第49話 俺の仕事内容
「朱里さん。さくら……」
「俺の仕事は今、家庭ごみ収集の仕事をしている…」
俺がその言葉を切り出すと、朱里さんの表情が驚いた表情に変わった!?
「えっ……そうなの。颯太さん……!」
朱里さんは『意外……』の表情で俺を見ている。
「颯太さんは……サラリーマンでも、ごみを集めるお仕事ですか…」
さくらも少し複雑な表情をしていた……。さくらの中では、俺の仕事はどんな仕事だと思っていたのだろうか?
案の定と思ったが……一気に空気が微妙に成ってしまった!!
此処で朱里さんは戸惑いながらも、質問を続ける。
「颯太さんは、それを望んでその仕事をしているの?」
「それとも……このご時世だから……あはは//////」
朱里さんの中でも、言葉を掛けにくいのだろう。
ぶっちゃけ言えば、俺の住んでいる地域の主要産業は漁業・林業・農業が中心だ。
大手企業も俺の住んで居る家からの通勤圏内には無いし、上京をする勇気も無かった。
その中で偶然良く見つけた仕事が、家庭ごみ収集の仕事だ。
綺麗な仕事では無いし、天候関係無しに“ごみ”は集積所に出て来るし、回収もしなければならない……
俺の住んでいる地域は土日にごみ収集が無いので、それが俺の休暇に成る。
身分は正社員ではなくアルバイト社員だが、時給がその分良い為、どうにか食べて行けている。
けど、さくらと恋人関係に成った以上、これから“どんどん”お金が必要に成るし、何処かで正社員にして貰うか、本格的な就職活動をしなければ成らないし……出来れば、本格的な商業デビューをしたい者だ!
「俺の場合は……望んだではなく、生活の為ですね……」
「そっ、そうよね//////」
「ごめんね。颯太さん//////」
「聞くべきでは無い事を聞いてしまって!//////」
朱里さんは困った笑顔プラス、イラストで言えば汗マークが顔に付いていた。
さくらも何か言って来るだろうと思っていたが、さくらは澄ました表情で俺を見ていた!
朱里さんの言葉を終えたタイミングで、やっぱりさくらが俺に話し掛ける。
「……そうしますと、颯太さんは今のお仕事に、こだわりは無いのですよね?」
「こだわり?」
「どう言う意味。さくら?」
俺は“こだわり”の意味が理解出来ず、さくらに聞く。
「えっとですね……颯太さんが、今のお仕事や地域に愛着心が無ければ、引っ越しとかも出来ますよね?」
「うっ、うん……」
「今の仕事に対する未練は無いけど、引っ越しても仕事がそう簡単には見つかるとは……」
俺は、さくらがいきなり何を言い出したかと感じてしまう!
でも、さくらは澄ました表情のままで再び話し始める。
「いっそ、引っ越しません。この町に……?」
「この町は産業が豊かですし、自然豊かな町です!」
「その方が私は嬉しいですし…//////」
澄ました表情で言葉を続けたさくらだが、最後付近の言葉は、頬を染めて微笑みながら話した。
「えっと、えっと、それは……さくら!//////」
「大人の世界は今日や明日で、引っ越し出来る物では無いのだよ//////」
俺がそう言うと、さくらは再び澄ました表情に変わる。
「はい…。それは私でも分かります!」
「ただ、興味が無い仕事を無意味に行うより、将来性を考えた方が良いかなと感じまして……」
「うっ、うん…///」
「さくらの言う事も一理有るけど、俺は今の生活で満足しているから//////」
これ以上の話は平行線に成る予感がしたので、俺は適当に切り上げる。
「いえ…。すいません//////」
「思った事を口に出してしまって//////」
さくらも少し踏み込みすぎたと感じたのか、あっさりと引く。
俺の将来を心配してくれるのは嬉しいが……少々、お節介だなと感じてしまった。
それを無言で見ていた朱里さんが、俺とさくらに向けて話し始める。
「颯太さんとさくらちゃんの今後の行方が、今は分からないだろうけど、将来を考えるなら、どちらかが動く必要性は有りそうね!」
朱里さんは穏やか表情で言う。
昔から、遠距離恋愛は長続きしないと良く言われる。
人間という生き物は、心が繋がっていると言いつつ、体の触れ合いを本能が求める。
だから途中で、遠距離恋愛は破綻する……
(俺の場合は……恋愛では無いが、さくらは恋愛感情だ)
(同じ成人同士だった場合は、さくらが俺の元に来るのかな……)
俺はそんな事を思いつつ、カツ丼のどんぶりを置いて、味噌汁の椀を取ろうとした。
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