3話 根絶した人生

 『いつものとこ』というのは私とみくるが遊ぶときに集合する駅前広場のことだ。

 私は集合時間(九時)より五分前に着いた。

 別に何も考えずに木にもたれかかって待っていると、

 約二分後くるみが手を振って走ってきた。

 「やっほ~!待った?」

 「いや、ちょうどいまきたとこ」

 「じゃあいいや!」

 なんてありきたりな会話をする。恋人同士かよ。

 二人で雑談をしながら歩き、目的のショッピングモールに着いた。

 (結構でかいな)

 「わぁ…思ったより大きいね!」

 「それな。この中にどんな店があるか分かる?私何にも調べてないんだけど」

 「あぁ…あたしなんか昨日調べたけど忘れちゃった」

 「あ!でも確か、star ドーナツとかはあったの覚えてる!」

 「なにそれ?ドーナツの店?」

 「そうそう最近できたお店でなんかよくSNSでみるよ」

 「へぇ」

 そんな話をしながら中に入っていく。

 別に今まで行ったショッピングモールと大きな変化はない普通のショッピングモールだった。

 そんなことどうでもよく私たちは二人でその時間を満喫していた。

 本当に楽しい時間だった。みくると二人っきりで遊んだのだって大体三か月も前のことだ。

 一日中私たちはそこで過ごした。

 気分転換に外に出てみると夕暮れ時だった。

 「あーあ。もうこんな時間か…」

 みくるがスマホを見ながら言う。

 「ほんとにねぇ…でも楽しかったね!」

 「もちろん!」 

 私もスマホを取り出した。

 「なんで電源きれてんだろ?」

 「充電切れじゃない?」 

 いやそんなはずはない。一時間ぐらい前に見たときは充電は80%はあった。 

 「あ。電源ついた」

 「なんか長押しでもされて勝手に切れたんじゃない?」

 「そうかもね」

 そう返しておくが残りの充電は80%で変わらない。

 間違えてさっき切ってしまったのだろうか。

 まあ深く考える必要はないかな。

 (ん?)

 一件不在着信がある。だれだろう。

 母だ。それと同時に留守電も残ってる。

 「ごめん!ちょっと待ってて!」

 「どしたの?」

 「すぐに戻るから!」

 そうみくるに言い残し、私は建物の影で留守電を再生する。

 

 『ちょっとあんた。なんで電話出なかったのよ!こんな緊急事態なのに!

  このメッセージ聞いたらすぐ帰ってきて!』

 

 なんだろ?緊急事態って。まあ素直に聞いておこう。

 みくるの元に帰る。

 「ごめんみくる!なんかママに帰ってきてって言われたから今日これで帰る!」

 「そうなの?気の毒に…まあ仕方ないよね。バイバイ!」

 「ほんとごめんね。バイバイ!」

 そう手を振って家に急いで向かう。一体なにがあったのだろう。

 なにか頭の中に不穏な考えがよぎる。嫌な予感がする。

 そうじゃなきゃなかなか緊急事態なんて言わないはず。

 とにかく走る。

 玄関に着いた。

 家に入る。

 母が急に私に怒ってくる。

 「本当にあんたは何のためにスマホもってるの?!」

 「ご、ごめんなさい…」

 「まったく…」

 「それよりどうしたの?緊急事態って。」

 「奏がどこ行ったか知ってる?」

 「え?知らないけど奏が自ら外出るなんてことある?」

 「ママも信じらんないよ。」

 「そうだよね。じゃあ、誘拐…?」

 「カギはちゃんと閉めてったからないよ。」

 「奏がインターホンとかに出るとも思えないしね。」

 ここで家の固定電話が鳴った。

 「だれからだろ?」 


 ガチャッ…

 『もしもし。雪村さんですか?』

 「はい。雪村です。どちら様ですか?」

 『こちら如月といいます。お宅に下の子らしき子どもが線路近くで倒れてるんです!』

 「本当ですか!?」

 「すぐに向かいます!」

 ガチャッ…

 

 「ママ!すぐに線路に向かおう!」

 「でもそれ信じて大丈夫なの?」

 「今は信じるしかないよ!行こう!」

 線路の近くに向かう。急ぐしかない。

 線路に着いた。警察と救急車が止まっている。

 「すいません!お巡りさん!雪村です!」

 「雪村さん?!ちょうどいいのか悪いのか妹さんかな、今救急車に運び込まれるところだよ。お乗りになられますか?」

 「はい!お願いします。」

 

 私と母は救急車に乗り込んだ。一応奏かどうか確認してみる。

 「え?」

 そこには体が変な方向に曲がった奏の姿があった。

 「奏!!!!」

 私は頭の中が真っ白になった…

 その後、奏の死亡が確認された。

 私はその現実が受け入れられなかった。

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真実からの呼び声 てーる @TeiRu_R

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