第3話 彼女の姿を思う……
「桜坂さんは……長編とかは書いていないのだな」
「短編が中心と言った方が良いのかな?」
俺は桜坂さんの作品紹介ページを見ているが、これと言って読んでみたい作品は目に付かなかった。
俺は言うまでも無いが、選り好みが激しい。
有志の読みあいイベントにも参加する時が有るが、毎回、読みたい作品を探すのが大変だから、最近は参加はしていない。
「う~ん」
「童話っぽいのも有るけど、今は童話の気分では無いし……」
無理をして作品を読もうとは思わなかったが、俺は有る作品に目が付いた。
「日記形式の小説か……」
「そう言えば一昔前、ブログが
「これなら、簡単に読む事が出来るし、読んでみるか!」
……
…
・
「……桜坂さんは虐めを受けているとは言えないが、疎外感を感じている人か」
「思春期ならでの悩みも有るようだし、まだ学生なのに人生苦労しているのだな」
苛めと言えば、暴力や徹底的な嫌がらせが俺の中で思いつくが、近年はSNSを悪用した虐めも聞く。
桜坂さんの日記形式の小説を読む限りでは、深刻的な苛めを受けている感じはしないが、心はかなり追い詰められている感じだった。
「だからこそ……俺の小説(心のデッドヒート)に目が留まった訳か」
「俺はそれ以外に何作品も小説を投稿しているが、桜坂さんがブックマークしているのは『心のデッドヒート』だけだ」
「桜坂さんの中では、ラブコメや家族物には興味が無いのだろう……」
「桜坂さんにメッセージを送ってみても良いが、この辺のメッセージが難しいのだよな」
「何でも『元気出しなさい!』とか言う時代では無くなったし、迂闊なメッセージを送ると誰かに通報されて、俺のアカウントが消されるかも知れない!」
俺はその日記形式の小説に、読んだ物語には全て
桜坂さんが本当に学生だったら嬉しい反面、不味い一面が出て来る。
俺は学生では無く、成人男性で有るからだ。
小説投稿サイト上の繋がりでも、未成年と成人の関係は作らない方が良い。
一昔前なら別だが近年、この辺りの取り締まりが非常に厳しい。
家出少女を善意で
勿論、
「今の時代は、何でも適度な距離を開けないと、直ぐに悪者にされる時代だからな」
「……今日は此処までにしておこう」
俺は1人喋りをしながら、小説投稿サイト『エレガントファイト』を閉じた。
……
数日後……
夜の余暇時間に小説を執筆して、出来上がったばかりの物語を投稿する。
「まぁ、投稿しても、大きな出来事は起きないのだけどな!」
そんな事を1人喋りしながら、無事に投稿を終える。
「さて、時間が有るし、この前の続きでも読むか」
俺は途中まで読んでいた、桜坂さんの日記形式小説の続きを読む事にした。
……
…
・
「やっぱり…、苛めでは無いが苛めに近い状態を受けているな」
「桜坂さんには、信用出来る親友はいないのかな?」
ある物語を読み終えた時、俺はそう呟いてしまった。
「……俺も学生時代に、クラスの連中らにハブられた事が有って、親にも言えずに苦労はしたけど、何とか切り抜けたな……」
「幸い、クラス内でも数人は俺の味方が居たから、あの時は助かったけど……」
俺の場合はそれで済んだと言っては駄目だが、桜坂さんの場合は俺より深刻そうだ。
「メッセージを送っては行けない気がするが、同じ境遇者としては見捨てられないな…」
「桜坂さんに好意が無いとは言い切れないが、1人の大人として、メッセージを送ってみよう!」
俺は桜坂さんに、初メッセージを送った。
内容としては『共感出来ます。 でも、私は切り抜ける事が出来ました』見たいな事を書いて、メッセージを送る。
「さて、これが吉と出るか凶と出るか」
俺は姿形が分からない、桜坂さくらさんを、知らない内に意識するように成ってしまった。
踏み越えては行けない、ラインを踏み越えてしまった感じがした。
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