第8話:手紙

島左近と颯馬与一は献上品の運搬をしている途中、賊と交戦していた。賊の狙いは案の定、献上品でワシと与一しかいない事で完全に侮り、数の暴力で献上品を奪い取ろうとしたが・・・・


「つええええ!」


「何なんだ、こいつら!」


島左近は手元の朱槍を長槍に変化させた。長槍の撓りを利かせ、相手の右胸に「柄」が直撃した


「ギャアアアアアアアアア!」


受けた賊はこれでもかというほど悲鳴を上げた。受けた右胸は肋骨が完全に折れ、折れた一部の骨が肺に突き刺さった。賊は口から泡を吹き、そのまま倒れた


「ふん。」


左近は次に長槍を振り上げ、賊に目掛けて振り下ろした。賊は剣でそれを防ごうとしたが、長槍の撓りと重量によって剣は折れ、賊の頭は潰れたトマトのようにぐっちゃと音を出して破裂したのである


「ヒイイイイイイイイイイイ!」


それを近くで見ていた賊は腰を抜かす。それを見逃さず左近は短槍に変化させ、賊の心臓目掛けて突き刺した


「ガハァ!」


賊は口から血を吐き、そのまま息耐えるのであった。仲間たちがバタバタと死ぬ姿に・・・・


「おい、逃げるぞ!」


「ずらかれ!」


賊たちはその場を離れ、逃走している途中、何かを踏んだ


「いてえええええ!」


「な、何だ!」


賊が足元を見ると撒菱(まきびし)が賊が逃走する方向に散らばっていた。賊たちは右往左往していると・・・・


「ふん!」


「ぎゃあ!」


後ろから島左近が追いかけてきて、手裏剣を投げた後、日本刀を抜き、賊共を一人残らず皆殺しにしたのである


「おっと、危ない。」


島左近は足元近くに撒菱が落ちていたことに気付き、留まるのであった。そこへ与一がスッと現れた


「そちらも片付いたか?」


「御意。」


与一の方も残りの賊を一人残らず始末したようで我等は献上品を運搬し王都へ向かった。それ以降、賊は現れず、順調に献上品を運搬し、そして目的地であるシュバルツ王国の首都、王都に到着したのである


「左近様、王都に到着しましたな。」


「ああ。」


島左近と颯馬与一は王都へ向かうと、正門で警備の兵が待ち構えていた


「そこの馬車、止まれ!」


我等は馬車を止め、警備の兵士に献上品の運搬等を伝えると、警備の兵士は中身を確認した後に正門を開け、王宮まで運ぶことになった。王都は何度か任務で来たが、相変わらず活気に満ち溢れていた。王都を治める国王、ロバート・シュバルツは優れた名君と評判であり、今が最盛期だと言う


「左近様、殿を思い出しますな。」


「ああ、殿も領民のために尽力されておられたからな。」


島左近の主君である石田三成は領地、佐和山にて善政を敷き、飢饉が起きた古橋村の年貢を免除し、更に100石の米を配布した。更に何か要望があれば直訴しても良いと口約束ではなく文章に残しているくらい領民を大切にしていた。島左近の死後、石田三成は関ケ原の敗戦後、領内の寺に匿われ、古橋村の住民によって介抱されたのである


「悪い御方ではなかったが、あまりにも生真面目すぎた。」


石田三成は秀吉の忠節のあまり他とも折り合いが悪く、三成は福島正則・加藤清正といった武断派から茶坊主・腰巾着と陰口を叩かれることもしばしばあり、決定的に亀裂が起きたのは、朝鮮出兵での石田三成による戦況報告である。石田三成は味方が不利であること、職務怠慢していることを全て秀吉に報告した。そのおかげで加藤清正らが謹慎処分を受ける始末となった。加藤清正らはこれを機に石田三成を恨み、秀吉の死後、襲撃事件を起こしたほどである


「今さら悔いても仕方があるまいな。」


ワシはもはやこの異世界で生活をする身、今さら元の主君を考えても仕方がない。その後、ワシと与一は王宮に到着し、献上品である鉄鉱石を届けた。王都の大臣が駆けつけ、中身の確認をした


「うむ、確かに鉄鉱石だ。サコン・シマ、ヨイチ・ソウマ、ご苦労であった。」


「「ははっ!」」


「ところでドレイク殿とレイナ嬢と従者の姿がおらぬが?」


「ははっ!それにつきましてはドレイク殿より手紙を預かっております。」


ワシはドレイクより預かった手紙を近くにいた兵士に渡し、その兵士が大臣に渡した。大臣は手紙を読んだ後、はぁ~と溜め息をついた。そして我等の方を向き、質問をしてきた


「今、ドレイク殿とレイナ嬢は療養中か。」


「ははっ!賊の奇襲を受け、両名共に深傷を負い、今は【トオノ】という町の病院にて療養しております。従者のドット・モーリが付き添いで残っております。」


「そうか、相分かった。報酬はギルドに渡すことにする。下がってよい。」


「「ははっ!有り難き幸せ!」」


ようやく仕事が終わったとワシも与一も安堵した。この10年間、この仕事をやってきて、次からは相手を考えて仕事をしようと決めた


「後は二人の実家に書状を出すだけですな。」


「そうだな、さてどこにあるだろうか?」


ワシらはドレイクとレイナの実家であるリスカルド伯爵家とフライシス伯爵家がどこにあるのか聞いて回り、まずはドレイクの実家であるリスカルド伯爵家の屋敷に到着した


「左近様、あそこにいる庭師に聞いてみましょう。」


「そうだな・・・・御免!」


ワシが呼び掛けると庭師がこちらに駆けつけてきた


「はい、何でしょうか?」


「リスカルド伯爵の御屋敷で間違いないか?」


「はい、左様でございますが。」


「そなたはこの屋敷の者か?」


「はい、リスカルド伯爵家にお仕えしております。失礼ながら貴方方は?」


「うむ、某はサコン・シマ、こちらはヨイチ・ソウマと申す旅の者でござる。実は御子息であるドレイク・リスカルド殿より書状を届けに参ったのだ。」


「ドレイク様にございますか!」


「あぁ、他にも所用があるので、この書状をご当主にお渡し願いたい。」


ワシは懐からドレイクが書いた書状を庭師に渡した後、すぐにレイナの実家であるフライシス伯爵家へと向かった


「ここで最後だな。」


「御意。」


ワシらはレイナの実家であるフライシス伯爵家の屋敷に到着した。そこへたまたま通り掛かったメイドに声をかけた


「御免!」


「はい、何でございましょうか?」


「ここはフライシス伯爵家の御屋敷で間違いないか?」


「左様でございます。申し訳ございませんが、どなた様にございますか。」


「うむ、某はサコン・シマ、こちらはヨイチ・ソウマと申す旅の者にござる。我等はレイナ・フライシス嬢より書状を届けに参ったのだ。」


「レイナお嬢様の!」


「あぁ、これがその書状だ。ご当主にお渡し願いたい。」


ワシは懐からレイナが書いた書状をメイドに渡した


「では我等は此にて。」


「お待ちください!」


ワシらは用事を済ませ立ち去ろうとしたがメイドが呼び止めた


「我が主が今、御屋敷におりますので、少々お待ちくださいませ。」


「いや我等はあくまで書状を届けに参っただけでござる。御気遣いは御無用に願いたい。」


「あ、やっと見つけた!」


ワシらとメイドがやり取りをしている所に1人の執事服を来た男がやって来た


「失礼だがドレイク様の御手紙を届けに参ったサコン・シマ殿とヨイチ・ソウマ殿でございますか!」


「如何にも。」


「不躾ながらどなたにござるか?」


「はい、私はリスカルド伯爵家にお仕えする執事にございます。我が主が是非にも御会いしたいとの事にございます。」


「左様にござるか。」


その後、ワシと与一はリスカルド伯爵家とフライシス伯爵家の当主と対面することになった。本心から言うと、面倒事には巻き込まれたくないから用事を済ませて王都を去ろうとしたが延期になってしまった


「(面倒な事になったわい。)」


「(御意。)」


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