第9話 彼女に逢う為の1人旅!

 ……


「途中までは、無料の高速道路を使って、其処からは有料と……」


 スマートフォン標準に備わっている有名地図アプリで、俺は岡○県南部までのルートを調べる。


「……高いな。高速道路通行料金だけで、1万円近く掛かるし、距離も400km以上だ!」

「ガソリンも最近は高騰気味だし、今後の関係が築ける保証も無いのに、本当に会いに行くのか!?」


 俺は予想以上の距離と、通行料金で驚いてしまう!

 こんなにお金が掛かるとは、甘く見ていた……


「こう成ったら奈良経由で行っても良いが、山岳道路は走りやすい道とは言い切れないし、一般道路に成るから時間も掛かるしな……」


 高速道路を使えば快適に目的地へ向かえるが、その分お金も掛かる。

 高速道路料金をケチり、一般道路で行けばその分浮くが、時間も余分に掛かるし、身体への負担も多く成る。


「どうせ桜坂さんと逢うなら、疲れ切った表情や身体より、元気な姿の方が相手も喜ぶよな…。何でも、第一印象が大事だし!」

「時期的に梅雨直前の日程だし、リスクなどを考えれば高速道路を使った方が良いか…」


 俺は独り言を呟きながら、桜坂さんが指定した喫茶店へのルートを調べて、スマートフォンにそのルートを記憶させて置いた。


 ……


 しばらく時が過ぎて……


 時刻は朝の4時。

 今日はいよいよ、桜坂さんと逢う日で有る。

 この日の為に服も新調して、車も念入りに整備した。

 俺の地域天気は曇天だが、岡○県南部の方は、晴れ時々曇りらしい。


「桜坂さんと逢う時刻は14時だから、多少の事故や渋滞などに巻き込まれても間に合う筈だ!」

「……安全運転で、岡○県南部に向かうか!」


 俺の車は軽自動車だが、そんな事はどうでも良いか!

 夜明け前の町を、無料の高速道路IC(インターチェンジ)に向けて走らせる。


「桜坂さんは『お店の前で待っています♪』と言っていたが、最後の最後まで姿形は教えてくれなかったな……」


 俺は桜坂さんの容姿を知りたかったが、どんなに聞いても教えてくれなかった。

 髪型すら教えてくれなかった…。唯一身体上で分かる情報は、背が低い女性だけだ。


「こんな情報だけで、俺は桜坂さんを見つけられるのかな?」

「まぁ……駅や繁華街での待ち合わせでは無いから、直ぐに分かると思うけど」


 俺はこれから起きる出来事や、桜坂さんの姿をイメージしながら車を走らせた。


 ☆


 休憩や朝食・昼食を取りながら、俺は高速道路を活用して岡○県南部に向かった。

 朝食は“うどん”を食べて、昼食はSA(サービスエリア)名物のメニューを食べた。

 今日は土曜日だが、大きな渋滞や事故なども発生せず、順調に目的に向かった。


「……後、1時間か」


 予定より早く着きそうに成ったので、俺は降りるIC手前のPA(パーキングエリア)で仮眠兼休憩をしている。

 桜坂さんも俺が今、こっちに向かっているのは知っている筈だが、特に連絡は来なかった。


「俺が態々わざわざ経過報告を入れるのも何か変だし、これで桜坂さんに会えなかったら只の馬鹿だな……」


 前日の夜。きちんと桜坂さんとは、Railで最終打ち合わせ済みだが、此処までの段階で1度も連絡は来ていない。


「直前に成って恥ずかしく成ったとか、女性だから準備に手間取っているかは不明だが、ドタキャンだけは本当に勘弁してくれよ……(大汗)」


 俺は学生時代……。片思いの女性をどうにかして遊びに誘った事が有るが、ドタキャンどころが時間に成っても女性は来なかった!!

 おまけに電話連絡しても相手は出てくれず、本当に途方に暮れた。

 映画のチケットなど、前金を支払っているのは無かったから、時間を無駄にしただけで済んだが、これを桜坂さんでやられたら、俺のメンタルは崩壊するだろう……


「本当に頼むよ…。桜坂さん……」

「別に普通顔の人でも俺は嬉しいから、ドタキャンや放置プレイだけは勘弁してくれ!」


 そんな事を考え始めてしまったので、仮眠など殆ど取れず、時間的に移動をするべきの時間に成った為、PAから車を走らせる。


 ……


 時刻は13時45分。

 予定より15分早いが、桜坂さんが指定した喫茶店に到着をした。

 大きな出費で有るが、是非良い関係に持って行きたい所だ!


 海岸沿いに有るお店で有り、喫茶店向こう側は海景色だ。

 駐車場に車を停める時、喫茶店入口を見たが人の姿は見えなかった……


「少し早く着いたから、時間までは車で待っているか……」


 俺はシートを少し倒し、駐車場から見える景色を眺めた。

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