第48話 陽気な時間!? その2

「はい! お待たせしました!!」

「ミックスフライ定食とカツ丼大盛りね!!」


 店のおばちゃんは穏やか表情で言いながら、俺達が注文した料理の配膳をしていく。

 ミックスフライ定食は大皿にミックスフライ・千切りキャベツ・ポテトサラダが乗っており、後はご飯・味噌汁・漬物で有った。エビフライに使うタルタルソースもちゃんと有った。

 カツ丼の方も、きちんと味噌汁・漬物が付いていた!


「おばちゃん!」

「生ビール中、もう一つ!」


「生ビール中、追加ね!」

「直ぐ、持ってくるね!!」


「では、ごゆっくりどうぞ!」

「朱里ちゃん達!!」


「ありがとう。おばちゃん♪」


 店のおばちゃんの言葉に対し、笑顔で返事をする朱里さん。


「じゃあ、温かい内に食べましょうか♪」

「颯太さん、さくらちゃん!」


「はい!」


「はい♪」


 朱里さんの言葉に俺とさくらは返事をして、食事の開始だ。

 俺と朱里さんは心の中で『いただきます』をしたが、さくらはちゃんと言葉に出していた!

 本当に女性らしい女性を演じているな!


(……見た目は美味しそうなカツ丼だ!)


 この店ほなみのカツ丼は、トンカツを甘辛いだし醤油で煮て、溶き卵をかけて煮た物では無く、トンカツの上にだし醤油入りの、半熟状“ふわふわ”溶き卵をかけた物で有った。

 オーソドックスなカツ丼では無く、少し変わり種のカツ丼で有った。


(さくらも体は男性だから、きっと男性好みの味なんだろう!)


 ふわふわ溶き卵なので、箸では少し食べにくいが、上手にトンカツとご飯を箸で掴み口に入れる……


「もぐ、もぐ、―――」

「普段食べるカツ丼より、卵とだしの美味しさを感じる!!」


 俺がそう言葉に出すと、さくらが反応を示す!


「そのカツ丼、美味しいですよね! 颯太さん!♪」


「うん!」

「普段食べるカツ丼より美味しいよ。さくら!!」


 俺とさくらはお互い、笑顔で言葉を交わし合う。


「私は前回、カツ丼を頂きましたから、今日はミックスフライ定食にしましたが、次回はカツ丼を頼もうと思います!」


 さくらの中では、もう次回の来店予定を立てている!?

 そんなにしょっちゅう、朱里さんと食べに来ているの!?


 朱里さんもさくらも、和やかな表情でミックスフライを食べている。

 カツ丼も良いけど、揚げたてのエビフライにタルタルソースを付けて、頬張るの良い!!


「♪~~」


 そして朱里さんは追加の生ビールで、“さけのあて”代わりにミックスフライを食べている。

 朱里さんは食事とお酒を楽しんでいた。


(俺も今度来る時は宿を取るべきかと思うが……車で来てしまったら、結局宿を取っても酒は飲めない…。そうなると電車か……)


 食事も中盤ぐらいに差し掛かった所で、朱里さんから俺に再び質問をされる。


「颯太さんは、普段どんなお仕事しているの?」


 朱里さんにとっては、悪気の無い質問だが……俺の仕事は少々答えにくい仕事だ。


「あっ、仕事ですか///!」


「そう!」

「もしかして……答えにくいお仕事?」


 今まで陽気だった朱里さんの表情に影が曇る。

 さくらも食べるのを一時中断して、俺の方に顔を向けていた!!

 恋人関係に成った以上、俺の仕事内容を知りたいのは当然だろう……


(変な嘘を付いても仕方ないしな……)

(それにこの仕事は世の中、無くては成らない仕事だ……)


 俺の仕事内容を知っても、朱里さんやさくらは、軽蔑する様な眼差しをしたり、非難の言葉を掛ける事はしないだろう。

 特にさくらは、絶対言わないと信じたい!

 俺は自分の仕事内容を正直に、朱里さんとさくらに言おうとしていた……

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