第23話 お互いを探るⅡ その2

「さくらさんは聞くまでも無いけど、家族と一緒に住んでいるのだよね?」


「はい。家族と住んでいます!」


「小説も学園生に成ってから、描き始めたの?」


「そうです!」

「私の悩みを少しでも聞いて貰うつもりで、書き始めました♪」

「その御陰で、人の繋がりと世界が広がりました♪」


 桜坂さんは笑顔で答えてくれる。

 俺はもう少し、踏み込んで聞いて見る。


「でも、家の居心地は良く無いのだよね……」


「!」


 やはりと言うか、和やかだった桜坂さんの表情に影が曇る!


「はい……。でも、今は慣れました!」

「両親も表面上では普通に接してくれますし、兄や妹も私を完全に無視している訳では有りませんので、表面上では仲良くしています……」


「表面上では仲良くか…。家庭内暴力や嫌がらせは受けていないのだね?」

「さくらさん!」


「はい。その様な事は一切有りません!」

「食事もきちんと提供されますし、お小遣いも私が女性の姿をするように成ってからは、却って増えました」

「本当に表面上は問題ないです!」


 作り笑顔で言う桜坂さんだが、目の奥底は笑っていなかった。


「……少し辛い事を聞くけど、さくらさんは両親や兄妹を恨んでいる?」


「颯太さん……。其処まで聞きますか…?」


 桜坂さんが一瞬だが、軽蔑した表情に変わる。

 プライベートに踏み込み過ぎてしまった!!


「あっ、ごめん…。ちょっと気に成っていたから」


 俺は桜坂さんに謝ると、桜坂さんは悩んだ表情を始める。


「……」


 しばらくの無言の後、桜坂さんは意を決する様に俺に話し始めた。


「……正直言えば、恨んでいます」

「私の身体が女性よりとはいえ、赤ちゃんの頃から男の子として育てて欲しかったです…」

「でも、赤ちゃんの頃から男の子として育てられても、二次性徴期でほぼ女の子の身体に成ってしまえば、それはそれで戸惑っていたはずです!」


「今でも心底、両親を許してはいませんが、少しは感謝の部分も有ります」

「あの時……男のままで育って来ていたら、今の姿を絶対に受け入れられませんから……」


 桜坂さんは哀愁を漂わせながら話す。


(成るほどしか、言いようが無いな)


「辛い事を聞いて、ごめんね。さくらさん(汗)」

「俺もさくらさんの過去を知る事が出来て、嬉しいとは言っては行けないが、俺もさくらさんの手助けがしたい!」


「……手助けですか?」

「じゃあ、私からの質問良いです?」


 桜坂さんは俺を見据えて言ってきた!

 まだ、俺からの質問は完全には終わっていないが……


(此処まで聞けたから、まぁ良いか!)


「うん。良いよ。さくらさん」


 俺は笑顔で桜坂さんに言う。


「じゃあ、私からも聞きにくい事を聞きます…」

「颯太さんは、私との今後の関係をどうお考えですか?」

「正直にお願いします……。颯太さんの考え次第では、私も考えを変えなくては成りませんから……」


 桜坂さんは真剣な眼差しで聞いてきた!

 俺と桜坂さんの今後の関係……


(桜坂さんは俺との本格的な交際(!?)を求めているのだろうか!?)

(けど、社会人と学生の遠距離恋愛(?)なんて、直ぐに破綻するのが目に見えている)


 俺は所詮、アルバイト身分だから、月1回でも桜坂さんと逢うのは難しいし、桜坂さんの身分は学生だから、そもそも三○間南部まで来られるかどうか怪しい。

 学生の一人旅では世間は見ないはずだ。絶対に家出少女扱いされる!?


(どう、答えるべきか…?)

(同じ県内だったら、適当な事を言ってもどうにか成るが、岡○県と三○県では距離が離れすぎている!)


 桜坂さんが真剣に俺を見ている中、俺は最適な言葉を頭で練っていた……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る