2話 地獄への入り口

今日から春休みが始まった。

 別に何かが変わるわけでもないが。私の中学校は

 卒業式がほかの生徒の修了式よりも二週間ほど早いので

 いつも通り起きた今日は友達と登校する生徒が見える。 

 (私もあんな感じで昨日まで登校してたんだなぁ)

 ちょっぴり悲しくなる。 

 ベットの横にあるスマホの電源をつけてみる。

 特に理由はないが。

 (あれ?通知来てる…誰からだろう?)

 悲しいことだが私は友人からメールが来ることなど滅多にない。 

 犯人は友人、高橋みくるだった。

 『今日どっか遊びに行かない?』

 そんな内容だった。別にやることもないしいっか。

 「いいよ。どこいくの?」

 すると間髪入れず、

 『最近駅前にできたショッピングモールみたいなのあるじゃん?そこ行きたい!』

 (あいつは常にスマホを見ているのか…)

 「いいよー」

 「私もそこ行ってみたかったし」

 『じゃあ九時にいつものとこ集合ね~』

 「はいよ~」

 久しぶりに友達とメールで会話した気がする…

 てか九時って結構早い集合だな。 

 ちなみに現在時刻は7時だ。

 まあ普通に準備すれば間に合う時間だが。

 しばらく部屋でぼーっとしていると、

 『コンコン…』 

 「え?」

 なぜかノックが聞こえた。私の家族に丁寧にノックして入ってくる人はいない。

 まあ一応開けてみるか、、、

 「あれ?」

 誰もいない。空耳かなぁ。

 そんなに気にも留めずに再び部屋に戻った。

 またしばらくして、

 「朝ごはんだよー!!!!」 

 下から奏の叫び声が聞こえた。

 (学校行ってないくせに元気だよなぁ。)

 私は部屋を出て一階に降りた。

 朝ごはんがテーブルに並んでいる。

 「あ、ママ。今日はみくると遊んでくるからね。」

 外出するときは母に言わないと怒られるので言っておく。

 「そう。気を付けてね。」

 「え~?お姉ちゃん出かけちゃうの?つまんないのぉ~」

 「留守番頑張ってね。」

 「え?今日ママ仕事なの?」

 奏が聞く。

 「そうだよ」

 「じゃあなおさらつまんないじゃん!」 

 (頑張れ~)

 心の中で応援しておくが本心じゃない。

 本来奏は学校に行っていなければいけないのだ。

 つまり留守番なんか当たり前なのだ。

 そういえば奏、今いちおう六年生なのに卒業式はどうするんだろう。

 あとでママに聞いてみるか。

 いろいろ物事を済ませ部屋で出かける準備をしていると、

 『コンコン…』

 またノックされた。やっぱりさっきのも空耳ではなかったのだ。

 今回はちょっと無視しよう。

 なんだかんだで時刻は八時四十分になった。

 (やべ!いかなきゃ)

 そうして私は荷物を持って玄関に向かった。 

 靴を履いていると、妹が

 「なるべく早く帰ってきてね…」

 なぜか深刻そうな顔で言ってくる。

 「私がいないと寂しいの?」

 聞いてみるが返答がない。

 ドアを開けて

 「行ってきます。」

 そう言っても奏からは返答がない。

 下を向いて佇んでいる。

 (そんなに寂しいのか)

 軽い気持ちで家を出た。

 


--------------------これから地獄が待っているとも知らずにね

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