冒険ガタンゴトン

「はぁ…」

鈴河は天気予報を見てため息をついた。2週間先まで雨や曇りなどグズついた天気ばかり。溝の少ないハイグリップタイヤを履いている鈴河と雪花、叔父のバイクには危ないので外出しない方が身の為だ。休日も家からあまり出ないので、そのうち頭からキノコでも生えてくるんじゃ、と心配になってくる。皆んな休日は料理やメニュー考案以外やることが無く、本棚にある本も全て読み終わってしまう始末で、完全に息が詰まってしまっていた。

「少し外、歩こうかな。」

外は少し雨が降っていて、今まで放置して傘立てと一体化している自分の傘を手に取った。

外に出ると、雨のせいか人通りも少なく、聞こえるのは傘に当たるパラパラという雨の音と自分の足音だけだった。いつもは買い出しでせかせかと通る道も、今日は何も考えずにのんびり歩ける。気持ちの速度が違うだけで、いつもの世界だって少し違って見えるものだ。

しばらく歩いていると、雨足が強まってきたので、視界に入った寂れた駅の軒先で雨宿りする。そこにあった自販機で缶コーヒーを買ってちびちび飲んで待っていたけれど、雨は強さを増すばかりだ。ぼぅっと外を眺めていると、少し歳を召した男性が

「入りなさい。」

と声を掛けてくれた。私はくたびれた木製のベンチに腰を下ろした。遠くから、低い音を響かせながら汽車がやってくる。キーッという甲高い音とともに停車するも、降りてくるひとはいなかった。地方のローカル線なんてこんなものか。

「あの、」

駅員に声をかける。

「ここまでいくらかかりますか?」

停車駅が書いてある紙を指して尋ねた。

一瞬怪訝そうな顔をされたが快く教えてくれ、代金を払った私はガラガラの汽車に飛び乗った。

うぉぉんと低い響きで汽車は徐々に加速していく。昔都会に住んでいた頃に乗っていた電車と違い、かなりモッサリとした加速だ。

コトコトと小気味良いリズムを奏でながら雨の中を進んでいく。此処では外の世界のことなんてすっかり他人事だ。

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