第40話 形作り……

 俺が、桜坂さんと関係を持つ事は悪くは無いが、大問題が有る。

 一度、関係が出来てしまったら、それを切り捨てる事が難しいからだ。

 俺が悪魔に成れば別だが、悪魔に成れて居るぐらいなら、マッチングアプリで女漁りをとうの昔にしているはずだ。


「颯太さん……」

「私の経緯いきさつは、私が今まで話したのと、先ほど朱里さんが話した通りです…」

「颯太さんが同性同士での、恋人関係を拒む気持ちも分かりますが、私の気持ちは真剣です!!」

「どうか……私と親密な関係に成ってください!//////」


 桜坂さんは頬を染めながら、嬉しそうな表情で、正式な告白をしてきた!!

 その場面を、朱里さんが固唾をのんで見守っている。


(遠回しな恋人関係では無く、真正面から来たか!!)

(真面目すぎるよ……さくらさん)

(こんな二者択一の選択、さくらさんを振る訳には行かないだろう!!)←大汗


 俺が取れる選択は一つだけだが……こんな短時間で事が進みすぎると、後が本当に怖かった!!

 俺は言葉を頭の中で選びながら、桜坂さんに告白の回答をする。


「えっと……、さくらさんの気持ちは嬉しいです!」

「けど……身体のまじわりは、しばらく無しでお願いしたいのですか…///」

「それで良ければ、お受けしたいなと……」


 自分が女性の立場に成った気分で、俺は発言をしていた。

 素直に受け入れたいのが本音だが、俺の中では最後の最後まで、同性の抵抗が有ったからだ。

 桜坂さんのとの性行為に関しては、なるべく避けたい気持ちで有った。


「颯太さん!」

「私は、まだ高校生です!!」

「身体を求めるのは、最低でも卒業するまで求めません!!」

「それまで、私は我慢します!!/////」


 頬を染めながらでも、力強く発言する桜坂さん。

 その表情も凄く可愛く見えた……


(……やっぱり、最後まで求めているのか!)

(俺がさくらさんの“あれ”を慰めるの!!)

(まぁ……自分のを触る感じですれば……って、何を意識している!!///)


「では……颯太さんと、関係を持って良いのですね!」

「颯太さん……//////」


 桜坂さんは、頬に涙を流しながら目を細め、嬉しそうに言う……


「はい……さくらさん///」

「今日から、正式な関係に成りましょう……」


「嬉しい!!♪」


 桜坂さんは満面な笑みに変わり、俺に思いっきり抱きついてきた!?


「うぁ!!///」


 俺は桜坂さんの急な動作に驚き、体が一瞬よろめいたが、どうにか桜坂さん受け止める。


(やっぱり……見かけは女性だが、身体は結構がっしりしているような…?)

(まだ、10代だからか?)


 俺は今まで、女性を抱いた事が無いから何とも言えんが、ふっくらとした感じでは無かった。

 そして、女性特有の甘い香り(?)も勿論しなかった……


『パチ、パチ、―――』


 それを笑顔で見ていて、拍手をしている朱里さん。


「颯太さん!」

「これからいっぱい、楽しい、思い出を作って行きましょうね!♪」


「うっ、うん…//////」

「だね…//////」


 桜坂さんの表情だけを見れば、ワンシーンに成る美少女顔だ。

 顔だけ見れば……


(これで、良かったのかな……)

(けど、これしか道が無いからな……)


 同性でも、深い関係に成れたのだから、素直に喜ぶのが筋で有るが、俺は桜坂さんのことを完全には知らない。

 家庭環境や学園環境。朱里さんとの関係は知ることが出来たが、ほんの一部だ。


 桜坂さんが、俺との関係を家族や、学園の親友達に話すのかは分からないが、俺にとっては、この事を俺の家族には話せないし、周りにも言いにくい……


『俺さ! やっと、彼女出来たんだ!!』

『男の娘の!!』


 とは、公衆の面前では言えない……

 それに、しばらくの間は桜坂さんが“男の娘”で有る事を、隠す必要も有るかも知れない……

 性の多様性を、この国が本格的に認め始めたのは、つい数年前だからだ。


「なんとか、問題が解決出来て良かったわ♪」


 朱里さんは、俺と桜坂さんに向けて笑顔で言う。

 朱里さんの中では問題は解決した。朱里さんの中では……


「あっ、あの……さくらさん///」

「そろそろ、離れてくれませんか!///」


 何時までも抱きついている、桜坂さんに俺は声を掛ける。


「あっ、すいません!//////」

「余りにも嬉しくて、つい!//////」


 桜坂さんはそう言い終えると、名残惜しそうに離れる……

 此処まで好かれていたかを実感すると同時に、俺は男性側の気持ちでは無く、完全女性側の気持ちに成っていた。

 これからが大変そうだ……

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