第5話:失態

話は遡る、ワシ等一行は木が多い山道を警戒しながら、荷の護衛に従事している。ドレイクとレイナは先陣をきり、ワシと与一とドットは荷の護衛をしている


「(左近様、賊の気配が・・・・)」


「(あぁ。)」


ワシも与一も賊の動きが活発化したことを肌に感じつつ、手元に朱槍と日本刀と忍び道具を出現させた


「どうした!我等の荷物が狙いなのだろう!さっさと出てこい!」


前方にいたドレイクは潜んでいる賊に挑発をした。ドレイク自身は正々堂々と戦いたいのだろう。だがそれに乗るほど奴らはお人よしではない


「(与一、あの小僧がけしかけている内に動け。)」


「(御意。)」


ワシが命じると与一が行動を開始した。そうとは知らないドレイクは子犬のようにキャンキャンと吠えまくった。すると・・・・


「くっ!早速、飛び道具とは卑怯な!」


賊は矢を放ったようだ。ドレイクとレイナは剣を抜き、矢を弾き飛ばした。それでも矢の雨は止まず、ドレイクとレイナはたまらず引き、木陰に隠れた


「くっ!賊どもめ!」


「正々堂々と戦え!」


それでも矢の雨は止まず途方に暮れているところ・・・・


「ギャアアア!」


向こうから悲鳴が聞こえた。すると矢の雨が止んだ。ドレイクとレイナは突然、矢の雨が止んだことに違和感を覚え、木陰から出て山道に出た。すると前方から与一が出てきた


「なぜ貴様が出てくるのだ!」


「某は左近様の命で動いたまでだ。」


「何!どういうことだ!」


与一がそういうと、ドレイクとレイナはワシの方を向き、理由を問いただした


「そのままの意味だ。主が引き付けてくれたおかげで、賊の居場所が判明したんだ。」


「僕を利用したのか!」


「結果的に、賊は始末できただろう。」


「貴様、正々堂々と戦わないのか!」


「先程も行っただろう、実戦において卑怯もへったくれもないとな。正々堂々ばかりではこの先、やっていけんぞ。」


「僕に指図するな!もういい、いくぞレイナ。」


「そうね。」


「おい、勝手な行動を取るな!」


ワシの説明が癇に障ったのか、ドレイクとレイナは先に行ってしまった。ワシの制止を聞かずにそのまま奥へと進んでいった


「あ、あのお二人、先に行きましたけど・・・・」


「はあ~、仕方あるまい、与一、ドット、追いかけるぞ。」


「「ははっ(はい)」」


ワシは与一とドットと共に、ドレイクとレイナの後を追った。まだ賊が潜んでいる可能性があるのに、勝手な行動を取る二人に、さすがのワシもカチンときたが、もはや過ぎた事を悔やんでもしょうがない。できればあの二人が無事であればいいが・・・・


「左近様、あの二人は大丈夫でしょうか?」


「さあな、こればかりは天のみぞ知るだ。」


「で、でも二人は剣術の腕があるから大丈夫なんじゃ・・・・」


「忘れたか、奴らは飛ぶ道具を使うのだぞ、それにあの二人は正々堂々と勝負することを望んでいる。間違いなく苦戦するぞ。」


ワシらが先行きに不安さを覚えつつ、先へ進むと前方から殺気を感じた


「左近様!」


「うむ、ドット、敵は近くにいるぞ!」


「は、はい!」


ワシらは殺気の感じた方向へ進むと、利き腕を矢で射貫かれ、負傷し木陰に隠れるドレイクの姿を見つけたが共にいたレイナの姿はなかった。ドレイクの様子は先程の自信にあふれておらず、見ていて分かるように弱りきった状態でいた。しかも矢の雨は降り注ぎ、反撃できずにいた


「くっ!是非もなし。」


ワシは手元に投槍を出現させ、矢を放つ方向へと投げた


「ギャアアアア!」


すると矢を放った方向から悲鳴を上げた。すると向こうからドサッと音がした。すると矢の雨が一時的に止み、ワシはすぐに負傷したドレイクを担ぎ上げ、その場を引いた。与一が手元から煙玉を出現させ投げた。すると白煙が吹き出し、辺り一面を包んだ。ワシらは荷を護衛しつつ、撤退し安全な場所を探し続け、丁度良い洞窟を見つけ、そこへ隠れた


「うう。」


ドレイクは顔は既に青ざめており、ワシは矢の刺された腕の部分を見ると、患部が紫色に変色していた


「これは毒矢だ。」


「僕、ポーションと毒消しの薬を持ってます!」


「早くしろ、恐らく毒は全身に回っている!顔色を見る限り、毒は血液と混ざっている!」


ワシらはポーションと毒消し等を使い、ドレイクの治療を行った。何とか一命を取り止めたが、体力が相当削られており、安静にさせないといけない


「れ、レイナが・・・・」


「喋るな、あの娘は我等が探す。」


「つ、つれてかれ・・・」


そういうとドレイクは失神した。このまま様子を見ることにした。ドレイクが言い残したあの娘が賊に捕まったという情報、嫌な予感がする


「与一、すまないが賊の潜伏先を見つけてくれ。もし可能なら、あの娘を救出しろ。」


「御意!」


「あ、あの救出って、レイナ様の身に危険が?」


「決まっておるだろ、若くて美しい娘に、飢えた狼がすることと言ったら一つしかなかろう。」


ワシがそういうと、ドットも気付いたようだ。そう若く美しい娘を見たら、間違いなくあの娘は飢えた獣たちの餌食になる。いや、もう遅いかもしれん。ワシの命を受けた与一は辺りを警戒しつつ、賊の隠れ家を探していると・・・・


「おい、早くいかねえと間に合わねえよ、久しぶりの生娘らしいからな。」


「そうだな、生娘は締まりがいいからな、ぐへへ。」


「俺は気のつええ女とヤるのが好きなんだ、とことんやってやるぜ!」


下卑た笑いを浮かべる賊を見つけ、後を追った。すると人気の少ない場所へ差し掛かり、とある小屋を見つけた。賊たちはその小屋へ入っていった


「あそこだな。」


与一は慎重かつ素早く静かに小屋に接近した。聞き耳を立てると中には下卑た男たちの笑いと微かだが女の呻き声が聞こえる。ふと窓を見つけ、一瞬だけ覗くと・・・・遅かったか


与一は懐から爆雷筒を取り出し、火をつけ小屋とは反対方向に向けて投げた。時間が経ち、爆発した。すると小屋から複数の男が出てきた


「な、何だ!」


「どこから爆発した!」


与一は爆発したと同時に屋根に登り、出てきた男たちに、四方手裏剣を投げた。すると男たちの首が切られ、地面に落ちた


「ヒイイイイイ!」


「な、何が起こった!」


中にいた賊たちは突然の出来事に困惑している隙に与一は煙玉を取り出し、窓を石で破壊し、そこから煙玉を投げ入れた。中で白煙が発生し賊たちは苦しみ、外に出たところを四方手裏剣で一網打尽にした。全員、始末したあと、煙保護面【ガスマスク】を装着し、小屋の中に入った




その頃、島左近たちは洞窟に身を潜めながら、与一が帰ってくるのを待っていた


「遅いですね、ヨイチさん。」


「賊の居場所を特定するのに時が掛かるのだろう。」


「信用されているのですね。」


「あぁ、ワシにとっては右腕のような存在だからな。」


「そうですか・・・・」


「そういえば主はなぜ、ドレイクとレイナと一緒に行動するようになったのだ?」


「あ、はい。僕はこの通り、体も小さく男らしくもなく小柄なので、よく苛められていました。そこへ助けてくれたのはドレイク様とレイナ様なのです。」


「そうなのか。」


「はい、ドレイク様とレイナ様は根は悪い御方ではないんです。ただ貴族としての誇りなのか、相手に対して弱味を見せたがらないのです。」


「であろうな。」


「僕はその御二方を支えたいと思って一緒にいるのですが足を引っ張ってばかりで・・・・」


「そう自分を卑下することはない。ドレイクが負傷した際には、医術を持って命を救ったではないか。人を殺すのは簡単だが、人を生かすのは難しい。もっと自分に自信を持て。」


「・・・・嬉しいです、僕、人に誉められたことなんて今までないから・・・・」


「そうか。」


ワシとドットは談笑をしていると、そこへ与一が戻ってきた。レイナも連れて・・・・


「与一!」


「左近様、遅くなりまして申し訳ありません。」


「ヨイチさん、レイナ様は!」


ふとワシとドットはレイナの方を見た。与一は着物をレイナに着せているが、完全に素肌が露出している。目には光がなく、おまけに男なら知ってる臭いが漂っていた


「命に別状はありませんが・・・・もはや女子として純潔はもう・・・・」


それを聞いたドットは青ざめた表情になった。左近はこれからの先行きの危うさを感じつつ、レイナに衣服を着せ、介抱するのであった


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