第11話 帰省
秋に息子が東京から戻って来た。
見知らぬ男が診療所に転がり込んでいる事は知らせていたが、妹と結婚するかも知れない相手を前にすると戸惑うに違いない。
「へぇ、親父がここまで準備するとはね。」
「はい、申し訳ないくらいにサポートして下さっています。ここ数ヶ月、診療時間も短縮してまで僕の勉強をサポートして下さっています。」
「俺の時はさほどサポートして貰った記憶はないが。」
「とても優秀だったと聞いています。僕なんか比べ物にならない位だったと思います。」
その言葉に気分を良くした息子は、勉強の進度や模試の結果を先輩面して見ていた。
「俺が高3の時より偏差値高いやん!」
「え⁉︎そうなんですか?僕はまだまだだと思います。」
「いや、俺は私立の医学部だったけど、君は国立も充分視野に入れていいで。」
普段関東弁を使っている息子の、どことなくおかしなイントネーションが気になりつつも、昔のままの息子の姿が微笑ましかった。
確かに、娘の彼氏はよくやっている。
このまま順調にいけば、国立大も夢ではない。
よくもまぁ、娘と結婚したいが為に、寝食忘れる程勉強に打ち込めるものだと感心する。
「それより親父、急に痩せてないか?」
「そうなんだ。気づいたか?」
「気付くも何も、いいから診察してやる。
診察室で待ってろよ。」
「おう。」
思いがけず、息子は俺の異変に気づいていた。
循環器病専門医として働いてるだけあって、洞察力は優れている。
「親父、健康診断行ってるか?医者の不養生はダサいで。」
「おう、行っている。検診結果はこれだ。」
「まさか!親父、この数値だと即入院じゃねぇかよ。どうして黙ってた?」
「それはそうなんだが…。」
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