第13話 オフ会開催……

 俺は桜坂さんに付いて行きながら、喫茶店店内に入る。


『チリーン、チリーン♪』


 喫茶店の入口ドア上部にはベルが付いており、このベルが来客を知らせるベルなんだろう。

 直ぐに店の奥から、若そうな女性が出て来た。

 俺と同じように20代前半の女性だろうか?


「こんにちは。さくらちゃん」

「待っていたわよ♪」


 その女性は、桜坂さんに元気な声を掛けて来た!

 知り合いか親戚の人なのだろうか?


「こんにちは。朱里あかりさん!」

「今日は、無理言ってすいません(汗)」


「良いのよ、良いのよ。可愛いさくらちゃんの頼みだから♪」


(可愛いなら文句は言わないのだ。桜坂さんは…?)

(美人は怒った癖に…)


「そちらの子と言うか、人の方が良いわね。遠路はるばる来た人?」


 朱里さんと言う女性は、俺の事を品定めするように見ながら言う。

 俺に興味あるの!?


「はい!」

「同じ小説サイトで知り合った、鳥海さんと言う方です♪」


 桜坂さんは和やかな表情で、朱里さんに俺を紹介している。

 先ほどまでの不満や表情は、朱里さんの前では一切見せていない!

 紹介された以上、俺は朱里さんに挨拶をする。


「初めまして、鳥海と言います」

「えっと、今日はよろしくお願いします…」


 俺はそう、朱里さんに言ったが……朱里さんは不思議な表情をする。


「?」

「んっ……私は何を、お願いされるのかな?」

「さくらちゃんでは無く、私に会いに来てくれたの♪」


 朱里さんは、笑顔で弾んだ声で言って来た!?

 それも茶化しながら言う朱里さん。


「えっ!?」

「そっ、それは……//////」


 俺が言葉に詰まる中、朱里さんは勝手に自己紹介を始めた。


「……鳥海さんだっけ?」

「私はこの喫茶店を任されている、三宮朱里さんのみやあかりと言うわ!」

「今日は、さくらちゃんに頼まれて、特別にさくらちゃんの為にお店を開いたわ♪」

「この曜日だけだけど、この時間帯で、お店は閉めちゃうの!」


「そっ、そうなんですか!///」


(駐車場も車は全く無かったし、店内も人影が無い…)

(そう言う事か!!)


(桜坂さんは学生なのに、朱里さんと此処までの関係が出来ている)

(何者なんだ……桜坂さんは!)


「さくらちゃん!」

「さっき…、駐車場で結構大きな声が聞こえて居たけど、あれはさくらちゃんと鳥海さんで良いのだよね?」


 何かの確認をするように、朱里さんが桜坂さんに聞いている。


「はい!」

「……案の定の通りです…///」


 桜坂さんは、少し恥ずかしそうに朱里さんに言う。


「まぁ、そうなるわね!」

「でも、鳥海さんはそれを受け入れた訳か!!」


 何故か、笑顔で言う朱里さん?


「いっ、いえ……///」

「多分ですが、まだ受け入れていないと思います。朱里さん」


 それに対し、少し強張った表情で言う桜坂さん!


(……さっきの話をしているのか?)

(俺は未だに桜坂さんが男性とは信じられないが、ここで帰る訳には行けないし…)


(話の感じからして、一度や二度の出来事では無いな…)

(今までも、何人かの男性と桜坂さんは逢っているのか)


(うーん)

(俺も会うまでは、桜坂さんを女性だと信じ切っていたし…)


 本音を言えば、女性だった桜坂さんと交流を深めて、今後の進展も思いっきり意識していたが、女性で無ければ意味が無い……

 けど、桜坂さんも嫌々でも“おもてなし”をしてくれるし、俺もここで三○県に帰ったら、本当に時間とお金の無駄で有る。


「まぁ、その辺に関しては、さくらちゃんと鳥海さん次第だね♪」

「お好きなお席にどうぞ♪」

「しばらくしたら、お冷やとメニューを伺いに来るわ♪」


 朱里さんは桜坂さんにそう告げて、店の奥に戻って行った。


「鳥海さんは希望の席は有りますか?」


 俺を“おもてなし”してくれる以上、桜坂さんは希望の席を聞いてくれる。


「じゃあ、折角だし、海が見える席をお願いしようかな?」


 俺は最初に出会った時と同じ口調で、桜坂さんに答える。


「では、そうしましょう♪」


 桜坂さんも優しい口調で返してくれた!

 俺と桜坂さんは海が見える席に座り、本格的にオフ会が始まろうとしていた。

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