第10話 桜坂さくらさんの姿!?
俺は今、車内に居る。
車外に出て、桜坂さんを待ち構えていても良いが、もし来なかった場合は空しくなるので車内で待つ。
「今日は良い天気だな……」
「波も穏やかだ……」
車内だから、俺は遠慮無しに1人喋りをする。
車を停めた正面には、道路と海景色が見える。
今日は少し蒸し暑いから、エアコンを付けながらエンジンを掛けているし、地方だけ有って駐車場は広いから、周りの迷惑にも成っていないだろう。
現に俺の周りに、他の車は停まっていない。
「俺の住んで居る地域も、海沿いの地域だが、海が間近に見える場所には住んでないからな!」
「海なんて見慣れた景色だと思っていたが…、違う場所の海を見ると不思議と、新鮮味を感じるな……」
目の前の道路は国道に指定されていて、幹線道路の役割も果たしているのか、地方の割に交通量は多い。
「この付近に確か、大手の造船所が有るのだよな?」
「だから、交通量が多いのだよな!」
「まぁ、そんな事は良いか。桜坂さんとは関係ないし……」
その御陰なのか、この国道に路線バスも通っており、俺がこの場所に来るまでに何本かの路線バスとすれ違った。この辺りのバスの便は良いのだろう。
「桜坂さんはどの手段で、此処に来るのだろう?」
「学生なら自転車かなと言いたいが、バスが通っているならバスの可能性も有るな!」
「今の時刻は13時52分か……」
「普通なら、もう来ていてもおかしくないよな……」
車内の時計で、時刻を確認するとその時刻で有った。
俺は基本的に10分前の行動をするから、俺が桜坂さんの立場ならもう到着している。
けど、それを人に押しつける訳には行かないし、現にギリギリ行動を好む人も居る。
「14時を過ぎてから、連絡を入れるか…」
「
俺は“ぼんやり”と海と道路を眺めながら、桜坂さんが来るのを待った……
……
「……」
「……来ないな」
車内の時計は、14時02分を示していた。
「……桜坂さんの交通手段を聞いておくべきだったな!」
「バスなら遅延の可能性も有るからな!!」
桜坂さんの性格からして、時間にルーズの人では無い筈だ。
バスならバスが遅れている可能性が有るし、自転車とかだったら道中でパンクをした可能性も有る。
徒歩だったら……お腹を壊したりも有りうるかも知れない!?
「……連絡を入れたいが、数分の遅刻で連絡を入れてしまったら、俺の器は小さい
「あと少し待つか……」
俺は少し苛立ちを覚え始めながら、車内で待っていた。
この時間帯の喫茶店はランチタイム終了時間なのか、駐車場には俺の車と従業員らしきの車以外、停まっていなかった。
「ここの喫茶店って、14時から休憩とかは無いよね……」
「でも、あれか。分かりやすい場所に有るから、敢えて其処を待ち合わせにした事も有るか?」
俺はそう思いながら、目の前の景色を見ていると、1台の路線バスが通り過ぎていき、その後直ぐに、歩道を歩く女性らしき人が景色に現れた!
「もしかして、桜坂さん!!」
「いや、待て。只の通行者かも知れない!!」
俺は桜坂さんの姿形を知らないから、迂闊な行動は出来ない。
此処で間違った声掛けをしてしまったら、桜坂さんに逢うどころか、お巡りさんと出会ってしまう!!
「桜坂さんなら、こちらに来る筈だ……」
「桜坂さんなら……」
俺は車内から出てPRをしたかったが、桜坂さんと確実に視認出来るまでは我慢する。
その女性は横断歩道が無いが、車の通らないタイミングで、可愛い小走りで道路を横切り、喫茶店の方に近づいて来た!
「間違いない…。あの人が桜坂さんか!」
「少し小柄な体型だけど……ロングヘアーが似合う、可愛い女性と言うより美少女の方が相応しいな!!」
「見つけた直後は分からなかったが、桜坂さんが近づくにつれて、誰もが見ての美少女だと認識出来る!!」
桜坂さんは俺の事にはまだ気付かないのか、周囲を確認する事無く、喫茶店の入口に向かっている。
「此処まで来れば、時間的に桜坂さんで間違いないだろう……」
「これで、赤の他人だったら『ごめんなさい』と言えば良いけど、それそれはもったいないな!!」
俺は桜坂さんだと信じ、車のエンジンを止めて、車外から出る準備を始めた!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます