入寮します! 4

side:柳颯汰



4月、桜並木を横目に、俺は私立桜華学園に入寮する為歩いていた。


坂下で外部生らしき人達が歩いているのを見つけたので、坂上まで車で行こうとしていた運転手に少し離れて停めてもらい、坂下から歩いて向かう事にしたのだ。



桜華学園は全寮制なうえ、エスカレーター式の学園なので閉鎖的だ。


内部生は既に人脈やコミュニティが出来上がっているはず。

だとしたら、同じ外部生同士ある程度のコミュニケーションをとっておいた方がいいだろう、という打算的な思いもありつつ、柳は人好きのする笑顔で前を歩く生徒達に声を掛けたのであった。





幼少期をアメリカで過ごし、周囲は陽気で気さくなタイプばかりだったうえ、自身も物怖じしない性格な柳は、初対面の人とコミュニケーションを取るのも全く苦ではなく、むしろ柳の得意分野だった。



しかし物心ついた頃からずっとアメリカに居たので、日本に帰り、地元の私立中学に通った3年間は人との距離の詰め方に割と苦心した。


コミュニケーションを取ろうにも、最初は相手の反応の意味が分かりにくく、どうしたらいいのか困ったこともあったが、3年間試行錯誤を続け、学んだ。もう日本の生活にも慣れたと言ってもいいだろうと自負している。




他生徒と情報交換をしながら柳はそんな事を思い返していた。








あと少しで坂を登り切るという頃、ふと、風がザァっと吹き、桜がヒラヒラと周囲を流れていった。




流れ落ちる桜の花びらに気を取られ、口をつぐみそちらを見上げると、こちらを見つめる真っ直ぐな瞳。


すぐに逸らされてしまったその瞳に、柳は何故か鼓動が早くなっていくのを感じていた。



『⋯⋯なんだ?』



周りの生徒達は話に夢中で、人がいる事にも柳が自分の鼓動に困惑して思わず呟いてしまった事にも気付いていない。



そっと端に避ける彼から目が逸らせず、彼と話してみたいという欲求に駆られ、ちょっとごめん。とその場を辞して彼に早足で歩み寄った。


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