直したバイクが動き出す
すぐに割れたカウルのために補修剤を揃えてきた雪花は、仕事が終わるとすぐに車庫でカウルの補修に勤しむ日々を繰り返していた。自分も手伝おうかと声を掛けたが、この作業だけはどうしても一人でやり遂げたいらしい。私は彼女の横で毎日少しずつ、既に組み上げている車体の整備、調整をしながら待ち続けた。黙々とカウルに向き合う彼女は仕事と同等、もしくはそれ以上の集中力で修復作業を進めていった。
数週間後、雪花は修復を終えた。
「やっとできた…!!!」
「お疲れ様。じゃあカウルつけてみようか。」
雪花がカウルをつけ終えると、一気にバイクがそれらしく見える。
「お父さん呼んでくる!」
言うが早いか雪花は家の中に猛スピードで戻って叔父を引っ張ってきた。
「遂に直したんだね。」
叔父の声は落ち着いているが、どこか感慨深く感じているような声だった。
「エンジンかけるよ。」
そう言って雪花がセルを回す。キュキュっというセルの音がした後ツインエンジンの爆音が車庫内に響き渡る。顔をくしゃくしゃにして嬉しそうに笑う雪花。叔父はバイクの方に近づいていき、真っ白なカウルを愛おしそうに触った。丁度雪花が修復した辺りで、以前の傷が少し残っている。叔父の口が少し動いたように見えたが、こだまするエンジン音で何を言っているかまでは分からなかった。
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