入寮します! 8

side:水瀬遥



ようやく寮に辿り着いた。門から寮までが遠いのは、ただ敷地が広いからというわけではなく、防犯の面もあるらしい。



たしかにこれだけ離れていれば、例え部外者が入ってきたとしてもすぐには寮まで辿り着けないだろう。


門からは離れているが、寮から校舎までは5分程らしいと聞きホッとした。僕は朝が得意じゃないから早起きが必要な程遠くだと困ってしまう。




「ここがこれから3年間過ごしてもらう寮となります。今から今後の生活に必要不可欠な大切なカードをお渡ししますので、呼ばれたら受け取りに来てください。」



如月はそう言って、1人1人に銀色や金色のカードを渡していった。



僕のカードは金色だ。色で何か違うのかな?





「はい、これで皆さんに行き渡りましたね。それではカードの説明をします。不明点は最後にまとめてお聞きしますね。」


そう言って如月は丁寧に説明してくれた。






カードは部屋の鍵になっており、扉に設置されているカードリーダーにかざすと鍵が開く。オートロックなので部屋を出る時はカードを忘れず持ち出す事。



カードはクレジットカードの代わりとなっており、寮内・校舎内に併設してある食堂・スーパー・コンビニでの買い物は全てこのカードを使用する。また、その際の代金は家に請求が届くようになっている事。



カードを無くした際は再発行も可能だが、手数料がかかる上、用意するのに時間がかかるので無くさないよう大切に保管する事。



カードの色は、シルバー・ゴールド・ブラックの3種類。シルバーは通常のカード、ゴールドは成績上位者の特典付きカード、ブラックは役職持ちのみが持つ色である事。ゴールドカードは全施設での購入代金が学園持ちになり、ブラックカードはゴールドカードと同様の特典に合わせてどこの部屋の鍵でも開けられるようになっている事。






「以上の4点が主に大切な所ですかね。何か質問がある方はいらっしゃいますか?」



「あの⋯ブラックカードなんですけど、俺たちの部屋も開ける事が出来るんですか?」



柳が質問するのを聞き、たしかにそれは大事な事だ、と思う。プライバシーは大切だ。




「そうですね、ブラックカードで開けられない場所があるとすれば理事長室くらいです。ただこの学園は社会の縮図です。役持ちの生徒はそれに相応しい言動を求められ、各役職同士問題が無いか互いに目を光らせています。基本的に何があっても大人は介入しませんが、各役員同士が抑止力になっているので余程の事件や緊急事態が無い限り、他人の部屋に押し入る事はまずありません。ご安心ください。」




「そうですか、分かりました。ありがとうございます。」


にこりと笑って答えた如月に、柳もにっこりと笑って返す。何故だか空気が冷たい⋯⋯と周りは少し怯えたように2人を見つめていたが、遥はというと



(ほえぇ⋯⋯役職持ちというのは大変なんだなぁ⋯ブラックカードを持ってる人ってなんだか凄そう。あ!そういえば柳くんの質問ですっかり忘れてたけど僕ってばゴールドカードじゃないか!成績上位者だったって事だよね⋯僕もしかして凄いのでは⋯⋯?食費がタダだ!)




なんて頭は良いはずなのにアホみたいな事を考えていたので、場の空気に全く気付いていなかった。

必然的にずっと無表情だったので、2人の空気に怯えた他生徒からこの人全く動じてない!凄い!と謎の尊敬を集めていた。


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