入寮します! 6
side:水瀬遥
柳という初めての友人候補ができて、内心ウキウキに浮かれながらも門前へ移動し、バインダーを持って穏やかな笑みを浮かべる男の人に名前を伝え、柳と共に少し場所を移動して全員の点呼が終わるまで静かに待っていた。
「さて⋯全員揃っているようですね。改めまして、寮監をしております、
集まっている生徒は、遥と柳を含め10人しかおらず、このマンモス校の中で外部生がとても少ない事に少しの驚きと不安を覚えつつも、寮監が優しそうな人で良かったと胸を撫で下ろす。
遥と柳は先頭から少し場所を移動していたので、遅れないよう後を追うと、柳が他の生徒に話しかけられた。
柳は返事をしつつも、こちらを気にしているようだったので、僕の事は気にしなくて良いよという思いを込めてコクっと頷き、スッと視線を前へと戻した。
元来初めましては苦手なのだ。話しかけられてもいないのに、話している人たちの会話に混じる勇気など、遥には1㎜も無いのだ。
(柳くん、気を遣ってくれたのかな。やっぱり優しい人なんだなぁ。)
なんて思いつつ、暇になってしまったので先頭の生徒が如月と話しているところを歩きながらぼーっと見つめる。
歳の頃はおにぃと同じくらいだろうか?
栗色の髪の毛は緩くセットしてあり、涼しげな目元と形の良い薄めの唇は先程から常に穏やかな笑みを浮かべている。
マナーや礼儀に厳しいタイプなのだろうか?生徒相手にも常に敬語を使っている。
そんな事をツラツラと考えていると、視線を感じたのか斜め前に居た如月がふとこちらに目線を向けた。
あ、見すぎてしまったと内心焦るも、でも如月さんはいわゆるイケメンというやつだし、見られ慣れているだろうから気にもされないか、と持ち前の謎のおおらかさで自己完結をし、目線を外そうとした瞬間、ずっと穏やかな笑みを浮かべていた如月が、こちらを見つめたまま口元に大きな手を当て、ふは⋯っと笑った。
如月に話しかけていた生徒は不思議そうにしながらも、隣の別の生徒と話を続行していたので、彼が面白かったわけではないらしい。
(何かそんなに面白いものでもあったのかな?)
そう思いキョロキョロと周りを見渡すも、周辺の生徒たちはお喋りに夢中だ。
不思議に思い、首を傾げつつも目線を戻すと、また如月と目が合った。
穏やかな笑みを浮かべていた先程までとは違い、楽しそうな笑みを浮かべている如月は、パチンッとこちらに向けてウィンクをした。
(おぉ⋯⋯。イケメンって本当にウィンクするんだ。凄い。僕もウィンクが格好良く出来るイケメンになりたい!)
今日の夜からウィンクの練習でもしてみようかと考えながら、しかしなんで如月はウィンクをしたのだろうかとまた首を傾げる。
(よくわかんないけど⋯楽しき事はいい事なり。)
と、遥は再度不思議な自己完結をし、今度こそ如月から目線を外し、歩いている周囲の景色を眺めることにした。
しかし門前からもう軽く15分は歩いている。
どれだけ大きい敷地なんだろう、と奥の方に見える寮らしき建物に、もう少しかかりそうだな、と思う。
こんな広い敷地で迷子なんて笑えない。
自分が方向音痴な自覚がある遥は、はぐれないようにしないと、と再度気を引き締めるのであった。
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