第22話 お互いを探るⅡ その1

 お互いケーキを食べ終わって、アイスティーを飲んで一息ついてから、お互いの質問が始まろうとしていた。


(流れ的には、さくらさんからの質問かな?)


 身構える気ではないが、桜坂さんが何を聞いてくるのだろうと、俺は思う。

 ケーキを食べている間に、朱里さんが作ったピンクっぽい空気も多分流れて行っただろう……


「颯太さん!」

「私からの質問。よろしいですか!」


 桜坂さんも、穏やかな表情に戻っており、大丈夫そうだなと感じた。


「うん。良いよ」

「何でも聞いて!!」


「何でもですか!!」

「では、当たり前の事を聞きますが、颯太さんが小説を書くように成った切っ掛けは何ですか?」


「小説を書く切っ掛け!」

「それはね、さくらさん。―――」


『第1話 物語の始まり』で話した事を桜坂さんに説明をする。

 桜坂さんの体は男性だから、美少女の部分も交えて話す。


 ……


「颯太さんが、小説を書く切っ掛けに成ったのは、ノベルゲームが始まりでしたか!」


 美少女の部分を交えたのに、軽蔑をする表情もなく、終始和やかな桜坂さん。


「そう。色々なノベルゲームをやっている内に、自分でもオリジナルストーリーを作りたいなと思って!」


「そして、今が有る訳ですね。颯太さん!!」


「そう!」

「と、言いたいけど、中々人気が出なくてね……」


 俺は少し残念そうに言って、桜坂さんの気を引こうとするが……


「でも、颯太さんは専業作家では無いのですよね!」


 桜坂さんは和やかな表情で返してくる。

 気は引けなかったようだ……


「勿論、兼業作家だけど、面白い展開を思い付いた時に描けないのが辛いのだよね…///」


「……そうしますと颯太さんは、本当の作家さんを目指しているのですか♪」


 嬉しそうに聞いてくる桜坂さん。


「……出来ればね!」

「サ○エさんのさんの様に成りたいよ!」

「サラリーマン生活で時間を追われて、余暇も満足に取れない生活を、ずっとはしたくは無いよ!」


「颯太さんの勤めている場所は、お休みが少ないですか?」


「俺が働いている所は、土日以外は仕事だからね」

「決して少ない訳でも無いのだけど、結構大変なんだよ……」


「……大人の世界は大変そうですね」

「私も、いずれは社会に出ますからね……」


 しんみりとした表情で話す、桜坂さん。


(少し、場が湿ってきたな……)


 少し間が出来たので、お互いがグラスを取ってアイスティーを飲む。

 本当に俺と桜坂さんの相性は良さそうだ!?


「じゃあ、さくらさん!」

「今度は俺から良い?」


「はい。どうぞ!」


 桜坂さんは笑顔で答える。


「じゃあ、もう少しさくらさん事を知りたいから聞くけど、さくらさんは何処の町に住んでいるの?」

「見ての通り、俺は今日車で来ているから、余り遠い所だったら、帰り送る事が出来るし!」


「私の住んでいる町ですか!」

「私は王乃おうの市に住んで居ます」

「今日は王乃市からバスで来ました!!」


 言い淀むこと無く、あっさりと言う桜坂さん。


(Railで話していた時は、個人情報を全く教えなかったのに、今は何でも教えてくれるな…)

(さくらさんも、俺の事をかなり気に入っているのか!)


 俺は心の中で喜ぶが、桜坂さんはあくまで男性で有る。

 それに桜坂さんは親友だ。よこしま目線では見てはいけない。

 俺は次の質問を桜坂さんに問いかけた。

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