第3話:用心棒
ワシは島左近清興、配下の与一と共にこの異世界に来て10年の歳月が流れ、ワシらも30代になり、ワシの身長は6尺1寸(186㎝)、与一の身長は5尺6寸(170㎝)迄伸びた。ワシと与一はまず階級の低い仕事を徐々にこなしていき、そこから階級を上げていった。現在は用心棒の仕事を生業としている。用心棒は荷物の警護、依頼主の護衛などを生業とし、危険度は高いが報酬が良い。用心棒の仕事をするのは腕利きでないと務まらず、花形職業といっても過言ではない。何度か依頼先から仕官の誘いがあったが、宮仕えはこりごりだから辞退した
「ありがとうございます。」
「我等は役目を果たしたまでござる。」
今日も用心棒の仕事を終え、与一と共に宿へ戻ろうとしていた
「サコンの旦那に、ヨイチの旦那!」
ワシらに声を掛けたのは、ガルバ町の娼館【イザナミ】に勤務する娼婦たちである。話は変わるが、娼館【イザナミ】はガルバ町唯一の公娼であり、この異世界の娼婦は売春婦というよりも現在のキャバ嬢やホステスに近く、贔屓の客と馴染みの間柄になったら床入りするのが通例である。その娼婦たちの中には与一と男と女の関係である黒髪総髪【ポニーテール】美人、身長158㎝、20代前半の色白黒眼の高級娼婦、ウルザ・ソウナもいた。ウルザは元は豪商の娘だったが火事で家を無くし一家は離散し、ここへ流れ着いたという
「最近、旦那たち、来てくれないじゃない!」
「すまぬ、仕事が忙しくてな。」
「仕事が終わったんでしょ?だったらウチに来なよ。うんとサービスするわよ♡」
「いけたら行く。」
「待ってるからね♡」
「ヨイチの旦那、またね♡」
「ああ。」
娼婦たちと別れた後、ワシらはギルドへ寄った
「サコンさん、ヨイチさん、お仕事お疲れさまです。」
受付にいたのはビルデ・ブランドという娘である。年齢は20代前半、身長は160㎝、肩まで伸びた金髪、赤眼の色白美人である
「こちらが報酬です。」
「忝い。」
「またのご利用お待ちしております。」
ワシらは報酬を貰った後、拠点である宿に戻った
「サコンさん、ヨイチさん、お帰んなさい。」
ワシらの拠点としている宿屋の主であるレイク・ヒールが出迎えてくれた
「あぁ。」
「ただいま帰りました。」
「はい、部屋の鍵です。」
「忝ない。」
ワシらは礼を述べた後に、ワシらの使っている部屋に入った。部屋の中は、きちんと清掃されており、ワシらは荷物を置いて、ベッドに座った
「左近様、このベッドも慣れ申した。」
「そうか、ワシは布団が良いな。」
ベッドには慣れたが、布団が恋しい。やはり現世にいたころ、布団で寝ていたから布団の生活が染みついたのだろう。与一はいつでもどこでも寝られるらしいから、ベッドにも慣れている。ワシも与一ほどの慣れがあればな・・・・
「如何いたしましたか、左近様。」
「いや、何でもない。」
その後、ワシと与一は一休みした後、宿を出て、飯を食いに行った。ここではカレーライスなる物が人気らしい
「いらっしゃいませ!お好きな席へどうぞ。」
ワシと与一は空いている席に座り、カレーライスを頼んだ。ワシもカレーライスの味、最初はちと辛かったが、慣れるとこれほど美味い物はないと思う。与一も初めて食べるカレーライスに最初は辛いと言っていたが、今では御馳走のように食べている
「お待ちどう様でした。カレーライスです。」
「うむ、ではいただこうか。」
「御意。」
ワシと与一はカレーライスを頬張った。うん、美味い。このカレーライスを食べている時が生きているという証である
「うむ、いつ食べても美味いな。」
「御意。」
ワシと与一はカレーを食べた後、勘定を支払い、娼館【イザナミ】へと向かった。一応、約束だからな。ワシらが入ると、【イザナミ】の支配人が出迎えた
「ようこそおいでくださいました、サコン様、ヨイチ様。」
「うむ、邪魔をする。」
「失礼いたす。」
ワシらが来たことで娼婦たちが出迎えた。ここの娼館は美人ばかりで、客にも人気がある
「旦那ら、待ってたよ♡」
「ああ。」
「今日はうんとサービスするわよ♡」
「与一、明朝になったら会おう。」
「左近様も。」
ワシと与一は別々に分かれた。この時はお互い好きなように過ごしたいだろう、修羅の日々から解放されたいだろう。ワシらも男だし・・・・
ちなみに高級娼婦とは特に多額の対価を要する者で、主に高い身分の者、有力者、花形商業等を客とし、高級娼婦自身が相手を選ぶ権利がある。高級娼婦と馴染みになれば【擬似恋人・夫婦】となり、様々な特典を得られるのだ
「待ってたわよ、サコンの旦那♡」
ワシを出迎えたのはこの娼館の所属する高級娼婦のアリーナ・スレイブである。見た目はわずかに赤みの帯びた金髪、腰まで伸びた長髪で色白碧眼、身長160cmほどの20代前半の美女である。元は公家【貴族】の伯爵家令嬢だったらしいが没落してここに辿り着いたという過去がある。ワシがこの娼館にやってきた時の相手がまだ十代半ばあまりの小娘だったアリーナだ。アリーナが体調不良の時があり、ポーションを上げたら体調が回復し、これがきっかけで馴染みの間柄【擬似恋人・夫婦】になった。ちなみにアリーナは生娘でワシが初めての男らしい。それからというもの、アリーナはワシ以外の男に心も体を許さず、一途にワシを思い続けている貞女のような女子だ
「旦那、最近来てくれないから、他の女と浮気してると思ったわ。」
「いや、すまんすまん。仕事が立て込んでおってな。」
「ふうん、そういう事にしてあげるわ。それでどうする?お酒にする?お風呂にする?それとも私?」
「そうだな、酒でも飲もう。」
「何にする?」
「うむ、葡萄酒にするか。」
ワシは葡萄酒を注文した後、給仕の男が入ってきて、葡萄酒とガラスでできた西洋の盃【グラス】を持ってきて、蓋を開けた後、葡萄酒をグラスに注いだ
「では旦那、乾杯。」
「乾杯。」
ワシとアリーナはグラスをコツンと軽く当て、葡萄酒を一緒に飲んだ。現世にいた時は、何度か飲んだ。最初は酸っぱさが受け付けなかったが、慣れると癖になる
「ふう、それでどうする、旦那?」
「風呂に入るか。」
「一緒に入る?」
「そうだな。」
ワシがそういうとアリーナと共に風呂に入ることにした。互いに生まれた姿で風呂に入った。ワシの体は傷付きの引き締まった筋肉質の体に対し、アリーナは細身で美しく、豊満な胸が強調されている
「旦那、さっきからジロジロ見てる♡」
「アリーナが綺麗だからな。」
「ふふ旦那、いい身体しているわ、あ、また傷ができてる。」
「仕事だからな。」
アリーナはシャボン・・・石鹸を使い、手拭いにお湯をつけて、ワシの体を洗い始めた
「旦那、いつまでこの仕事を続けるの?」
「ワシは武人だ。この生き方しかできん。」
「そう、不器用な生き方ね。」
「自覚はしてる。」
「フフフ♪」
その後、互いに洗い終わった後、風呂に入った。湯船に浸かりながら、丁度良い熱さの御湯を感じていた。するとアリーナが俺に横に近づき、肩に触れた
「こうして二人きりになれたのはいつぐらいかしら?」
「すまんな。」
「旦那、本当にすまないと思っているなら、分かってるわよね?」
「ああ。」
ワシとアリーナはそのまま口付けをした。アリーナの唇の感触、匂い、体温が全身に伝わってくる。唇を離した後、アリーナは・・・・
「そろそろ上がる?」
「ああ。」
ワシとアリーナは風呂から上がり、体を拭いた後、そのまま寝室へと足を運んだ。ベッドに座り、再びワシとアリーナは口付けをした。口付けし終わった後、互いに顔を見つめ合った
「旦那、今日はいっぱい可愛がってくださいね♡」
「ああ。」
その後、ワシはアリーナと一夜を共にした。翌朝、小鳥の囀りが聞こえ、目を覚ますと既にアリーナは起きており、着替えを済ませていた
「おはよう旦那。」
アリーナは笑顔でワシを迎えた。その笑みはまさに天女そのものだった
「ああ、おはよう。」
ワシも着替えを済ませた後、娼館【イザナミ】の玄関まで足を運んだ。そこへ与一も玄関先にいた。与一も馴染みの女子と一夜を過ごしたのか、ワシと顔を合わせると照れ臭そうにしていた。するとアリーナがワシの頬に口付けをした。ワシは思わずアリーナの方を向くと、アリーナは片目を瞬きした
「ではサコンの旦那、また来てくださいね♡」
「あ、ああ、与一、いくぞ。」
「ははっ!左近様。」
「ヨイチの旦那、またね♡」
「あ、ああ。」
ワシと与一はアリーナや他の娼婦たちに見送られながら【イザナミ】を後にした。ワシと与一は上も下もスッキリさせ、互いに無言のまま、ギルドへ向かうのであった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます