第18話 桜坂さくら

「……それが今の私です!」


 桜坂さんは、力強い目線を俺の目線に合わせて言う。

 本当に覚悟を決めた、強い目線で有った。


「中学生時代は男の子で耐え抜いて、今の学園生活からは、私は完全に外見は女性に代えました!」

「今の時代は大変便利な時代で有って、衣料品やコスメティックも通販で簡単に買えますし、支払いもスマートフォン決済で、出来る所もかなり増えました」


「中学校からの進学に関しては、性の多様性を完全に認める学園を私自ら探して、両親を説得しました」

「嫌いな両親ですからこそ、私は両親から性に関する支援を受けられないと理解した時から、良い子ちゃんを演じて来ました。それは、今も変わりません!」


「反発してもお互い時間の無駄ですし、何も解決出来ません!」

「それ位でしたら、素直に聞いていた方が両親も何も言いませんし、私も諦めが付いていました」


「高校への進路を決める時に、私は全てをぶちまける様な言い方をして、両親にかなり酷い事を言ったと思いますが……両親も何処かで非を感じていたのでしょうね!」


『私は、今まで、お父さんやお母さんのおもちゃにされても、文句を言わずにずっと我慢してきた!』

『お父さんやお母さんは、私の身体問題を解決してくれない、それに妹ちゃんを未だに溺愛している!!』


『私は私の、人生を歩まなければならない!』

『私はこの選択で、生きていく事を決めた!!』

『身体は男性だけど、心は女性として!!!』


『…………』


『…………』


「そのお陰も有ってか、今の学園に入園する事を許してくれました♪」

「けど、そうでも言わなければ、私は男の子の姿で高校を通い、其処で壮絶な苛めを受けて、家に引き籠もって惨めな生活をしているか、電車と接触して地獄に行っていたでしょう!」


(桜坂さん。完全に開き直っているな……)

(学園と言うのだから、公立高校では無く私立高校の意味で良いのだよな!)

(公立高校で、性の多様化を認めている高校も少ないしな…)


(それにしても、壮絶な人生を歩んでいるな……)

(それをそのまま文字に起こせば、かなりの共感者は現れるだろう)


「それが、今の桜坂さくらさんの姿か……」


 俺はそう呟きながら、サンドイッチを1個取る。

 サンドイッチは、話を聞きながらでも食べられる。


(うん!)

(当たり前だが、コンビニのサンドイッチより美味しいな!)


「鳥海さん…。私の話はどうでしたか…?」

「幻滅しましたか……」


 物語は此処までらしく、桜坂さんは不安な眼差しで聞いてきた。

 本当はもっと有る筈だが、俺に話せるのは此処までなんだろう。


「……桜坂さんが嫌で無ければ、これで物語を作りたいよ」

「ノンフィクションとして……」


「そっ、それがダメです。鳥海さん!//////」

「私は私自身を認めていますが、世間様までには公表したくないです!//////」


 当然、”あたふた”しながら言う桜坂さん。

 両手を広げて”ダメダメ”の演技付きだ!!

 この姿も愛しい……中身は男性だけど…


「俺だって、ノンフィクションでは書きたくないけど、それ位物語性が有るよ!」

「俺の描く小説は人の描写に力を入れているけど、桜坂さんの人生は本当に小説以上だよ」

「男の娘なんて、二次元やゲームの世界だけだと思っていたが、良い意味で桜坂さんと出会ってしまった」


「……良い意味ですか?」

「?」


 桜坂さんは頭に“?”マークを浮かべるように顔を上に上げる。


(俺の中で……桜坂さんは理想の人だ)

(美人だし、人生苦労しているから物腰も柔らかいし、性格も良い)


 これが本当の女性で有ったら、人生イージーモードだったのに、性別が男性の所為でハードモードに成ってしまった。


「桜坂さんは、素晴らしい人だと感じる!」

「俺は……これからも、桜坂さんと交流を深めていきたい…」

「出会った直後、俺の失言で桜坂さんを怒らせてしまったけど、それでも俺は桜坂さんと仲を深めたい!///」


 俺は真剣な表情で、桜坂さんに好意をアピールする!


「……鳥海さん…。本当に良いのですか…?」

「私は“おちんちん”付いていますよ…」


「異性を求めて無いと言えば、嘘に成るかも知れないが、桜坂さんはその辺に居る女性より、遙かに女性らしいと俺は感じる!」

「すこし……年が離れているけど、今から親友としてもっと仲を深めない!///」


「……鳥海さん。いえ、颯太さん!//////」


 桜坂さんは俺の事をペンネームでは無く、嬉しそうに本名で呼ぶ。

 俺の事を、桜坂さんが受け入れたあかしなんだろう。


「では……今日から、もっと仲良くなりましょうね!」

「似合ってますよ。その髪型❤」


「えっ!? そっ、それはありがとう…//////」


(俺の髪型……ほぼ坊主頭なんだがな…)

(褒められたんだし、まぁ良いや!)


 俺と桜坂さんの関係は一歩進展した……

 お互い、同性同士だが好みのタイプで有った。

 俺と桜坂さんの今後の関係は、どう進展していくのだろうか?

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