第6話 次の進展を望む

 桜坂さんとメッセージ上では有るが、関係が出来てからは“緑の鳥”のダイレクトメッセージ機能を使って交流を深めた。

 初めの内は世間話が中心で有ったが、お互いの近況も少しずつメッセージで遣り取りが出来る様に成ってきた。


 もう、此処までの状態まで成ると、俺は早く次の段階に進みたくて仕方なかった。

 そう、それは勿論、桜坂さんと実際に会う事で有る。

 でも、ここからが難しい……


 ……


「メッセージ上では、だいぶ関係が進展したが、俺が知っている情報は、桜坂さんが女子学生で有る事だけで有る」

「桜坂さんも、俺の事は男性としか知らない筈だ!」

「鳥海と名乗って、女性と思う人は居ないと感じる」


『桜坂さんに女性ですか?』とは聞いてないが、ペンネームと日記形式小説内容からして、女性で有る事は間違いない筈だ!

 これが中年男性だったりしたら、ショックを受けるどころか、人間不信に陥るに決まっている!!


「緑の鳥のダイレクトメッセージ機能でも良いけど、今後の事を考えればRail(※)などの連絡アプリの方が便利だよな…!」


(※)俗に言うL○NE


 この国の人間で、Railを使っていない人は一部の人を除いていない。

 それ位浸透しているRail。


「桜坂さんはもしかしたら、他の連絡アプリを使っているかも知れないが、それならそれで、俺がそのアカウントを作れば良いだけだ!」


『若者のRail離れ』と、以前テレビのニュースで聞いた事が有る。

 Railは広く知れ渡ってから10年以上の時が過ぎており、中年世代より上の世代は本当にRail世代だ。行政機関もRailを活用している。


 俺はまだ20代前半だが、仕事での関係上でRailアカウントを作らなければ成らなかった。

 俺のアルバイト先は、Railから伝達事項が発信されているからだ。


「この辺も今度聞いてみるか!」

「ダイレクトメッセージから、Railでの交流に切り替えませんか。とでも……」


 今度、桜坂さんにダイレクトメッセージを送る時ついでに、その様に聞いてみようと心に決めた!


 ……


 しばらく時が経ち……


 桜坂さんもRailアカウントを持っていたので、緑の鳥のダイレクトメッセージからRailでの遣り取りに変わった。

 Railだと写真送信などが簡単に出来るので、桜坂さんとの仲を深めるならこちらの方が都合が良い。


 桜坂さんとの遣り取りがRailに変わってからは、小説の執筆なんて“そっちのけ”で、桜坂さんとRailが中心に成ってしまった。

 桜坂さんも俺の事を気に入ってくれたらしく、夜の時間帯を中心だが、桜坂さんとの交流が続いた……


 ☆


 とある日の夜……


 今晩も、小説の執筆より、桜坂さんとRailをしている。

 元々、人気が無い小説ばかりだから、更新が無くても誰も心配はしてくれない。


「ねぇ、桜坂さんは何処に住んでいるの?」


 俺は本当に桜坂さんを求めており、1日でも早く会いたいと思う様に成っていた。


『えっ、私の住んでいる場所ですか!?』


「そう、そう」

「市町村名までとは言わないから、せめて都道府県だけでも!」


『都道府県でよろしければ、お答えしますわ!』

『市町村名までは、まだ勘弁です(汗)』

『私は、岡○県に住んでいます!!』


「岡○県!」

「俺は三○県に住んでいるんだ!!」

「三○県は三○県でも、南部だけど……」

「桜坂さんは岡○県に住んでいる学生さんなんだ!」


『はい。そうです。岡○県に住んでいる学生さんです!』

『鳥海さんは、三○県南部の方ですか!』

『鳥海さんの住んでいる場所とは、だいぶ離れていますね……』

『びっくりです…///』


 そう、桜坂さんから返信のメッセージが来た時、俺は文面から読み取る。


「『……』を付けていると言う事は、まさかと思うが、桜坂さんも逢いたがっている!」

「……ここは1つ、1歩踏み込んでみるか!!」


 俺の予想が間違ってなければ、桜坂さんも俺と会いたがっている。

 それに交流の切っ掛けを作ったのは、桜坂さんだ。


 そうでなければ、先程の様な文章は返してこない。

 これだけの情報で『1度逢おうか!』とは言いにくい状況だが、俺の心が桜坂さんを1日でも早く凄く求めていた……

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