」

「さくらちゃんは本当に良い子だから、是非、颯太さんの手で幸せにして上げてね♪」


「……//////」


 朱里さんは俺に気が有る筈なのに、とんでもない言葉を言う。

 返事をしようがない!!


 俺だって、さくらの性別が女性だったら、今の段階で絶対に手放さない!!

 こんな美少女、金輪際こんりんざい出会うことが出来ないからだ!!


(あれ…?)

(けど、これは……男の娘でも言えるよな…)


(この国で堂々と、男の娘宣言している人も確かに居るが、さくらほど超絶美少女顔では無い……)

(そう考えるとさくらを大切にして、側に居て貰う方が、俺にとっては幸せなのかな?)


よこしまな気持ちを考える、悪い自分も其処に居た!!

 男の娘のさくらでも、一つのデメリットを除けば、メリットだらけで有る!!


(性格も良いし、優しいし、可愛いと三拍子揃っている!)

(彼女親友関係なく人付き合いをするなら、三拍子揃っている子の方が良い!!)


 さくらを男性の理由で、距離を作る必要性無いなと俺の中で思い始めていた。


「さて、大分良い時間に成ってきたから、そろそろ解散の流れにしようか!」


 朱里さんは和やかな表情で言う。

 店内に掛けて有る壁時計を見ると、20時を結構過ぎていた。


 朱里さんとは残念だが、このお店でお別れに成るはずだ。

 美少女顔のさくらが側に居るが、やっぱり本物を何処かで俺は求めていた。


 ……

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