第36話 喫茶店の駐車場 

 すっかり薄暗く成った、喫茶店駐車場に到着すると、喫茶店店内の照明は消えていたが、朱里さんのだと思われる軽自動車は、まだ停まっていた!!


 俺は変だなと感じつつ、自分の車に近付くと、朱里さんの軽自動車の扉が開いた!?

 もしかしなくても、俺達の事を待っていてくれたのだろうか……

 俺が声を掛ける前に、やはり朱里さんが車から降りて来て、俺達に声を掛けて来た。


「てっきり。二人とも帰ったと思ったら、鳥海さんのだと思われる車が残っていたから、周辺散策にでも出掛けたかなと思っていたら、さくらちゃんも一緒だったのね♪」


 和やかな表情で話す朱里さん。

 朱里さんは喫茶店の制服姿では無く、私服姿で有った。

 それは当たり前か……

 俺の事を心配して、待っていてくれたのだろうか?


「すいません。朱里さん…!」

「一言、言って置くべきでしたね…///」


 俺は朱里さんに、軽く頭を下げながら謝る。


「謝らなくても良いわよ。鳥海さん!」

「私も車内で、用事ごとをしていただけだから♪」


 嘘に違いないけど、朱里さんは俺に心配を掛けない言葉を選んで言う。


「……」


 俺と朱里さんが話している中、桜坂さんは元気の無い表情のままだった。

 それに朱里さんが気付く。


「……んっ、どうしたの。さくらちゃん」

「元気が無い顔をしているけど……」


「あっ……いえ。大丈夫です…//////」


 桜坂さんは、直ぐに作り笑顔をして言うが、朱里さんは更に追求をかける。


「その顔で、大丈夫では無いでしょう。さくらちゃん!!」

「……鳥海さんと何か有ったの?」


「朱里さん…。颯太さんは関係ないです……」

「これは、私の気持ちの問題ですから……」


 桜坂さんは『全て私が悪い…』の、いじけた表情に成っていた。

 それを見かねた朱里さんは、俺に方に顔を向けるが……


「鳥海さん!」

「あなた、さくらちゃんに何をしたの!!」


 朱里さんは怒る口調と、眉間にしわを寄せて俺に言って来た!


「……」


 俺が朱里さんに問い詰め掛けられて居るのに、桜坂さんは無言だ。

 桜坂さんは朱里さんに託すのだろうか……


「……えっと、何もしていませんは嘘ですけど、……少し展開が急すぎて、俺の方が驚いてしまって……」


「あなた達……何処までしたの…?」


 朱里さんの表情が一気に険しくなる!!

 朱里さんの中では、俺が桜坂さんに性的な行為を求めたか、行為をしたと感じ取っているのだろう。


(これはどう説明しよう!!)

(ありのまま全て、朱里さんに話すか!!)

(さくらさんの“ぞうさん”の事も含めて//////!!)


(けど、それを話したら、俺は朱里さんに怒られるだけでは済まないよな!)

(最悪、警察に通報されてしまう!!)


 朱里さんは怒りを押し殺しながら、俺に詰問して来た。


「……鳥海さん。正直に教えて!」

「喫茶店を出てから、この時間までさくらちゃんと何をしていたの!?」

「普通の散策とかで、あんな表情に成らないよね……」


「私はさくらちゃんの事が大好きだし、とても大切な人だと感じている」

「鳥海さんにあれだけ、心を開いたさくらちゃんを悲しませたのだから、それ相応の理由がある筈だよね。鳥海さん!!」


 俺は先ほどの出来事を全て、朱里さんに話すしか無いと思った。

 中途半端な嘘は俺の首を絞めるし、桜坂さんが難癖を付けるかも知れない。

 嘘を付くぐらいなら、朱里さんに正直に話して、却って朱里さんの意見や感想を聞いた方が、今後の俺と桜坂さんの関係に、良い影響を与えるかも知れない。


「えっと、朱里さん…」

「手短ですが……経緯いきさつをお話しします」


「分かった!」

「しっかりと聞くわ。鳥海さん!!」


「弁解も必要なら、後で聞くわ!!」

「じゃあ……喫茶店から先の事を教えて……」


 殆ど日が暮れた喫茶店駐車場で、俺は朱里さんに先ほどの事を話す。

 この喫茶店駐車場の照明設備は、防犯灯程度の物しか無いが、無いよりかはマシだ。

 俺は怒り掛けている朱里さんの顔を見ながら、洗いざらい話した……

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