世界最高峰戦闘一家の末っ子として、俺は敵国のアニメにどっぷり浸かるのであった
@Kitagami
第1話
「パパ、どうして世界地図の真ん中に、大きな穴があるの」
世界地図には大きな大陸が、四方に分布されている。ある国は氷河国、ある国は毒ガスが充満している、ある国は砂漠化、ある国はワイバーンが飛び回る溶岩地帯。その大陸には、大陸に適応した人類が住んでいる。
そして地図中央には、ぽっかり穴が空いたように黒く塗りつぶされている場所がある。
「それはな、そこが異世界に繋がるワープホールになってるからだよ。ワープホールと言っても、簡単に行き来できるわけじゃなく、言い伝えでは我が国のワイバーン部隊を持ってしても突破は難しいとされている」
その言葉は、逆に例えると希望にも繋がる言葉だ。どうにか死力を尽くしたら異世界に行ける可能性だってある。当時4歳だった俺は、そんな甘いことを考えていた。
世界は今戦争中ではあるが、ワイバーン部隊を率い、それに適応するように肉体強化された我々龍人族が、実質上の頂点にいる。その龍人族の肉体、ワイバーンを持ってしても、ワープホール攻略は厳しいとされている。それすなわち不可能なのである。
「異世界ってどんな所なんだろ、パパみんなと一緒に異世界観光しようね」
「そうだな…」
陛下は俺を膝からおろし、メイドに遊んでやれと命令する。今日は何して遊ぼうかとワクワクして、メイドであるアレスと陛下の部屋をあとにする。
「諸君、アイラは来年5歳になり一般的には、戦闘の教育をする時期だ。ただ私は、アイラには戦闘が向かないんじゃないかと思っている。アイラからは血に飢えた龍人族のニオイがしない」
「陛下私から。第四王子であるアイラ様の、日々の遊び方を集計しました。積み木162回、ジェンガ136回、トランプ97回、オセロ96回とどちらかと言うと、戦略や構築よりの遊びを好んでおります。後ろ2つは最近遊ぶ数が急上昇しております」
「ほう、一緒に木製の剣を置いていたが」
陛下は期待と不安の混じったため息を付く
「0でございます」
これは初めての出来事である。龍人族は生まれながらの戦闘狂であり、どの家庭の子供も歩く前に剣を握る。それをアイラは一度も見向きもしなかった。いや、一度は握った。そして窓から放り投げた。
「陛下一つお伝えしてない数値があります、アイラ様がこの3年で読んだ書物の冊数でございます」
「ほう、私も訓練の間に書物を読むときがある。だいたい1時間辺りに数十ページ、アイラは一日読み続けるとし、一日一冊読めるか読めないかでだいたい千冊ってところか」
「一万冊でございます」
その一言で部屋中の配下及びに陛下まで言葉を失った。
「アイラ様は読むだけでなく、それを丸々一冊を記憶しております。もちろん他の遊びを並行しながら読書しております。あくまで私個人の意見でありますが、アイラ様には地図の端にそびえる、虚無の壁攻略対策本部世界中立研究室に向かわせてみては、いかがでしょうか」
「手はずを頼む」
数分間、部屋に沈黙が続いていた中の、重みある陛下の一言。部屋中の配下達が敬礼し部屋を後にする。
世界最高峰戦闘一家の末っ子として、俺は敵国のアニメにどっぷり浸かるのであった @Kitagami
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