第4話:足手まとい

島左近清興、ワシは今、とある村の依頼を受けていた。村の依頼は献上品を王都に届けるための護衛任務をすることになった。その献上品は鉄鉱石【馬車一台分】である。この鉄鉱石から農具や工具等を作り出すための大事な品であるり、この鉄鉱石を狙う者も多く、鉄鉱石を影で売り捌いて大金を手に入れているらしい


「ではお願いいたします。」


「心得た。」


「承知しました。」


この依頼を受けたワシと与一の他にも、3人の護衛もつけられた。ワシらの他に受けた3人はというと・・・・


「ふん、僕たちと一緒に依頼を受けられるんだ。光栄に思え!」


まず一人目は騎士属性の十代後半の小僧、身長は175㎝、金髪碧眼の色白の美男子、ドレイク・リスカルド。公家(貴族・伯爵家)出身で自尊心が強い性格で剣術の腕には自信があり、剣術大会で優勝するほどの腕前だという。此度の任務に志願したという


「ドレイクの足を引っ張らないようにしなさい!」


二人目は同じ騎士属性の十代後半の小娘、身長は162㎝、こちらも銀髪碧眼の色白の美少女、レイナ・フライシス。ドレイクと同じ公家(貴族・伯爵家)出身であり、こちらも自尊心が強く、剣術の腕には自信があり、剣術大会で準優勝するほどの腕前だという。こちらも任務に志願した


「よ、よろしくお願いします。」


三人目は薬師の十代後半の小僧、ドット・モーリ。平民出身で薬師になるのが夢で、回復や治療系の勉強をし、念願の薬師になった。身長は150㎝、見た目は小動物を絵に書いたような黒髪女顔の小男である。ドレイクとレイナの従者らしい。見て分かるように臆病な性格をしている


「左近様、如何いたします?」


「是非もない、私情は二の次だ。今は荷の護衛が先決だ。」


「先が思いやられますな。」


ワシらは他の3人と共に献上品の護衛を従事することにした。男騎士の小僧と女騎士の小娘は剣の腕を自慢しているが、恐らく実戦経験がないと見た。もう1人の方も、周囲をキョロキョロしており、落ち着きがない。先が思いやられるな、これは・・・・


「おい、先程から黙ってないで何か言え!」


ドレイクがワシらに向かって命令口調で問いかけてきた。表情には出さないが嫌気を指していた与一が答えた


「・・・某の仕事は荷の護衛だ。話をするつもりはない。」


すると今度はレイナが激高し、与一を激しく非難した


「無礼者!ドレイクの慈悲に対し、何という言い草だ!」


そこへ、すかさずワシが任務の重要性を伝えた


「お忘れか?この献上品を狙う物が数多い。いつどこで襲撃を受けるか分からないのだ。一瞬の油断が命取りになる。」


「ふん、そのような下郎が現れたら、僕の剣で切り伏せてやる!」


「で、でもこの方の忠告はき、聞き入れた方がいいと・・・・」


「ドット、誰に向かって口をきいている!ドレイクのいう事は絶対だ!」


「で、でも僕たちこれが初任務だし・・・・」


「ドット、平民の分際で僕たちに意見するのか!」

 

「も、申し訳ありません。」


「この者はそなたらを心配しての忠告だ。」


「黙れ!僕たちに貴族に意見するな!」


与一が手裏剣を取り出そうとしたところ、ワシは何とか止めた。やれやれ、この2人は緊張感というものがないようだ。薬師の小僧のようにはなれとは言わないが慎重さを持って臨んでほしいものだ。与一も同じ気持ちか、読唇術でワシに語りかけてきた


「(左近様、間違いなく、この三人は足を引っ張ります、任務に支障がきたす恐れあり。)」


「(分かっておる。いざというときは我等で対処致す。)」


「(いっそのこと始末致しますか?)」


「(まあ、まて。相手は公家の子息だ。もしもの事があれば我等にも咎めが来るやもしれん。)」


「(面倒ですな。)」


「(まぁ、お手並み拝見といくほかあるまいて。)」


「さあ、僕たちの名誉ある旅へ行くぞ!」


ワシらは後ろの三人を観察しつつ、王都へ向かった。町で補給物資を購入し先へ進み、その道中で木が多い山道に差し掛かった。山賊が待ち伏せするには持ってこいの場所だ


「気を付けろ、ここから先は警戒した方がいい。」


「僕に命令をするな!」


「そうだ、賊が現れたら斬り捨ててくれる!」


「(あてにならぬな、こやつら。)」


「(こやつらが1番の足手まといですな。)」


ドレイクとレイナが自信満々に言い放ち、ドットはガタガタと震えながら辺りを見渡していた。ワシは先に与一に命じて賊がいるかどうか調べることにした。それから数刻が経ち、与一が帰ってきた


「で、どうだった?」


「はい、待ち伏せがございます。」


「ふん、待ち伏せなど僕の剣で斬り伏せてくれる!」


「お気をつけを。相手は弓矢を持っております。」


「飛び道具とは!何と卑怯な!」


「実戦において卑怯もへったくれはない。殺すか殺されるかの世界、奴等も生きるために何でもするものだ。」


「ふん、面白い!卑怯な振る舞いしかできん賊どもに正義の鉄槌を下してやる!」


「左様か、だがこれだけは肝に銘じなされ、手負いの獣ほど厄介なものはない。」


「ふん、臆病風に吹かれたか!」


「そうだ、そんなに賊が恐ろしいならドットと共に控えておれ!」


ドレイクとレイナはこれから起こる状況を理解できず、逆に我等を臆病者扱いした。これを見るとかつての主である石田治部を思い出す。戦場におけるワシの意見をことごとく無視されたからな・・・・


「左様か、では我等は献上品を守る事としよう。」


「それで良い!臆病者は下がっておれ!」


「相分かった、与一、行くぞ。」


「ははっ!」


ワシは与一と共に献上品を護衛をすることになり、ドレイクとレイナは先陣をきることになった。三人にばれずにワシらは読唇術で会話をすることにした


「(左近様、あの二人に任せて大丈夫なのですか?)」


「(我等の任務は荷の護衛だ。それに綺麗事だけでは生きていけない事を教える良い機会かもしれんな。)」


「(そんな悠長な・・・・)」


「あ、あの。」


ワシらが読唇術で会話をしている最中、若き薬師のドットが話しかけた


「如何した?」


「ぼ、僕、戦闘は出来ませんが、治療や回復は任せてください。」


ドットはガタガタと震えながらも、薬師としての誇りか、ワシらの前で己の職務を全うしようとした


「まぁ、期待はしている。」


「はい!」


正直言うと、あまり期待していない。口だけなら何とでも言えるが、いざ土壇場に立つと、この若者は何を仕出かすか分からない


「お主も無理はするな。実戦は我等に任せよ。」


「よ、よろしくお願いします。」


「ドット、何をしている!」


「も、申し訳ありません。」


「臆病者同士、親睦を深めているだけよ、放っておきなさい。」


「それもそうだな。」


前方にいたドレイクとレイナは臆病者同士、仲良くしていると嘲笑った。与一は我慢できずに反論しようとしたが、ワシは止めた


「(なぜ止めるのです!)」


「(放っておけ、後になって吠え面をかくのはあやつらだ。)」


「(くっ!)」


その後、ギクシャクしながらも山道に入った。ワシと与一は荷の護衛をしつつ、辺りを警戒を続けるのであった


「ぐは!」


「ドレイク!おのれ!」


「おせえぜ!おらっ!」


「うっ。」


「レイナ!レイナを離せ!」


「こりゃ、上玉だぜ!」


「お頭にも知らせてねえとな。」


そのころドレイクとレイナは案の定、賊の奇襲を受け、ドレイクは利き腕を矢で射貫かれ、レイナは賊の当身で気絶し、そのまま連れていかれた


「ふふふ、久しぶりの女だ。みんな喜ぶぞ!」


「ひひひ、これからが楽しみだ!」


レイナを捕獲した賊たちは舌なめずりしながら、アジトへと向かっていったのであった

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