第15話 お互いの探り合い その2

 俺が次の話題を出す前に、桜坂さんが先に話題を出してきた。


「えっと…、鳥海さんは社会人と伺っていますが、普段はどの様に暮らしていますか?」


「えっ!?」

「どの様な暮らし??」


「あっ、ごめんなさい//////」

「その言い方では、凄く分かりにくいですね///」

「一人暮らしとかは、されているのですか?///」


 申し訳なさそうに言う桜坂さん。

 どうやら桜坂さんは、俺の生活状況を知りたい感じだ。


「俺は今、一人暮らしをしているよ!」

「昼間は働いて、夜や週末を中心に小説活動をしている!!」

「見ての通り底辺だけどね!!」


「まだ、2x歳なのに、もう一人暮らしをしているのですか!」

「羨ましいです……」


 本当に羨ましそうに言う桜坂さん。


(桜坂さんの所、兄妹の関係が最悪とか言っていたな…)

(桜坂さんは早く、今の家を出たがっているのかもな…)


「でも、鳥海さん」

「鳥海さんも家族は、いらっしゃるのですよね?」

「家族は遠くに住んでいるのですか?」


 桜坂さんは、俺が一人暮らしをしているのに疑問を感じたようだ。


「家族は同じ市内に住んで居るよ」

「只、実家が漁師だし、家業は兄が継ぐから、俺は実家に居にくくてね…」

「それに妹も実家に住んでいるから……」


「やっぱり一人暮らしをするには、それなりの理由が有るのですね…」


(なんかオフ会と言うかは、お見合いみたいな展開に成ってきたな!)

(桜坂さんとはどう転んでも、法律的に結婚は出来ないが……)


「……桜坂さん所も、兄妹の関係は良くないのだよね」


「はい……」

「以前、鳥海さんにRailで話した通りです」


 俺がそう聞くと、桜坂さんはうつむかせて答える。


「凄く聞きにくい事を聞くけど……桜坂さんはどうして、女の子の格好をしているの?」

「蒸し返す気は無いけど、女性でも男性らしい姿をする人が現に居るし、桜坂さんも女性に見られたくなければ、男性の格好をすれば良いと感じたのだけど…」


「……鳥海さんも、やっぱりそう思いますよね///」


 恥ずかしそうに言う桜坂さん。


(そりゃあ、思うよ……)

(桜坂さんが最初から男性だったら、俺は絶対に逢っていなし、此処までの関係は作らない!)

(騙し討ちされたけど、外見だけで見ると女性なんだよな……)


「……私が鳥海さんと会う事を決めたのは、私の姿を見て貰いたい気持ちも有りましたが、鳥海さんなら私の気持ちも理解してくれるかなと同時に思いました」

咲子さきこちゃんと同じように……」


 しんみりとした表情で話す、桜坂さん……

 俺に理解を求めている感じだ。


(咲子……)

(義理の娘で有る咲子が、単身赴任先の父に遊びに来る、小説のヒロインか!)

(何だかんだで、桜坂さんは俺の作品を結構読んでくれているのだな)


(それだったら、高評価も付けて欲しい所だが……その様な作品に興味が有ると宣言するような物だからな)


「けど凄いですね。鳥海さん!!」

「まだ、結婚もしていないに、あれだけの家族物語を書き上げるなんて!」


「あっ、褒めてくれてありがとう…//////」

「あんな家族だったら、自分が楽しいかなと思って書いただけだから」


 俺がそう言うと、怪訝な表情に変わる桜坂さん。


「楽しいですか…?」

「凄くハーレム要素が入っている気がしますが、それも鳥海さんの理想ですか?」


「ハーレム要素か……。言われてみれば確かに…」

「けど、主人公で有る父が、一番好きなのは妻だからな!」

「俺も一番大事にしたいのは将来の妻だけど」


「鳥海さんは、お嫁さんを大事にする人だと認識して良いのですね!」


「うん。そうだね!」


 桜坂さんは何かを納得した表情をした後、和やかな表情に成る。


「私の思った通り、鳥海さんは優しい人でした♪」

「私は好きで女の子の格好をしていますが、それはそれなりの理由が有るからです!」

「この時代のお陰で大分、私の存在も認められるように成りました!」


「……」


(身体は男性だけど、心は女性で有ると桜坂さんは言う訳か!)

(けど、それならなんで、美人と言われて彼処まで怒る!?)

(美人は女性にとっては、最高の褒め言葉だと俺は思っているが!?)


「鳥海さんも色々と考えているようですね♪」

「一昔前は、心の病気と言われてしまいましたが、今はそうでは有りません」


「その辺に関しては、ネットやニュースでも話題に成っているからね。桜坂さん」

「女性でもズボン、男性でもスカートで登校しても、一部の学校は認め始めているからね」

「桜坂さんの通っている学校も、それを認めているのだよね」


「はい。その通りです♪」

「では、その辺を詳しくお話ししましょうか!」

「折角、此処まで来てくれたのだし♪」


 そう、嬉しそうに言う桜坂さん。

『私の悩みを聞いてくれる人が現れた!』の表情をしている気もした。

 俺は今後の小説ネタに成るかなと、軽い気持ちでその話を聞こうとしていた。


 ……

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