第14話 お互いの探り合い その1

 喫茶店店内だから当然、波の音は聞こえないが、窓からは綺麗な海景色が見える。

 店内の内装も良くて落ち着く…。良い喫茶店だ!


「良い天気ですし、良い喫茶店ですね!」

「桜坂さん!」


 俺は色々と聞きたい事だらけだが、急に本題に入っても桜坂さんは答えないだろうし、当たり障りの無い会話から俺は入る。


「はい!」

「私のお気に入りのお店です♪」


 桜坂さんの機嫌はすっかりと直っており、この状態ならオフ会も楽しめるだろう!

 桜坂さんが女性だったら、もっと良かったが……


「鳥海さん!」

「お話をする前に、飲み物と食べ物を選びましょうか!」

「今日は朱里さんだけですので……」


 少し、申し訳なそうに言う桜坂さん。


(その言い方だと、普段は他のスタッフが居る言い方だな)

(時間的に遅い昼食でも取っているのか、それとも帰ってしまったのか?)


 俺はそんな事を思いながら、テーブルに備わっているメニューを取って、桜坂さんにも見やすい様に、テーブル真ん中にメニューを広げる。


「俺はさっき、SAで昼食を取ったばかりだからな……」

「アイスコーヒーと何か軽食でも頼むか……。桜坂さんは何か、希望の食べ物有りますか?」


「私ですか!」

「このお店は、クラブサンドイッチが美味しいですよ!!」

「後、デザート全般が美味しいです!!」


 和やかな表情で話す。桜坂さん。

 見ていても、飽きない!


「じゃあ、クラブサンドイッチを頼んで、折角だからイチゴのショートケーキでも頼もうかな!」


「鳥海さんは、イチゴのショートケーキがお好きなんですか?」


「うん!」

「ケーキの中では、イチゴのショートケーキが一番だね!!」


「鳥海さん。良いチョイスです!!」

「このお店のケーキは、県内産の生クリームを使っていますから凄く美味しいですよ!!」


 本当に嬉しそうに言う、桜坂さん。

 この笑顔だけを見ていれば、どうみても美少女の笑顔だ!


「俺はそんな感じかな!」

「桜坂さんは、もう決まっている?」


「はい。お気遣いありがとうございます!」

「私は決まっていますが、朱里さんが来るまで待ちましょう!!」


(言葉遣いも丁寧だし、何でこの人は女装をしているのだろう?)

(その話は……もうしばらく後だ)


 俺は早速、桜坂さんに質問をする。


「桜坂さん」

「桜坂さくらさんの名前は、ペンネームですよね?」


「はい…。桜坂はペンネームですが、さくらは本当の名前です!」


 桜坂さんは臆することなく言う。


「さくらは本物なんだ!」

「あれ? なんか言葉がおかしいね…」


 俺がそう言うが、桜坂さんはそれを気にせず、質問をしてくる。


「鳥海さんも、私と同じ様にペンネームなんですよね?」


「うん。俺は思いっきりペンネーム!」


「…鳥海さんの下の名前でも良いですから、教えてくれませんか?」


 笑顔で聞いてくる、桜坂さん。


(あれ?)

(一期一会の関係では無いの??)

(それとも、只興味が有るだけか?)


「……教えにくいなら、無理をしなくても良いですよ///」


 俺が間を置いてしまったから、桜坂さんを困らせてしまった!?


「あっ、ごめん!///」

「ちょっと、別の事を考えていたから!///」

「俺の本当の名前は、颯太ふうたと言うんだ。変わっているでしょ……」


「鳥海さんの本名は、颯太さんと言うのですか!!」

「……凄く、男らしい名前ですね!!」

「私も、そんな名前が欲しかったです~~!」


 凄く、はしゃいだ感じで言う桜坂さん!?


(あっ……冷静に考えれば、さくらさんは男性だ!)

(男性なのに…、何でさくらさんの両親は、女性が付ける名前を付けたのだ…)


「はい。お待たせ~~。二人とも、注文は決まったかな♪」


 このタイミングで、朱里さんがお冷やとを持って席に来る。


「鳥海さん!」

「先ほどのメニューで、よろしいですね!」


「あっ、はい!」


「朱里さん。注文お願いします!」

「アイスコーヒー、アイスティー、クラブサンドイッチ。ショートケーキはイチゴと生チョコレートと、後はフライドポテトをお願いします!!」


「はい。はい♪」


 俺が選んだメニュー以外に、フライドポテトを追加する桜坂さん。

 朱里さんはそれを伝票に書き込んでいく。


(メニューだけ見れば、完全のオフ会だな!)

(時間的には夕方までと、桜坂さんは言っていたから、それまでにどれだけの事が聞けるやら……)


 注文を聞き終えた朱里さんは、再び店の奥に戻って行った。

 お互いの本名が分かり合った事で、俺は次の話題に移ろうとしていた。

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