第11話 天国から地獄に突き落とされる!

 俺が車のドアを開けると、桜坂さんだと思われる女性がその音で気付き、俺の方に顔を向ける!

 俺は直ぐに声を掛けたかったが、先ずは車の施錠が先だ。

 桜坂さんは俺を鳥海だと感じたのか、身体の向きを喫茶店の方から、車の方に向きを変える。


(間違いない! 美少女の桜坂さんだ!!)

(こんな美少女だとは、本当に夢にも思わなかった!!)


 桜坂さんは名前らしく、桃色系のワンピース姿で有り、その下には黒系のクルーネックトップスを着ていた。髪は綺麗なロングヘアーだ!

 桜坂さんの頭部にはカチューシャを着けており、更に幼しさを強調させた!


 俺の姿は綿パンにTシャツ、その上に半袖ジャケット姿で有った。

 俺が声を掛ける前に、桜坂さんが声を掛けて来た!


「……えっと、鳥海さんですか?」


 桜坂さんは近付きながら、優しそうな声を掛ける。


「はい! そうです!!」

「初めまして! 桜坂さん!!」


(この人。女性の割に、先に声を掛けてくるとは、物怖ものおじしない人なのかな?)


「はい。初めまして! 鳥海さん!!」

「桜坂です!」


「……少し遅れて、ごめんなさい!///」

「バスが渋滞に、巻き込まれて仕舞いまして……」


(やっぱり、さっき通って行ったバスに桜坂さんは乗車していたのか!)

(バスだから仕方ないね!)

(それにしても、可愛らしい声だ!)


「それなら、仕方ないね!」

「桜坂さん……思ったより、美人ですね…!///」


「!!」

「……」


 俺は桜坂さんを褒めたのに、桜坂さんは無言だった。

 それに美人と言った瞬間に、桜坂さんの表情は堅くなってしまった!?


「……桜坂さん…?」


「……」


 俺が問いかけても、桜坂さんは返事をしない!?


(美人と言ったのが不味かったのか!)

(でも、ブサイクですよねとは、死んでも言わないだろ。普通は!?)


「……」


 桜坂さんは堅い表情のまま、俺を無言で見つめていた!!


「何か気に障りましたか……」

「桜坂さん……」


「んっ……」


 桜坂さんは、何かを言おうとしている気配だが、迷っている様だ……


「もしか……しなくてもですけど、俺がタイプの人とは違いましたか///」

「……それしか無いですよね」


(俺はイケメンとは言えないからな!)

(けど、顔面偏差値では50以上は有ると思うが…)←自己分析


「あの……美人と言ったのが気に障りましたら、ごめんなさい。桜坂さん///」

「俺もつい、思った事を喋ってしまって……」


「……はい。本当に、そうです!」


「……えっ!?」


 桜坂さんが此処で口を開いたと思ったら、桜坂さんは猫が睨む様な仕草で俺を見ていた!?


「私は……美人では有りません!///」

「薄々は感じて居ましたが、鳥海さんも私が女性に見えるから、此処まで優しくしてくれたのですか!」


「ちょっ、ちょっと、急にどうしたの桜坂さん!?」

「俺は……女性だからとかでは無く、桜坂さくらさんと言う、1人の人に会いに来たんだよ!!」


「……やっぱり、ラブコメ小説を書いていますから、上手に言葉を考えますね!!」

「ブックマークはしていませんが、鳥海さんの一番人気有るラブコメ、読ませて貰いました!!」

「私はきっと、鈴音すずねさんと言う、女性に似ているのでしょうね!!」


(鈴音さん…!?)

(あぁ……間違ってはいないが、アレは架空の女性なんだよな…)


(お嬢様育ちだけど、我が儘は殆ど無く、清楚をイメージした女性)

(その人が主人公と結ばれて、最後は農業をやるんだからな…)

(けど、それを上回る女性が目の前に現れてしまった!)


「えっと、お読みいただき、ありがとうございます」

「桜坂さん……。そんなに美人と言われたのが嫌でしたか?」


 すると……桜坂さんは怒りながら言い始める!?


「はい!」

「この場で、はっきりと言っておきます!!」

「私は、女性では有りません!!」


「はっ!?」


 俺は間抜けな声を出してしまう!

 天国から地獄に突き落とされた瞬間だった……

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